忙しい現代人を悩ませている「肩こり」。首を傾けただけで、軽い痛みを感じることはありませんか? 長時間にわたるパソコン作業やスマホ操作の影響で悩みを抱える人が多く、今や肩こりは「国民病」とまでいわれています。まして冬は体が冷えることもあり、肩こりが悪化しやすい季節。整体やマッサージに通う女性は多いはず。ただ、できることななら自宅で解消したいですよね。

そこで今回は、顧客にプロのアスリートを数多く持ち、信頼の厚い柔道整復師、天竺整骨院の田中 宏さんに、肩こりの原因と自宅でできる解消法をお聞きしてきました。田中さんは肩こりに詳しく、著書『6万人の患者が改善!腰痛肩こり頭痛を解消 寝るだけ整体』が出たばかり。記事の後半では、書籍でも紹介されたタオル枕を使った肩こり解消法もご紹介していきます。

■整体のプロが教える「肩こりの主な原因」

肩こりはなぜなるのか
肩こりはなぜなるのか

そもそも肩こりとはどんな状態のこと? 具体的にいうと、筋肉が緊張している状態のこと。

田中さんによると「筋肉は、ゴムのように伸びたり縮んだりすることで動くわけですが、緊張というのは、縮んで固くなった状態のこと」なのだとか。例えば、腹筋運動をするとお腹のあたりが引きつるように痛みますが、これが肩、正確に言えば首の付け根あたりで起こっているのが、肩こりです。

肩こりが起きてしまう原因は有名なのでみなさんご存じと思いますが、よくいわれているのは以下の3つです。

(1)姿勢の悪さと運動不足

椅子に座りっぱなしで 、目や手先を使う仕事や家事をすることが多い現代人。長時間、同じ姿勢でいることによって、筋肉が過度に緊張状態のまま固まってしまいます。 さらに、運動不足になると、肩回りの筋肉を動かしてほぐす機会がなくなります。

(2)ストレス

精神的なストレスがかかると、気がつかないうちに体全体に力が入ってしまいます。もちろん、首や肩も含まれ、 筋肉が過度に緊張状態になってしまいます。

(3)冷え性

冬の寒さだけでなく、夏場の冷房にも要注意。高い場所から首や肩に冷風が直撃するからです。寒さで肩回りの血流が悪くなると、筋肉の緊張状態はさらに悪化します。


■実は「ゆがみ」も肩こりの原因になっている

前述の3つに加えて、慢性的な肩こりの原因として、田中さんは”ゆがみ”が加えられるべきだと話します。

「人間は普段から常に、体のバランスを取りながら生活しています。ただ立っているだけ、座っているだけのときでも、完全に脱力すると体は傾いてきて、倒れてしまいます。しかもその間、頭の重さは首にかかってきて、腕の重さは肩にかかってきます。それらの重さを、首や肩周りの筋肉を使って支えながら、バランスを保つ必要があるわけです」

このときに正しい姿勢ができていれば、最小限の筋肉で支えることができます。ところが生活習慣や環境、個人的なクセなどによって、正しい姿勢から逸脱していってしまうのです。

「私たちはこうした、正しい姿勢から逸脱した状態を総称して”ゆがみ”と呼んでいます。ダルマ落としでいうと、積み上げ方が悪くて今にも崩れ落ちそうな状態です。これが人間の体で起こると、不安定な体を支え続けるために、首や肩周りの筋肉の力を過剰に使う必要があります。

筋肉を使うといっても、スポーツや筋トレのように強い力を出すわけではなく、意識的に行うわけでもありません。本人は筋肉を使っている自覚はありませんが、たとえ弱い力でも休みなく使い続けているので、結果的に首や肩周りの筋肉が疲弊していきます。これがゆがみによって肩こりが起こるメカニズムです」

慢性の肩こりの大多数は、頸椎(首の骨)や鎖骨、肩甲骨や肩を支える背中側の骨のゆがみが原因で起きています。

もともと体重の10%前後を占める頭や、両肩にぶら下がる腕の重さを支えるため、首から肩にかけての筋肉には常に負担がかかっています。例えば頭の位置から5センチ前にずれると、それだけで2倍の重さがかかってくるといわれているのです。


