秋の味覚といえば、ほっこりと優しい甘さが魅力の栗。品のよい甘さと香りを活かしたさまざまなスイーツが洋菓子店のショーウィンドウに並びます。なかでも定番のケーキであるモンブランは、いつの時代も多くの人々に愛されてきました。

実は、現在広く親しまれているケーキのモンブランは日本のパティスリー発祥のスイーツです。

モンブランは、もとは中世ヨーロッパのレストランなどでデザートとして出ていた、メレンゲもしくは生クリームとマロンクリームを盛り付けたシンプルな皿盛りのデザートでした。そのデザートにヒントを得て、現在のケーキのモンブランをつくり出したのが自由が丘のお店「MONT-BLANC(モンブラン)」です。

東急自由が丘駅から徒歩すぐにある、モンブラン発祥のお店「MONT-BLANC」

モンブランの名前の由来やその誕生ストーリー、そして長く受け継がれてきたモンブランへのこだわりを「MONT-BLANC」のシェフパティシエであり、四代目取締役の迫田直幸さんに伺いました。

日本第一号の「モンブラン」を解明!

発祥から変わらぬアルプスの優美な山・モンブランを表した姿

昭和初期から変わらぬビジュアル

ヨーロッパアルプス最高峰の山の名でもあるモンブランは、フランス語で「白い山」という意味。細く絞った黄色の栗クリームは山肌を、その上に乗ったサクサクの白いメレンゲは山頂の万年雪を表したものなのだそう。

アルプス最高峰の山「モンブラン」を表現しています

「MONT-BLANC」のモンブランには、4種類のクリームが使われています。

4種類のクリームが栗を引き立てバランスのよいハーモニー

■1:カスタードクリーム
フランス語では「パティシエのクリーム」といわれる、洋菓子に欠かせないクリーム。創業当時から変わらないレシピで炊き上げています。

■2:バタークリーム
軽くて口どけのよいクリーム。カステラ生地が乾かないようにと土台の淵に1周絞られています。

■3:生クリーム
北海道産の生クリーム3種類を独自にブレンドしています。

■4:マロンクリーム
愛媛県産中山栗の甘露煮をペースト状にした香り高いクリーム。

この4種類のクリームの絶妙な組み合わせが、モンブランの骨格となっています。

カステラ生地の真ん中には贅沢に丸々1個の中山栗の甘露煮。さらに、「MONT-BLANC」のモンブランの特徴ともいえるトップのほんのりレモンを効かせたメレンゲが、ビジュアルや食感、香りのアクセントになっています。

初代のこだわりはそのままに、時代に合わせて重ねた改良

明るい黄色のクリームが印象的なモンブラン。茶色の栗色ではなく、黄色い理由とは?

「私どものレシピでは、渋皮を入れずに栗を甘露煮にしてからペーストにするため鮮やかな黄色いクリームになります」(迫田さん)

クリームをくるくると糸状に絞り出すのも、日本ならではの道具を使った工夫なのだそうです。

「マロンクリームはそのままケーキに盛るとどっしりと重くなってしまいます。そこで、『おだまき』という和菓子で使われる器具で細く絞りだすことで、空気を含ませてフワッとした軽さを出しています。糸状にクリームを絞って重ねることで、食感のよさとともにゴツゴツした山肌も表しています」(迫田さん)

口どけのいいマロンクリーム

日本に馴染みある味になるよう、和栗を使用しているのも初代からの変わらぬこだわり。和栗の中でも、よりモンブランに合うものをと探し求め改良しているそう。

「使用しているのは、愛媛県伊予市中山町の中山栗です。日照時間や寒暖差など厳しい急斜面の畑で育てられるため、栄養分が多く、香りも糖度も高い栗です。父である三代目が全国各地を巡り、よりモンブランに合う栗として中山栗を選びました。価格は普通の栗よりも高いのですが、よりよいものをお客様にご提供したいという想いから採用しました」(迫田さん)

ほかにも、その時代に合わせて甘さを微調整するなど、基本のレシピはそのままに常に一番おいしいモンブランを追求しています。

メレンゲはお皿に降ろして割って!モンブランの食べ方

縦に背が高く、固いメレンゲが乗っているモンランですが、どのように食べるといいのでしょうか?

