年を追うごとに進化を続け、多くのドライバーたちから支持されている「ポルシェ」。その走りやデザイン、操作性はベテランドライバーを満足させるだけでなく、クルマ初心者にもおすすめ。まずは、不動の人気を誇る911シリーズから『911ターボ カブリオレ』をはじめ『718ケイマンS』や、「ボクスター」「パナメーラ」シリーズから人気のポルシェを一挙に紹介!
【目次】
911
911 カレラS
911は、ポルシェの全利益の30%を稼ぎ出す、名実ともに看板モデル。カイエンやマカンなどのSUV勢が、いくら屋台骨を支える重要なモデルに成長してきたといっても、やはりポルシェの精神的な支柱を担うのは911であり、異論のある人はいないはずだ。
写真のクルマは「カレラS」というモデル。「S」のつかないカレラよりもエンジンとブレーキの性能が高められている(エンジン最高出力65PS増・最大トルク80Nm増)。3リッターのフラット6エンジンは実に切れ味よく、シャープにエンジン回転が上昇していく。そしてリアエンジンならではの、後輪の強力なトラクションによって、パワーを確実に路面にたたきつけて鋭く加速する。
ドライビングフィールは相変わらずの911であって、他には味わえない感覚である。コーナリングでの安定感、後ろからグッと引っ張られるかのように効いてくるブレーキ、どれを取っても不変の運転感覚である。
911 ターボ カブリオレ
豊富なライアンアップを誇る「911」シリーズのなかでも、価格・パフォーマンスともに最高峰である「911ターボ」。低く構えたオープンボディゆえ、ワイド化されたボディがより強調されて、誰もが素直にかっこいいと感じるはず。インテリアはトリムなども含めたフルレザー仕様。外見も中身もラグジュアリーなこのモデルにはアメリカ車的な派手さがあるが、やはりそこはポルシェ。アクセルを深く踏み込めば、体全体をシートに押し付けられるような猛烈な加速が味わえる。ドライバーを一気に非日常の世界へと誘ってくれる至高の一台だ。
引き締まった2座クーペと豪快なオープンモデル 最新のポルシェを楽しむ
911 ターボ S
3.8リッターの水平対向6気筒ツインターボエンジンが生み出す加速タイムは0〜100km/hで実に2.9秒。GT3モデルをも上回る、驚異的な爆発力を持つ。ポルシェ『911ターボ S』は、『911』シリーズのなかでも、427kW(580ps)という高い出力を誇る4輪駆動モデルだ。
718
718 ケイマン
ひと目でポルシェとわかる、丸く大きなヘッドライトと、曲線基調のグラマラスなボディ。特に素晴しいのが、スポーティなシートポジション。ステアリングを握る手の位置は肩とほぼ同じ高さになり、腰から肩甲骨にかけてが座面と背もたれにしっかりとフィットし、心地よい。写真の『718ケイマン』も、人気のSUV『カイエン』であっても、その素晴らしさは変わらない。
門外不出のクラフツマンシップだからこそなし得た、人と機械が一体化する最高のフィット感
718 ケイマンS
すでにクルマ好きの方ならご存知のように、オープントップの「ボクスター」ともどもエンジンが6気筒から4気筒化され、往年のレーシングカーに由来する「718」という数字が車名に加わった。エンジンは気筒数が多いほど上質(上等)という印象が強く、実際、「718ケイマン」も旧型に乗った経験のある人ならすぐに4気筒であることがわかるほどフィーリングは異なる。
4気筒のスポーツエンジンでは(ハイチューンモデルを覗いて)世界最高レベルにあるのではないかと思わせる出来栄えだ。排気量が旧型標準モデル(後期)の3リッターから2.5リッター(標準モデルは2リッター)となったぶんをターボ過給で補い、よりパワフルに。6気筒時代よりもメカニカルな音が影を潜め、低い排気音が目立つようになったエンジンを背後に認識しながらアクセルを踏むと、ターボであることをまったく感じさせないナチュラルなパワーの盛り上がりで、後輪がクルマを前へ前へと押し出す。圧倒的な高剛性ボディ、吸い付くように路面に追従する足回りも含めて、「これぞポルシェ」と満足できる、素晴らしい走りだ。
