チャールズ皇太子は地球上で最も多くプレスから撮影されているスタイルアイコンのひとりである。しかし、皇太子はファッションについての取材は一切受けないので、その実態は謎に包まれている。結局われわれのようなジャーナリストは皇太子の側近や関係者、御用達業者を聞いてまわるような探偵ごっこをするしかないのである。

英国がもつ様式美の体現こそがチャールズ服装術のテーマ

チャールズ皇太子
写真左:Mirrorpix/アフロ・写真右:ZUMA Press/アフロ

皇太子がファッションインタビューを受けない3つの理由

【1】そもそも自分がファッショナブルだとは思っていない。服装は神から与えられた自分の役割を果たすための道具なのであって、個性を発揮するなどとんでもない。

【2】彼の関心は環境問題や、建築、ガーデニングや文化行事にあり、貴重なインタビューをファッションに費やすなぞ時間と紙面の無駄である。

【3】祖父の兄でそのファッションで有名だったウインザー公のような末路をたどりたくない(ウインザー公は王位を辞退した)。

皇太子の服装術がミステリアスなのは彼のショッピング方法にも一因がある。一般人と違い、彼は店で買物することはないのだ。それは侍従の仕事である。御用達の品についてもしかり。

アンダーソン&シェパードでスーツを誂えるのも、ターンブル&アッサーでシャツを仕立てるのも、ジョン ロブのビスポークシューズやトリッカーズの既製靴を試し履きするのも、すべて担当者がクラレンス・ハウス宮殿に皇太子を尋ねるのである。

いくつかのチョイスを用意して毎日のコーディネートを準備するのも侍従の重要な役割で、ワードローブのメンテナンス、旅行の準備もすべて彼らの仕事だ。

紙幅もないので、皇太子のワードローブの中にもう一歩深く入ってみよう。ニットとドレスソックスはターンブル&アッサーでこれはカミラ夫人の好みでもある。最近は同社の既製品のスーツも試されているようだが、なで肩で短足、ヒップも扁平な彼の体型を考えると私は無理があると思う。カントリー用とシューティング用のソックスはコーギーだ。

ストライプのタイはすべてターンブル&アッサーで、皇太子は訪問先の部隊や団体、カレッジのシンボルカラーに合わせてストライプの色を選ぶのだ。それ以外はすべてエルメスのもの。

ダブルブレストのツイードコート、キャメルカラーのコート、ツイードのカントリージャケットはアンダーソン&シェパードで、ツイードの生地はジョン・G・ハーディから調達。

雨の日は当然ながらバーバリーのレインコートにスウェイン・アドニー・ブリッグの傘という組み合わせが多い。

カントリー用ウエアはいかにも英国的で豊饒だ。バブアーのオイルドジャケット、ムストーのセーリングジャケット、「ホーランド&ホーランド」や「コーディングス」の別注でつくられたクリサリスのフィールドジャケット。帽子やラゲッジなどのアクセサリーはスウェイン・アドニー・ブリッグとハーバート・ジョンソンのものが多い。フィッシング・ウエアはファーロー・オブ・ペル・メル、サファリスーツはエアリー&ホイーラー、乗馬とシューティング用はフランク・ホールに決まっている。あ、そうそう、シルクハットやパナマハットなど皇太子のタウン用帽子を一手にひきうけているジェームズ ロックも忘れてはいけない。ほかにも軍服と儀典服のワードローブがあるが、それは次の機会に譲ろう。

英国独自のスタイルに徹底しながら、華美に走らず、古臭くもみえない。日本の歌舞伎や茶道がそうであるように、「型」というものの美しさをその身で表現し続けているのがチャールズ皇太子の服装術ではないだろうか。

※MEN'S Precious2011年春号取材時の情報です。

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MEN'S Precious編集部 
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MEN'S Precious2011年春号より
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