肩こりにはさまざまな原因がありますが、現代人が避けて通れないのが、ストレスからくる肩こり。「仕事が忙しい時は肩や腰の痛みが増す……」という人は多いはず。ストレスからくる肩こりは、ストレスを避けるのが一番。しかし、口で言うほど簡単にストレスは取り除けるものではありません。
どうすればストレスからくる肩コリを解消できるのか? いま多数のメディアで取り上げられ大人気の六本木・寺林治療院院長の寺林陽介さんに、肩こりの原因と一緒にお聞きしてきました。
記事の後半では、肩こりに有効なマッサージとして、寺林さんの著書『ストレスとりたきゃ頭蓋骨をもみなさい』(金町脳神経内科・耳鼻咽喉科院長の内野勝行・監修、アスコム)から、頭蓋骨マッサージのやり方もご紹介します。
■人気治療院院長が教える「肩こりの主な原因」
肩こりには姿勢の悪さや血行不良などさまざまな要因がありますが、ここではまず主な肩こりの原因をみていきましょう。
(1)姿勢の悪さからからくるもの
人間の頭はおよそ5~6キロあるといわれています。これはボウリングの球に相当する重さ。
寺林さん曰く、「まっすぐ前を向いている時はよいのですが、下を向くなどして頭が前に出てねこ背になると、頭を支える首の筋肉に2~3倍の負担がかかります。
その主な筋肉は僧帽筋といい、その範囲は首の後から背中(肩甲骨)まであります。ですので、下を向いてスマホを見たり、電車で居眠りなどすると、首から背中にかけて大きく負担がかかり、ガチガチに”こる”のです」とのこと。
(2)筋力不足からくるもの
普段はあまり感じられないですが、人間の腕はおよそ1本4~5キロあり、肩には相当の負荷がかかっています。
「1本4~5キロある腕を肩で吊っているわけですから、肩には負担がかかります。とくに、なで肩の女性などは筋力不足で腕に引っ張られて肩が下がってくるので、腕を支える負担も大きく、肩こりが出やすいです。筋力不足からくる肩こりの典型と言えるでしょう」
(3)噛み合わせからくるもの
また、歯並びや噛み合わせのアンバランスも肩こりに影響します。そのため、歯の治療などで、片側でばかり噛んでいたりすると、首の横側の胸鎖乳突筋の使い方に偏りが出るため、首肩のこりにつながるのだとか。
(4)冷えからくるもの
体が冷えやすいと、体にコリが出やすくなります。寺林さんによると、「冷えを感じるということは血行が悪いということ。筋肉に栄養を運ぶのは血液ですから、筋肉はこりやすくなります。手が冷たい人などは体のコリにも注意しましょう」とのこと。
(5)運動不足からくるもの
運動不足が日常的になると、筋肉が使われず、肩こりを誘発しやすくなります。それは、筋肉のポンプ作用による血行促進効果が乏しく、筋力も弱いため、肩こりもこりやすくなるそうです。
■実は「ストレス」も肩こりの原因になっている
これ以外にも、首や肩、腰などの痛みでは精神的なストレスから来ているものが少なくありません。
「人間は何かしらストレスを感じると、自律神経のバランスが乱れます。例えば、上司に小言を言われた。満員電車のオジサンの息や、女性の香水が臭いといったことから、気温の変化に至るまで。ストレスを感じると交感神経が優位になり、血管が収縮して血行が悪くなり、肩こりなどの体のコリを引き起こすのです」
とくに首や肩、腰のあたりは血液の流れが滞りやすく、細胞に十分な酸素や栄養が行き渡らなくなったり、乳酸などの老廃物がうまく排出されず、溜まっていくため、筋肉がどんどん疲労し、硬くなり、コリや痛みを生じるようになります。
「さらに硬くなった筋肉や、栄養不足によって炎症を起こした細胞が、首や肩、腰などの神経を刺激し、痛みやしびれが起こることもあります」
このように、ストレスは意外なところにまで影響を及ぼしているのです。
■肩こりが原因で「緊張型頭痛」が起こることも!