「まずメレンゲをお皿に降ろして小さく割ります。ケーキには縦にフォークを入れると、4種類のクリームのバランスの良さを一度に味わえます。切り分ける部分だけ土台の紙を少し外してフォークを入れると、取りやすいですよ。割ったメレンゲを少しのせて、全体のマリアージュを味わってみてください」(迫田さん)

メレンゲは割ってクリーム部分と少しずつ一緒に食べます

一緒にいただく飲み物は、紅茶やコーヒーなどがおすすめ。

「栗本来の香りや味わいを楽しんでいただきたいので、甘さの強いものや濃厚なジュースのように濃い香りのものとは合わせない方がよいでしょう」(迫田さん)

和栗の甘露煮を使っているので、意外にも日本茶も合うそうです。

フランスで市長にまで挨拶!モンブランは山に魅せられたパティシエが生んだ

このモンブランは、1933(昭和8)年「MONT-BLAN」初代店主・迫田千万億(さこたちまお)さんのフランス旅行がきっかけで生まれました。

山登りが好きだった初代店主は、フランス・シャモニーでヨーロッパ最高峰のモンブランを見て、大変感動したそう。そこで「ぜひ、自分の店にモンブランという名前をつけ、スイーツを通してこの感動を伝えたい!」とシャモニー市長に会いに行き、名前の使用許可もらいました。さらに、シャモニーにある「ホテルモンブラン」というホテルからも許可をもらったそう。その許可証を日本に持ち帰って店名を「MONT-BLANC」として商標登録を取りました。

一方で、「モンブラン」をケーキの名前としてはあえて商標登録しなかったそう。

「『自分の店だけで独占するのではなく、より多くの方にモンブランを知って、食べてもらいたい。そして、日本の洋菓子業界のさらなる発展に寄与したい』との想いからです」(迫田さん)

今やどの洋菓子店にもあるポピュラーなケーキとなったモンブラン。初代店主の先見の明や先進的な考え方があって普及した、実は奥深いスイーツなのです。

学芸大学の辺りから、戦後まもなくして現在の自由が丘に移転。店内には100席近いカフェコーナーがあり、平日朝から開店を待つ人も

「MONT-BLANC」おすすめの秋限定スイーツは?

入ってすぐのショーウインドーにはさまざまなケーキがズラリ

「MONT-BLANC」ではモンブラン以外にもたくさんの種類のケーキを販売しています。そこで、秋におすすめの限定スイーツもご紹介いただきました。

11月から期間限定発売「利平栗のタルト」

季節と数量限定の利平栗のタルト。無くなり次第終了になるので、予約必須!

「秋のおすすめは『利平栗のタルト』です。非常に香り豊かな利平栗をふんだんに使ったクリームをタルトの土台に乗せた、期間限定商品。ほんのりリキュールの香る、落ち着いた味わいです。毎年、このタルトが出るのを楽しみにされている方もいらっしゃいます」(迫田さん)

「利平栗のタルト」は11月からの期間限定発売。1月いっぱいの販売を予定していますが、利平栗が入荷できた分のみ生産となり、数に限りがあります。気になる方は、早めに自由が丘の店舗へ行きましょう。確実に手に入れたい方は、予約も可能とのこと。早めに店舗へ問い合わせてみましょう。

中山栗を使った定番のモンブランと利平栗のタルトを食べ比べて、栗の風味の違いを感じてみるのも贅沢な楽しみ方ですね。


「MONT-BLANC」はこだわりの味を受け継ぐために支店は作らず、自由が丘の店舗のみで運営しています。ずっと変わらないレシピをおいしく届けるため、モンブランのつくり置きはせず、店舗での販売とカフェでの提供のみいうこだわりも。発祥から変わらぬ味は、店頭のお持ち帰りかカフェスペースでいただけます。

現在ではさまざまなレシピで日本全国に広がっているモンブラン。そのはじまりは、ひとりの登山好きなパティシエの「アルプスの山を見た感動を伝えたい」「日本の洋菓子業界を発展させたい」という思いでした。

この秋は、ヨーロッパの雄大な山を思い浮かべながら、モンブランの栗の香りを楽しんでみてはいかがでしょう?

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WRITING :
加藤良子
EDIT :
廣瀬 翼(東京通信社)