料理の鉄人がドバイにオープンした和食レストラン「モリモト・ドバイ(Morimoto Dubai)」

2018年春、アラブ首長国連邦の都市ドバイにある「ルネッサンスホテル」内に、日本人シェフ森本正治さんがレストラン「モリモト・ドバイ(Morimoto Dubai)」をオープンさせたと耳にし、お話を伺いに行ってきました。

モリモト・ドバイ店内(2フロア吹き抜け)

森本シェフといえば、1993年から1999年までフジテレビ系で放送され、最高視聴率23.2%を獲得したこともある、大ヒット料理対決番組『料理の鉄人』の三代目「和の鉄人」として活躍したことを、ご記憶されている方も多いのではないかと思います(初代は道場六三郎さん、2代目は中村孝明さんでした)。また『料理の鉄人』の海外版として2005年からアメリカで放送されている『アイアン・シェフ・アメリカ』でも鉄人を務めていることから、アメリカで最も有名な日本人のおひとりでもあります。

森本正治さん

加えて森本さんは現在、ニューヨーク、ラスベガス、フィラデルフィア、ハワイ・ワイキキ、インドのムンバイ、メキシコシティー、ほか世界中に17のレストランを展開し、世界中を駆け巡っています。アメリカのみならず、海外で活躍している、最もポピュラーな日本人シェフなのです。

17のレストランを経営する鉄人シェフ・森本正治さんに5つの質問

森本正治シェフと筆者
Q1:ここドバイに、新たなレストランをオープンした理由をお聞かせください。
森本さん:中東には以前から興味を持っていて、その文化に触れてみたいとずっと思っていました。たまたまドーハが先になりましたが、ドバイに何年も前から模索しながら、ビジネスチャンスをうかがっていました。そしてこの度、マリオットがルネッサンスというホテルをオープンするにあたって、オファーをいただきました。私みたいな者でも望まれるということは、本当にありがたいことです。
なぜ私が新しいことに挑戦し続けるかというと、50歳を過ぎると本当に時間が過ぎるのが速いんですよ。60歳を過ぎると、あっと言う間なんですね。ハッピーニューイヤーっ言ったらもうメリークリスマスって言ってるんですよ(笑)。
新しい場所で、新しい人と新しい取り組み、新しいメニューを生み出す。シェフも地元で雇います。モリモトの名前の下で千人以上のスタッフがいますが、リサーチをしながら、これからも手を広げて行きたいと思っています。
モリモトのエントランス
Q2:ドバイの「モリモト」で提供されるお料理は、どのようなものになるのでしょうか?
森本さん:「モリモト」のスタンダードは保ちつつ、シグニチャーディッシュは出す。そしてローカルの素材を少し取り入れてメニューを構成するようにしています。ドバイ、ナパバレー、ハワイ、インドでメニューが同じじゃあ、つまらないでしょう。でもインドではカレーは出しませんよ(笑)。
とにかく常に日本人が来ても恥ずかしくないお鮨は出したいですね。例えば天ぷらのソースがクリーミィだったり、アボカドと蟹とかの組み合わせとか、日本人の中には、これは日本料理じゃないとか鮨じゃないと言う人もいるんですよ。でも「食べてみてよ」と言いたいんです。ドバイの人のための鮨があってもいいじゃないと思うんです。ニューヨークしかり、北京しかり、サンパウロしかりだと思うんです。
鉄板焼き用肉
Q3:料理人になろうと思ったきっかけは?
森本さん:小さい時から(8歳位)、プロ野球選手になるか鮨屋になるかが夢でした。甲子園の広島代表を決める決勝まで行ったこともあるのですが、肩を怪我して諦めました。家庭の事情で小学校を10回は替わりましたね。貧乏でしたが年に一回、家族で(両親と妹と)、田中パーラーに行って両親はコーヒーを飲んで、私と妹はパフェを食べるんです。その後鮨屋に歩いて行くんです。その鮨屋の板前さんが白いパリっとした帽子に白衣で、「へい、らっしゃい!」って本当に格好よかったんですよ。そこでは母が父にお酌して、日頃から喧嘩の絶えなかった両親も喧嘩をしない。鮨も美味しいんです。本当にそのひとときが平和で幸せだったんです。
結婚してから喫茶店をやりました。そしてそのあと、鮨屋をやりました。その通りにやってるんですよ(笑)。母は92歳で逝きましたから、私の成功を見ることができましたが、父は60ちょっとで逝きましたから、見ていないんです。父は癌を患っていたのですが、病院で父に何が食べたいか聞いたら「ちらし寿司」と言うので、そのとき喫茶店をやっていたのですが、あったものをかき集めてつくってやりました。それが最初で最後になってしまいました。
モリモトのテラスバー
Q4:若い頃、影響を受けた先達はいらっしゃいますか?
森本さん:いません。でも敢えて言うなら、母でしょうか。お嬢様育ちで、何もした事がなかったのに、満州から引き揚げて来て、できないのに一生懸命やっていました。質より量ですよ。じゃあ自分で美味しいものつくろうって、反面教師です(笑)。
石焼ぶりボップ
Q5:偉大なシェフの資質とは、何でしょうか?
森本さん:自分は偉大と一切思っていません。セレブリティシェフでもありません。私はいろんな人に助言をもらい、助けられてきました。陳さん(注:「中華の鉄人」陳建一氏)や、素晴らしい助手や、フードコディネーターに。
私はお客様を幸せにする事がゴールと思っています。ホスピタリティ、サービス全部を含めて100%です。30%が料理で、70%が音楽やデザインやサービスなどを含めた「雰囲気」だと思っています。予約の電話をした時の対応からすでに始まります。
そしてお客様を幸せにするには、従業員や関係者も幸せにしたい。シェフだっていつも同じものをつくっていたら飽きるので、新しいメニューも考えて、モチベーションをあげます。
こういうカテゴリーの料理では自分が先駆者だと思っていますが、皆が後から来るんですよ。どんどん鉄砲の性能も良くなっているんですよ(笑)。だから、追いつかれないように追いつかれないように、一生懸命やって行きたいですね。
モリモトヴィールチョップアップルソース