■肩こりに「なりやすい人」と「なりにくい人」の差

何が違うのか
何が違うのか

ただ、なかには肩こりの悩みと無縁の人もいます。肩こりになりやすい人となりにくい人にはどのような違いがあるのかが気になるところ。

これについては、例えば仕事や趣味などでずっと同じ体勢で同じ作業を続ける人と、適度に体勢を変えながら作業内容も変える人がいるとすると、同じ作業でも前者の方が肩こりになりやすいということがいえるそうです。

「何かひとつのことを続けると、同じ筋肉をずっと使い続けることになります。しかも没頭することで、筋肉の疲弊に気づきにくいからです。また気づいたとしても、自由に体勢を変えたり出歩いたりできない場面も多く、体をリセットできません。その間もどんどん筋肉の疲労は蓄積していくわけです」

適度に体勢を変えながら作業することが肩こり予防になるということ。そしてもちろん、体の違いもあると言います。

「実際まったく同じ作業をしていても、肩がこりやすい人とこりにくい人がいますが、これは前者の方がより体のゆがみが大きいと考えられます。ゆがみが大きい=作業以前にすでに筋肉を使っているので、そこから作業した分の疲労が上乗せされていくからです」

肩こりにあまり悩まされない人になるために、少しずつゆがみの小さい体にしていくとよさそうです。


■柔道整復師・田中 宏さんが教える肩こりの解消方法

ここまでで、肩こりの原因として大きく4つをご紹介し、生活習慣や冷えなど外的な要因も影響することがわかりました。次は、肝心の解消法について。すでに発生している肩こりについては、どのようにすればいいのでしょうか。注意点とともに田中さんに教えていただきました。

(1)軽めの運動やストレッチ

軽い運動で体をほぐすことで肩こり解消につながります。

「まず自分自身で行うものとしては、軽めの体操やスポーツが適当です。簡単なものとしては水泳やウォーキング、ヨガやストレッチなどがいいでしょう。ポイントとしては、あまり頑張りすぎず、軽めにすること。無理しすぎるとケガや故障の原因になるだけでなく、いつの間にか動作や姿勢が偏って、悪いクセがつくことがあります。それが体のゆがみにつながり、かえって肩こりの原因になる可能性もあるからです」

(2)半身浴などでリラックスタイムをつくる

また生活の中で、意識的にリラックスする時間をつくるのも効果的だそうです。

「気持ちがリラックスすると、体の余分な力も抜けて、筋肉の緊張を緩めてくれます。半身浴や好きな音楽を聴くのもよいでしょう。また長時間同じ姿勢や同じ作業が続く場合は、間で小休止を挟んだり、体勢を変えるようにしましょう」

(3)整体やマッサージ

あとはやはり、整体やマッサージなどプロにケアしてもらう方法も。

「整体やマッサージなどで、他人の手を借りるのもよいでしょう。というのもいい状態を維持するために、時には客観的に現状をチェックしたり、必要に応じて軌道修正も必要だからです。その際に信頼できる専門家の力を借りれば、より効果的に肩こりの治療を進めていけます」

日頃から自分自身でできる対策を続けながら、定期的に専門家にも診てもらうのがベストといえるのかもしれません。


■田中 宏さん考案の「新しい肩こり解消」方法

さらに田中さんは「体のゆがみは骨格に根付くクセなので、このクセを正すことがいい姿勢を維持する最大の方法」と言います。

そこで考案したのが「寝るだけ整体」。これは「寝ているだけで全身の不調が消えていく」と数多くの人が実践し、効果を出している方法なのだとか。腰痛や膝痛、首こり、もちろん肩こりにも効果的。

寝るだけ整体のやり方は、首の下にバスタオルでつくった枕を置いて、あお向けで寝るだけ。簡単なので今晩から始められます! まずは整体枕をつくるところから取りかかりましょう。