また肩こりは、頭痛の原因になるといわれています。慢性頭痛のうち、緊張型頭痛は頭から背中にかけての筋肉が緊張することによって起こるのです。
「ねこ背の人や、長時間デスクワークをしている人は、どうしても頭や首、肩背中などの筋肉に余計な負担がかかります。すると筋肉が緊張し、筋肉中の血管が収縮して血行が悪くなり。乳酸などの老廃物が排出されにくくなり、筋肉じゅうにたまっていきます。それが神経を刺激し、痛みを引き起こすと考えられているのです」
寺林さんは、痛む部位で見分けられると言います。
「はちまきで思いきり締められたように頭が痛むのであれば、目の使いすぎ。後頭部が痛むようなら、首、肩のこり、といったところです。長時間デスクワークの人、運動不足の人は適度に休憩をとって、筋肉をほぐすことで頭痛の予防になります」
精神的なストレスが肩こりの原因になるように、ストレスもまた緊張性頭痛を引き起こすのだとか。
「ストレスを感じている状態が長期間続くと、交感神経の作用により、やはり筋肉が緊張し血行が悪くなるためです。さらにストレスが続くと、脳内の痛みを調整する機能が低下し、筋肉が緊張していなくても頭痛が起こるようになる、ともいわれています」
そのため、肩こりが慢性化しないよう、日々ストレスや体の緊張を取り去っていくことが大切なのです。
■寺林陽介さん考案・肩こり解消「頭蓋骨マッサージ」
ここまでで、肩こりは姿勢の悪さや運動不足、冷えといった原因以外にも、精神的なストレスも大きく影響していることがわかりました。
ただ、運動をしたり、正しい姿勢を取るようにしたりすることでは、なかなか解消できないという人も多いはず。そこで寺林さんが考案したのが、「頭蓋骨マッサージ」。現代人が酷使している頭皮のコリを揉みほぐすマッサージ法です。
「姿勢の悪さや、運動不足、冷えなどからきている肩こりであれば姿勢を正したり、運動をしたりすればいいですが、それも大変なのではないでしょうか。直接、肩を揉むのも自分でほぐす場合は、片方ずつやらないとならないので、手間と時間がかかります。
その点、この頭蓋骨マッサージは左右同時にできますし、道具も時間もかかりません。ストレスや不眠、自律神経の乱れから、眼精疲労、鼻水、鼻づまり、歯の問題や食い縛りからくる肩こりなどに対応できます」
この頭蓋骨マッサージが効果的な理由は、頭の疲れを取る点にあります。
「私の治療院に来る患者さんで、頭がまったくこっていない人は、100人に1人いるかいないかです。肩を揉んで肩の筋肉のコリが和らいでも、頭がこったままだと、何かすっきりしない。それは頭の疲れがとれていないからです。
逆に頭の疲れを取ることができれば、それを脳が感じとり、スッキリした感じになります。ストレスからのダメージがリセットされるのです。
ストレスを感じる→自律神経が乱れる→肩がこる→肩こりが更なるストレスになる→もっと肩がこる
という悪循環に陥りやすく、この頭蓋骨マッサージで自律神経を整え、優位になった交感神経をリラックスさせることで、この悪循環を絶っていただきたいです」
それではさっそく、頭蓋骨マッサージをしてみましょう。
(1)耳の上のマッサージ
両手の指の第2関節を曲げ、薬指と小指の第2関節を耳の上にぐっと押しあてます。そして耳の上を、3段階に分けてマッサージします。1段階につき、10数えるくらいの長さを目安にしましよう。
(2)こめかみのマッサージ
両手を軽く広げ、小指球(手のひらの小指の付け根の、盛り上がっている箇所)をこめかみの下あたりにぐっと押しあて、グルグルと後ろまわしで10回マッサージします。その後、両手をこめかみの、くぼみのあたりにあて、やはり10回マッサージします。
(3)後頭部のマッサージ
両手でこぶしをつくり、小指の第3関節を後頭部の耳の下、頭蓋骨の下の端あたりにぐっと押しあてます。そして、頭蓋骨の下のラインに沿って手を中心部へ移動させながら、4段階に分けてマッサージします。1段階につき、10数えるくらいの長さを目安にしましよう。
4段階目では、片方の手の小指の第3関節を、後頭部の左右ど真ん中、髪の生え際の少し上のくぼみのあるあたりにぐっと押し当てます。
このとき、両方の手でマッサージするのが難しい場合は、片方の手ずつやっても構いません。
4段階目の場所を小指で押すのが難しい場合は、親指でもんでも構いません。
(4)側頭部を温めてリラックス
目を閉じて両方の手のひらを側頭部の耳の上あたりにあてます。そのまま、じわっと手の温もりを感じながら、ゆっくり30数え、最後に大きく深呼吸して、手を離します。「手が冷たい」「なかなか温まらない」と感じた方は、手を10~20回すばやくこすり合わせ、手を温めてから行いましょう。
■肩こり解消「頭蓋骨マッサージ」の4つのポイント
このマッサージは、以下の4点に注意しながら試してみてください。
(1)マッサージの時間は、1回あたり 3分程度を目安にしましょう。
(2)少し強めの力でマッサージすると、より効果的です。頭皮をただもむのではなく、頭蓋骨をもむつもりで、手をしっかり押しあててから、マッサージを始めてください。
(3)側頭部を温める際、「手が冷たい」「なかなか温まらない」と感じた方は、手を10~20回すばやくこすり合わせ、手を温めてから行いましよう。
(4)無理のないペースで深呼吸(腹式呼吸)をしながらマッサージすると、リラックスできるうえ、血液やリンパの流れもよくなります。
疲れている自覚がある人にはこの頭蓋骨マッサージが、初めは「痛い」と感じるかもしれませんが、一通り最後までやってみてください。もちろん効果には個人差がありますが、少し強めにマッサージするくらいがちょうどよく、頭のコリがほぐれて体も気分もリフレッシュします。肩や腕を力ませないように、肩を落とし、背筋を伸ばして行ないましょう。
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- TEXT :
- Precious.jp編集部
- WRITING :
- 庄司真紀