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ボクスター
1950年代後半~’60年代後半にかけて、ル・マン24時間レースなどで活躍したミッドシップ・エンジン・スポーツカーの名を冠した4気筒エンジンモデル。水平対向4気筒ターボエンジンは、最高出力220kW(300ps)を発生する。
ボクスター・スパイダー
ひとえにオープンカーといってもさまざまな呼び名があり、ラグジュアリー色の強い4座モデルはカブリオレやコンバーチブル、対して2座、または2+2のスポーツカー系はロードスターやスパイダーと呼ぶことが多い。ポルシェにはソフトトップを備えた「ボクスター」があるが、それを敢えて非・自動化したうえで軽量化・高性能化を図ったのが「ボクスター・スパイダー」だ。そのつくりは実に潔い。ソフトトップは通常のボクスターよりも小さく、手動開閉式だ。ほかにもドアのインナーハンドルがベルトタイプだったりと、ラグジュアリーな近年のポルシェモデルに慣れた人は違和感を覚えるかもしれない。
だが、ポルシェは元来モータースポーツを「走る実験場」ととらえ、積極的にレース勝負を行なってきたブランド。とくにル・マン24時間に代表される耐久レースでは高い実績を挙げており、ピュア・スポーツカーたる「ボクスター・スパイダー」は、ポルシェの伝統に則した設計なのだ。エンジンは「911カレラS」の3.8リッターユニットを積み、トランスミッションは6MTのみ。
足回りには専用のチューニングが施されたサスペンションを備え、車高は標準モデルよりも20ミリ低い。スタイリングではフロントバンパー部に大きな開口部の空気取り入れ口が付き、迫力を感じさせる。さらに、座席の背後に搭載されるエンジンとその後ろにあるトランクまでを一体で覆う、ふたつのふくらみをもつアルミ製リッドが、スパイダーであることを主張する。
スポーツ“ポルシェ”の正統なる後継者 「ボクスター・スパイダー」の潔さに酔いしれよ!
SUV
マカンGTS
「911」の魅力にSUVならではの快適性を備えた「マカン」シリーズ。SUVでもポルシェらしいスポーツドライビングが味わえる「マカン」に、ハイパフォーマンスモデル「マカンGTS」が加わった。シリーズ中、最もパワフルなのは3.6リッター V型6気筒(440馬力)の「マカンターボ パフォーマンス」だが、こちらもターボで過給しながら排気量は3リッター。それでも最高出力は360馬力に達し、実用域では十分すぎるほどの力を絞り出す。
まず、走り出しから力強い。500Nmという圧倒的なトルクを、わずか1650回転から発揮するのだから当然だ。そして直線でアクセルを深く踏み込むと、腰高なSUVらしさを感じさせない、張り付くような安定感で伸びのある加速をみせる。ハンドリング性能も最高だ。ワインディングではステアリングの動きにわずかなぶれもなく向きを変え、果敢にコーナリングを攻めていくと、グリップの限界が近いことが如実に伝わってきてコントロールがしやすい。
カイエン
プレミアムSUVとして抜群の安定感を確立しているカイエン。2002年に初代モデルが登場して以来、ポルシェらしい内容で進化を続け、17年に登場した現行モデルは3世代目となる。その世界累計販売台数は100万台に達し、すっかりポルシェの重要な大黒柱モデルになっている。最近では弟分のマカンの話題などでにぎやかだが、それでもポルシェのSUVと言えば、まずはカイエンなのだ。
最新のポルシェ・カイエンが楽しいのは、「大幅減量」のおかげだった!