120×60センチほどのバスタオルを半分の長さに折りたたみ、折り目の側からくるくると丸め太い棒状にします。

整体枕のつくり方
整体枕のつくり方

ほどけそうならゴムなどで止めて準備完了! 直径8〜10センチ、長さ60〜80センチが理想です。

整体枕のつくり方
整体枕のつくり方

つぎに、首に合っているかチェック! 整体枕ができあがったら、一度頭を乗せて首や頭と合っているか確認します。

完成した整体枕
完成した整体枕

チェック項目は以下の4点です。

(1)天井が真っ直ぐ見られるか

(2)喉に圧迫感がなく呼吸しやすいか

(3)首が浮いていないか

(4)肩、肩甲骨か床(寝具)についているか


■肩こり解消「寝るだけ整体」のポイント

整体枕のチェックが終わったら、以下のポイントを意識しながらトライしてみてください。

(1)姿勢はあお向けで寝る!

途中で寝返りを打ってもOK。ただしあお向け寝をすることによって、体は自分で整体を行うので、あお向け寝に慣れていない人も、少なくとも眠りに落ちる前、 10分間はこの姿勢をキープするようにしてみてください。

(2)手づくりの寝るだけ整体枕を使う

寝るだけ整体枕を使うと、首のゆがみが改善し、それが背中、腰と全身の骨格にも影響し、全身が整います。これにより、寝るだけ整体の効果が加速!

(3)部屋の電気は暗くする

より深い睡眠で脳や体全体を癒やすため、電気(照明)は暗くして休みましょう。

(4)できれば布団は硬いものを

硬め&薄めの布団がおすすめ。寝返りが打ちやすくなり、背骨に本来の正しい姿勢を覚えさせることができます。ただし、痛くて眠れないようなら、自分にあった硬さのものを選んでください。


■「寝るだけ整体」が肩こりにいい理由

誰でも無理なく続けられ、時間もお金もかからない「寝るだけ整体」。習慣化しやすいのも続けやすい理由です。

「どんな人でも1日のうち数時間は寝ています。その時間を使ったセルフケアなので、何かを犠牲にして時間を捻出する必要はありません。特別に体力や意志の力も必要ではないので、どなたでも取り組みやすいのです」

また通常の肩こり解消法というのは、日中に行うものですが、「寝るだけ整体」は文字通り、寝ている間の肩こり解消法になります。

「起きている間に何らかのアプローチをしていく場合の問題点として、体の防御反応が挙げられます。例えばストレッチで伸ばそうとすると、その筋肉が伸ばされまいとして、逆に硬く縮んでしまうことがあります。

またマッサージを受けていても、押される場所を無意識に守ろうとして、かえって力が入って硬くなることも多いです。この防御反応は、人間が外部から身を守るための本能なのですが、それがさまざまな場面で足を引っ張ってしまうのも事実。

ところが寝ている間は、この防御反応が解除されることになります。その時間を使って、体に正しい姿勢や状態を覚え込ませていくので、より効果が出やすいと言えるでしょう」

以上、肩こり原因と解消法についてお届けしました。ご自身の肩こりのタイプを知ることが、肩こり解消の近道ですね。「寝るだけ整体」は、初めは普段の枕よりは低いと感じるかもしれませんが、寝ているだけで肩周りや腰、お腹など体がストレッチされるのを感じられます。手軽にできるので、ぜひ取り入れてみましょう。

田中 宏さん
柔道整復師
(たなか・ひろし)1975年、兵庫県生まれ。日本柔道整復専門学校卒業後、病院、整骨院、整体院勤務を経て、2009年、天竺整骨院を開院。さまざまな治療を研究・分析・考案し、現在の治療体系を構築する。中でも最も効果的な治療法として「寝るだけ整体」を考案する。これまでにプロスポーツ選手など延べ6万人の悩みを解決させ、多くの患者から絶大なる支持を受けている。また全国で開業している整体師や治療家を対象に、セミナー等で指導する「先生の先生」としても有名。
『6万人の患者が改善!腰痛肩こり頭痛を解消 寝るだけ整体』田中宏・著 アスコム刊

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この記事の執筆者
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WRITING :
庄司真紀
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