地元コミュニティとのつながりに大切にし、その地の文化をクリエイティブに昇華させて世界に発信するホテルブランド「エースホテル」。2020年6月にソフトオープン後、早くもソーシャルな場として人気を集めるこちらの、宿泊ゲストだからこそ楽しめる魅力を探ってきました。
「イースト・ミーツ・ウエスト」を掲げた、デザインと伝統技の妙
「エースホテル」とは1999年にシアトルで若きクリエイターたちによって生まれたホテル。“友人のミュージシャンがツアー中に滞在できる場所”を作ろうと思い立ち、同時にカルチャーが生まれる場所であり、地元コミュニティともつながった、かつてないスタイルを目指しました。今や、新潮流となっている“ライフスタイルホテル”の先駆け的な存在です。
これまで9軒を展開するエースホテルの初のアジア進出である「エースホテル京都」のテーマは、「イースト・ミーツ・ウエスト」。歴史ある京都への敬意を払いつつ、西洋の建築家やデザイナー×日本の大工さんや工芸家、アーティストとのコラボを目指しています。
場所は歴史的建造物の再開発プロジェクト、商業施設を併設した「新風館」内。大正時代の1926年に建てられた旧京都中央電話局を生かしつつ、新棟を加えた、緑の中庭を抱く“ロ”の字型をしています。デザイン監修を担当したのは、隈研吾さん。京都の伝統を引き継ぐ大胆な木組みと元ある建築を生かした赤レンガの組み合わせが、モダンながら重厚な時の流れを感じさせます。
ロビーラウンジに象徴される、ソーシャルな楽しみ方
内装のデザイン監修は、これまでもいくつかのエースホテルを手掛けている、コミューンデザイン。京都や日本の伝統・文化を掘り下げつつ、エースホテルらしさを感じるエッセンスをところどころに感じます。
宿泊ゲストのみならず、地元の人も集う、クリエイティブな場所となっているのが、ロビーラウンジでしょう。長テーブルにはラップトップが使えるようにコンセントが多く設置され、窓辺のソファではゆったりとくつろげそう。もちろんWi-Fi環境も良好。
ロビー脇のコーヒーポットの暖簾の向こうには、日本初上陸のコーヒーショップ「スタンプタウン・コーヒー・ロースターズ」とつながっています。世界各地の生産者とフェアトレードを20年以上続ける、サードウェーブの代表ブランド。シグネチャーのヘア・ベンダー・エスプレッソをはじめ、ホームメードのドーナッツやペストリーも人気です。
また、ロビーには、幅広いアート活動でも注目を集める、鹿児島の知的障がい者支援施設「しょうぶ学園」のファブリックアートが飾られ、その自由で斬新な作風に目が奪われます。ロビーの一画にはギャラリーを併設し、幅広いジャンルのアートの企画展示も。
ユニークなのは、ロビーの片隅に置かれたプリクラ! N.Y.のエースホテルの名物となっているフォトブースの、いわば日本バージョンです。
旧棟と新棟のスイート、どちらを選ぶか、悩みどころ
ロビーラウンジやコーヒーショップなどは誰でも利用できますが、宿泊者オンリーの空間が、ゲストルーム。新棟(2~7階)187、ヒストリカルな旧棟(2~3階)26の計213室になります。
“ロ”の字型の建物のうち、烏丸通りに面した“L”の字部分の旧棟は、旧京都中央電話局の外壁を生かし、窓枠も当時のもの。天井が高く、カーブやアーチを取り入れたデザインが、ノスタルジックな風情です。
エースホテルのキーファクターである“音楽”は、室内でも大切な役割を担っています。全室にTivoli社製ラジオ(Blutooth対応)を設置、部屋によってはTEAC社のターンテーブルと数枚のLPレコード(ジャンルは様々)とEpiphoneのギターを設置。運よくギターの部屋に当たったら、爪弾いてみるのも一興です。
スイートは新棟のたたみスイート、旧棟のエーススイート、ハイエンドのロフトスイートの3種類。雰囲気がまったく異なり、これが悩みどころです。
たたみスイートは、4組の布団が敷ける畳敷きの小上がりがある、和風なお部屋。天井には、清原遥さんによる雲のような形のシーリングライトがインパクト大で、昼と夜とでは印象が変わります。イサムノグチのランプシェードやダン・アンダーソンのサイドテーブルなど、調度品も気になるところ。
エーススイートは、姉小路通に面したリビングの出窓がクラシカル。アルテックのルームライトや、ミッドセンチュリーを感じさせる家具でまとめられた、リビング&ダイニングバーがゲストを招くスペースとしたら、ベッドルームはプライベートな印象を受けます。
モダンな和風か、ミッドセンチュリー風か、まったく別モノなので好みは大きく分かれそうです。
どの部屋にも共通して、90代でも現役で活躍されている、染色アーティストの柚木沙弥郎さんの作品や、ミナペルホネンのカーテンを用意。バスルームは、玄昌石の黒い石板タイルを張ったシャープなデザインで、バスアメニティはukaを使用。そしてユニークなのが、竹製の歯ブラシと噛み砕いて使う歯磨き粉。環境にも配慮がされています。
西海岸を感じる2つのレストラン
アメリカ風イタリアン・オステリアの「ミスター・モーリスズ・イタリアン」はルーフトップバーを併設。3階から中庭を見下ろし、どことなくL.A.で人気のルーフトップバーを彷彿させる雰囲気です。それでいて、京都の「金網つじ」の調理器具のペンダントライトは和風な趣き。
西海岸のストリートフードともいえるメキシカンの「ピオピコ」は、コッパーを多用したインテリアにワイルドな観葉植物がアクセント。タコスに合わせて、テキーラとメスカルをどうぞ。
ここ数年、個性際立つ外資系ホテルが続々と進出している京都。ホテル巡りも、京都で過ごす際の楽しみのひとつになりそうです。
問い合わせ先
- エースホテル京都
- 料金/スタンダード¥30,000~(税、サービス料別)
- TEL:075-229-9000
- 住所/京都府京都市中京区車屋町245-2 新風館内
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- TEXT :
- 古関千恵子さん ビーチライター
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- WRITING :
- 古関千恵子
- EDIT :
- 安念美和子、大西瞳・原田恵子(イクシアネクスト)