パナメーラ
パナメーラ ターボ
「本物のポルシェ」は911だけ、という考えはもう古い。今やSUVモデルの売り上げが全体の半分以上を占めていて、しかもそれぞれががっしりした作りと走りで、それはもう素晴らしい完成度を誇っている。そんななか、販売台数では突出していないものの、優雅なスタイリングで他のドイツ製サルーンとは一線を画す気品を醸し出しているのが、パナメーラだ。
突出したスポーツ性能を誇るパナメーラ ターボだ。4リッターのV8エンジンを積み、550馬力の大パワーで大きく重いボディを力強く加速させる。V8ということで、エンジンのアイドル音はアメリカ車を思わせるものだったが、正確無比のハンドリング性能はさすがの出来栄えで、後輪駆動にもかかわらず、4輪操舵システムのアシストでクルマが外側に押し出されるようなこともない。
パナメーラ4-Eハイブリッド
電動化に力を入れるポルシェらしい一面をのぞかせる、外部充電も可能なパナメーラ4-Eハイブリッドだ。先代の同様のモデルで東京〜京都間を往復したことがあったが、100km/hでもモーター走行でき、電気が減ってもチャージモードにすることで積極的に充電する「電動ぶり」に、驚いた記憶がある。新型は4輪駆動となり、安定感のある走り、そしてプレミアム・サルーンならではの静粛性がモーター走行による静けさをいっそう際立たせ、「まったり系」の安楽なクルージングを堪能できる。
ミッションE クロスツーリスモ
4ドアの大型EV、ミッションEのバリエーションとしたマルチパーパスモデル。「クロス」の名が表すように車高が少し上げられて、悪路走破性の高さも狙っていることが謳われる。現在ポルシェが発表している数値は出力440kWで、静止から時速100キロまでの加速所要時間は3.5秒というから驚く。800ボルトの急速充電器に対応することが考慮されており、その際15分の充電で800キロの航続距離が得られるそうだ。
EV タイカン
タイカン4S
ポルシェといえば、かつてはあらゆるレースを闘いぬいて名をあげた、ある意味、たいへん男くさいクルマだ。いまは大型SUVも手がけエレガンスという言葉すら似合うものの、2020年6月に日本発売され、ようやくデリバリーが始まるピュアEV「タイカン」が、カーブだろうとストレートだろうと、ものすごいペースで駆け抜けていくのを得意とするのを体験すると、かつての姿が彷彿とする。
タイカンは、ゼロエミッション(排ガスゼロ化)へと舵を切りつつあるポルシェが送りだした初の量産BEV(バッテリー駆動のピュアEV)。全長5メートルにちかい4ドアボディに、高出力バッテリーとインバーターを搭載。パワフルであるいっぽう、航続距離も最大で460キロと長く、あたらしい時代の高性能セダンのありかたを垣間見せてくれるモデルといってよい。
タイカンは、3つのグレードで構成されている。ベースモデル「タイカン4S」は320kWの出力と640Nmのトルクを持つ。「ターボ」は460kWと850Nm。トップモデル「ターボS」は、最高出力はターボと同一、トルクは1050Nmだ。航続距離は、バッテリー出力が小さめの4Sが407キロ、ターボは460キロ、ターボSでは412キロとされている。
モーターを前後に備えた4輪駆動システムを採用しているのは、3つのグレード共通だ。ターボSでは装備がより豊富になり、たとえば、後輪操舵機構も備わる。そのため小さなカーブでは小回りが効くいっぽう、高速のレーンチェンジなどは安定性が高い。
とにかく驚くほどパワフル。これが第一印象だ。おそらくターボSに乗ったせいだろう。おもしろいのは、ターボという車名。ターボチャージャーはエンジンの排ガスの圧力を利用して、エンジン内に燃焼用の空気を圧縮して送りこむことでパワーを高めるシステムだ。だから、EVとは無縁。ポルシェでは1975年の911ターボに端を発し、いま「ターボ」とは高性能モデルを意味するのだ。
電気駆動のスポーツ4ドアモデル「タイカン」が宿す、熱きポルシェ魂
タイカンターボS
「911 ターボ S カブリオレ」で同じ場所を走った時は、シュボボボボ...ボバボ...ボボと唸り声をあげていたが、それとは全く別物。高速道路では心弾むスポーツカーのエグゾーストサウンドも、風致地区にある我が家、時間帯によってはご近所に心苦しいノイズとなってしまうが、「タイカン」はその点におけるストレスはない。さすがフルEV。屋内にいた家人はクルマの到着に気づかなかったほどだ。
もちろん音もなく近づいて、道ゆく人を驚かせてしまうこともない。静穏性の中にも、運転感覚とマッチした走行音のチューニングがバランスよく整えられている。
そんなに静かなクルマじゃ走った気がしない!というあなたには、ど迫力の走行サウンドを楽しませてくれる「ポルシェ エレクトリック スポーツ サウンド」というオプションもあるのでどうかご安心を。
ダッシュボード上のアナログ時計を除いて計器類は全てデジタルだが、全体の佇まいはフューチャリスティックというよりシックな印象だ。近未来的なコクピットを想像していたが、むしろレトロな香りさえ漂う。
ジャパンプレミアでの解説によると、デザインチームが出発点として選んだのは初代「911」なのだそう。世の電動化を憂う往年のポルシェファンにとっても、落ち着く雰囲気なのではないだろうか。
以上、人気のポルシェをまとめて紹介した。年次改良で進化し続けるモデルだけあって、記事で取り上げた時点から、さらにパフォーマンスを高めているものも多いが、精緻なつくりと飽きることのないスタイリングは、時の流れに置いていかれることもない。普遍の魅力を、ぜひ自身の目と腕で確かめてほしい。
- TEXT :
- MEN'S Precious編集部
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