シェフ森本の幼少期の経験が今日(こんにち)の成功の原点だったとは…。初対面にもかかわらずすぐに心を開いてプライベートなお話をしてくださいました。その気さくで明るい人柄が、人気の秘訣でもあるのではないでしょうか。

鉄板焼きコーナー

「モリモト・ドバイ」の入り口にある巨大な提灯、店内の真ん中にある2フロアを突き抜ける松の木、運河に面したテラスのバー、スペイシャスな鉄板焼きコーナー、どこをとってもスタイリッシュです。

雰囲気を楽しめる「フュージョン・ジャパニーズ」のお店として、これからも外国人、そして日本人のお客様にも人気のお店となることでしょう。

モリモト・ドバイの入る「ルネッサンスホテル(Renaissance Downtown Hotel Dubai)」は都会的でモダンなホテル、時間をゆったり過ごしたい人向け

ルネッサンスホテル外観

さて、このレストラン「モリモト・ドバイ」の入ったルネッサンスホテルは、ドバイ歌劇場(ドバイ・オペラハウス)からおよそ3、4km。「世界一高い高層ビル」ブルジュ・ハリファ(Burj Khalifa)とドバイモールから4kmの場所に位置し、大運河に面しています。すべての客室から運河か、ブルジュ・ハリファを臨むことができます。

代表的なお部屋はアラブテイストのキングルーム

キングルーム(運河側)

内装はアラブテイスト(言われて初めて気づきました)とはいえ、超モダンで洗練されています。一見、普通のビジネスホテルのような外観ですが、ホテル内はシンプルさの中にもゴージャス感が香ります。ほかにもダブルベッドのツインルームやスイートルームなど、上のランクのお部屋もあります。

キングルーム(ブルジュ・ハリファ側)

レストランはほかに南仏風、イタリアン、BHAHがあります

レストランは23階と24階にある「モリモト・ドバイ」以外にも、デイビッド・メイヤーの「ブルー・ブラン」(南仏風レストラン)と「BASTA!」(イタリアン)、アラブ料理の「BHAR」があります。

Bleu Blanc by David Myers
BASTA!  by David Myers
BHAR

スパ「Six Senses Spa Dubai」にはスイートルームが6つ

もちろん、スパも充実しています。Six Senses Spa Dubaiには6つのトリートメントスイートがあり、ハマム(モロッコ風垢すり)からヨガまで多彩なメニュー構成です。ビーチよりショッピングとスパとオペラ、という方にお薦めのホテルと言えます。

Six Senses Spa Dubai

世界中で話題の「鉄人シェフ」のレストランを体験しがてら、このホテルに滞在してみてはいかがでしょうか。一泊のお値段は季節にもよりますが、だいたい800ディルハム(2ダブルベッド運河側)から18,000ディルハム(プレジデンシャルスイート)です。

※1ディルハム=約30円(2018年10月現在)

問い合わせ先

森本正治さん
シェフ
(もりもと まさはる)24歳の時に広島で最初のレストランを開いた5年後、アメリカに渡り、1994年にニューヨークのノブに雇われ、すぐに腕を認められエグゼクティブシェフに昇格。その後2001年にフィラデルフィアにレストランをオープン。2004年には、ムンバイのタジマハールホテルにWasabi by Morimotoを、2008年にはニューデリーのタジマハールにも二軒目のWasabiをオープン。モリモトニューヨークは2006年にオープン。現在東京、メキシコシティー、バンコック、ラスベガス、マウイ、ワイキキ、ボカラトン(フロリダ)、ウォルトディズニー(フロリダ)、ラスベガス、ドーハほか、計17店舗を展開している。
Masaharu Morimoto

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この記事の執筆者
大学卒業後、ルフトハンザドイツ航空、カンタスオーストラリア航空勤務。その後フランス人と結婚し、その赴任先ニューヨーク、パリを経て在ドバイ15年。3人のティーンの母。趣味 生け花、美食、旅行、ピープルウォッチング(魅力的な人々が魅力的な事を魅力的な場所でしているのを見ること)。