和食の中でも少し敷居の高い懐石料理は、現代風に少しアレンジされてお料理店でいただくシーンがあるものです。

大人だからこそ知っておきたい「現代の懐石」の楽しみ方

40~50代の女性は、きっと懐石料理をいただくような、かしこまった席があると服装やマナーなど気をつけるべきことばかりが頭をよぎるのがではないでしょうか。もちろんそれらも大事ではありますが、今回は懐石料理をもっと楽しむためのポイントを京懐石美濃吉本店 竹茂楼の大膳職司 中山公平さんに教わります。

「懐石料理」と「懐石」と「京懐石」の違い

まずは知っておきたいのが、懐石料理の呼び名。「懐石料理」や「懐石」、「京懐石」という文字を掲げているお店もありますが、どのように異なるのでしょうか? 京懐石美濃吉本店 竹茂楼の大膳職司 中山公平さんは次のように話します。

「懐石料理という名称のほうが一般化されておりますので、そう呼ばれることが多いですが、懐石という言葉には“料理”という意味も含めています。よって茶の湯においては懐石とのみ呼ばれております。こちらは茶の湯における正式なもてなしとして席入りの時刻や形態によって呼称を変えますが、基本的には茶(濃茶)をいただく前段としての『空腹しのぎの食事(料理)』が出されるのが懐石です。ですから、茶の湯(茶会)で用いられます。

それに対して、京懐石は茶の湯における懐石の影響のみならず、公家のもてなしである有職料理や、武家のもてなしである本膳料理、そして禅宗の食事作法である精進料理の影響も受けており、酒席を考慮して献立を組み立てることが多いです」

「現代の懐石」を楽しむ5つのポイント

古くからの伝統を考慮すれば、マナーはきりがないものです。もちろん、マナーもその場を楽しむための大事な行いですが、懐石を積極的に楽しむ心をもっていると、人間的な深みが増すものです。

現代において懐石及び京懐石を楽しむためには、どのようなことをポイントに置けばいいのでしょうか。中山さんに教えていただきました。

懐石の定番「吸い物」

■1:五感をすべて使って体感する

「盛り付けの見た目の美しさ、温かいものは温かく、逆に冷たいものは冷たく、香りを大切に、歯ごたえの音も美味しさ、味の深みを感じてという風に、五感をすべて使って体感します」

■2:外の世界の「時」の移り変わりが料理に反映されているのを実感する

「夏場なら涼感を出す演出としての露打ちや氷を器にしたり、冬場なら冷めにくいように筒状の深めの器を用いたりなど、懐石は外の世界の“時”の移り変わりが料理に反映されています。それらを見つけて実感します」

■3:器と料理との取り合わせの妙を感じる

「煮物椀のふた裏の蒔絵に蛍が描かれていたら、その時候の走りである鱧(はも)が食材として用いられているなど、器と料理との取り合わせについても楽しむことができます」

■4:膳の中に限らず、その空間にも目を向ける

「もちろん膳の中は、料理と器の調和で完結してるようにみえますが、実は部屋そのものの空間が関連性をもっています。和室の場合、床の間があり、そこには軸が掛けられ、それにあわせた花入に花が入っています。それらの関連性をきっかけに客ともてなす側である亭主がコミュニケーションをとることで、より席の意味合いが深まります」

■5:それぞれの立場の心入れを共有する

「客の側がもてなす側である亭主の言葉には現れない表現である、心入れ(配慮)に気付くことだけでもコミュニケーションが成立しますが、亭主も客が気付いたと理解することで、よりいっそうコミュニケーションに深みが増します。この繰り返しが茶の湯における“一座建立(いちざこんりゅう)”、つまり亭主と客との一体感を目指すことになります」

「懐石」の知って得する知識

続いて中山さんに、懐石についてのさまざまな知識やお作法を教えていただきました。

知っていれば上級者間違いなし

■1:「京懐石」で食べ終わったことを伝える場合、少しふたを開けておく

「茶の湯における懐石ではいたしませんが、京懐石において。例えば、ふたのついている煮物椀や鉢物など、食べ終わったことがわかりづらい器の場合、少しふたを開けておくことで、それを接遇する方に伝えることもあります。しかし、きちんとふたをした状態であっても器ごと左側に寄せておけば下げてよいという意味で、接遇する側は認識します」

■2:提供されるお料理の順番には意味がある

「当店の京懐石は、茶の湯における懐石の影響が大きく、煮物椀、向付、焼物といった懐石の基本的な構成要素である一汁三菜に含まれるものは最初に出されていきます。ただ、懐石においては初膳で飯と汁が出されるのに対して、酒席を念頭に置いている京懐石では先付(さきづけ)や八寸(はっすん)と呼ばれる山海の珍味を中心としたオードブルのようなものから始まりますので、飯と汁が料理の一番最後になります。いずれも全体のバランスを重要視しますので、一品の分量については多くなりすぎないよう最大限、配慮しております」

■3:つくり手が最もよろこぶ懐石料理のいただき方

「器との取り合わせや盛り付け、香りをきちんと楽しんだ後に、最後に食する流れがつくり手の表現を最大限感受できる方法です。例えば、煮物椀であれば、まずふたをとり、香りを楽しみます。そのあとふた裏に蒔絵があればそれを賞玩(しょうがん/ものの美しさを味わうこと)し、時候との取り合わせを感じ、全体の盛り付けを見た上で、一番上にある吸口(すいくち)という香りの食材、例えば柚子や木の芽などを口元に当てつつ出汁をいただきます。このように、すべてのものを五感を用いて楽しみます」

食欲の秋に懐石を楽しんでは?

知れば知るほど奥の深い懐石。次に懐石の席に招かれた際には、かしこまったマナーばかりにとらわれすぎず、五感を用いて楽しむ心を持つと、より余裕が出て優雅にその場を楽しむことができそうです。

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この記事の執筆者
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WRITING :
石原亜香利