ストレスというものは厄介で、少し休んだくらいではなかなかすべてを解消できないもの。しかし、長期間にわたるストレスは体にさまざまな悪影響をもたらすので、軽視できません。

慢性的な肩こりも実はそのひとつ。ストレスが過度にかかると、血流不足になり筋肉がコリ固まってしまい、肩こりが引き起こされてしまうのです。仕事をしている以上、ストレスフリーは難しいもの。一体どうすれば、この肩こりを簡単に解消できるのでしょうか?

医療法人了德寺会の了德寺健二さんに相談したところ、このメカニズムと血流をアップさせるツボを教えていただきました。了德寺さんの独自の療法は、科学的にも実証された12のツボを刺激するものですが、指圧でも一定の効果が認められるそうです。

■なぜ肩こりは「血の巡りの悪化」によって起こるのか

血の巡りの悪化
血の巡りの悪化

肩こりの原因には姿勢の悪さや冷え、ストレスなどが関係しています。まず、悪い姿勢を続けていると習慣的に体にクセがついてしまいます。それにより体がアンバランスな状態になると筋肉のコリが固まり、血流が不足し、慢性的な肩こりになってしまうのです。

さらに、冷えやストレスも、体内では血流不足の引き金に……。長いあいだ血の巡りが悪いと、筋肉はやわらかさを失って肩こりが悪化していきます。長時間パソコンやスマホの画面を見続ける現代では、これらが複合的に関係していることが多いのです。

つまり現代人の肩こりは、内的なストレスや姿勢の悪さや冷えといった外的な要因によって生じた血流不足が、大きな原因ということ。

このような状況を了德寺さんは、「血流は体中の細胞に酸素と栄養を運んでいます。血流が十分でないと、酸素と栄養が体中の細胞に十分に運ばれず、様々な体調不良の原因になるのですが、肩こりも同様です。

とくに大事なのが毛細血管にいたるまで、血流が十分であること。栄養と酸素が肩の筋肉に十分に行き渡っていれば、柔軟でしなやかな状態が保たれ、固くなりにくいのです。 毛細血管の血流が不十分な状態が続くと、いくら肩を揉んで筋肉をやわらかくしようとしても、固いままの状態が続いてしまいます」と警告します。

要するに私たちは、普段から血液の循環について気をつけておく必要があるのです。

■ストレスによって血流不足になるメカニズム

ストレスと血流不足
ストレスと血流不足

ところで、なぜストレスは血の巡りに悪影響を及ぼすのでしょうか?

これについて了德寺さんは、「血流不足が起きる最大の原因はストレスです。人はストレスを感じるとストレスホルモンが分泌され、アドレナリンが上昇し、素早い動きを取れる状態になります。血管が収縮し、血圧が上昇するのです。

外敵から身を守るためのシステムなのですが、現代社会ではそれがかえって仇となります。仕事上のプレッシャーや、複雑な人間関係が、常にストレスホルモンの分泌を促すため、毛細血管が収縮し、血流不足が常態化するのです」と言います。

ストレスがかかると、私たちの体の中ではストレスホルモンが分泌。ストレスホルモンはアドレナリンを分泌させ、血管を収縮させます。そして、上記のようにストレスが免疫を低下させることにつながっていくのです。

免疫力が低下し、それが長期に渡ると、病気を引き起こすことにつながっていきます。そのため了德寺さんは、「小さなストレスだからと油断しているとそれが積み重なって、病気を引き起こすキラーストレスになることもありますから、放置しないようにしたいものです」と警鐘を鳴らしているのです。

■ツボ刺激はストレスが低下して血流がアップする

ストレス低下も
ストレス低下も

では、どうやって肩こりや病気の元となるストレスに対処すればいいのでしょうか? 了德寺さんが開発した、独自のツボを刺激するストレスフリー療法を教わりました。

了德寺さん曰く、「ストレスフリー療法では、私が発見した特定のツボを刺激することで、ストレスホルモンの分泌が低下することが分かっています。つまり、毛細血管の収縮が収まり、血流がアップするのです」とのこと。

ツボ押しがいい理由については、「毛細血管に血が行きわたると、腸の蠕動運動も活発になります。内臓の血流が低下している状態ですと、腸の働きも悪くなり、消化吸収力が落ちています。血液から、酸素と栄養を運ぶ力がどんどん失われていく悪循環に陥るのです。

ツボを刺激することで血流がアップし、腸の活動も向上すれば、酸素と栄養が肩の筋肉に十分に運ばれるようになり、固かった筋肉にしなやかさが戻り、肩こりも大幅に回復するでしょう」と教えてくれました。

血流を促すツボは12個あり、まったく新しい独自10個のツボと東洋医学でよく知られる、左膝下の足の三里、お腹の真ん中ほどに位置する中脘(ちゅうかん)からなります。独自のツボのうち、3つが若返りのツボで、顔にあります。

これらのツボは多くの症例による臨床データに基づいたものであり、研究成果は国際学術医学誌にも論文が掲載されています。ただし、医療機関の治療に替わるものではないので、ご注意ください。

■了德寺さん考案・血流アップ&肩こり解消ツボ

12個のツボのなかから、ストレスフリー療法によく使われる5つのツボをご紹介します。

ひとつめのFのツボは万能のツボ、了德寺さんいわく究極のツボだそうです。4つめの眼窩上孔のツボと5つめの眉間のやや上のツボは、視力回復にいいツボ。さらに見た目も若々しくなる、若返りのツボでもあります。肩こりの原因となる目の疲れにもピッタリです。

(1)左右のFのツボ

足裏のツボで、親指と人差し指の間から垂直に下に伸ばした線と、内くるぶしから伸ばした線が交わる箇所にあります。

左右のFのツボ
左右のFのツボ

万能点のツボ。 生活習慣病をはじめ幅広く効果があります。

(2)お腹のツボ

胸骨剣状突起(肋骨の枝分れするところ)とへその中間にあるため、別名は中院。

お腹のツボ
お腹のツボ

胃の不調や糖尿病を改善し、子宮や内臓の位置異常を癒します。

(3)脛のツボ

脛骨粗面(脛の骨から膝に向かって指をなぞって自然に止まる場所)とツボ・陽陵泉(脛のやや下にある骨のでっぱりから親指1本分下)の2点を結ぶ中間にあります。

脛のツボ
脛のツボ

足の三里と呼ばれる著名なツボ。胃炎、胃下垂などの消化器系疾患をはじめ、中風、座骨神経痛、蓄膿症など幅広く効果があります。

(4)眼窩上孔のツボ

まゆ頭の内側から眉の3分の1ほどのところに、左右それぞれ1つずつあります。

眼窩上孔のツボ&眉間のやや上のツボ
眼窩上孔のツボ&眉間のやや上のツボ

(5)眉間のやや上のツボ

(4)と(5)の眉間のツボは3点同時に刺激し、血流を高めます。

これらのうち独自のツボは、東洋医学で365か所あると言われているツボではありません。また内臓の異常により各臓器に付随する筋肉に緊張を生む内臓体壁反射や、指などで圧迫した時に痛みが出る圧痛点にも存在しない独自のものです。

ただ、ツボは写真やイラストと実際に自分の体とでは若干見た感じが異なるため、わかりづらいかもしれません。

「最初はわかりにくいですが、慣れてくると、それほど難しいことではありません。皮膚がくぼんでいるところ、あるいはやわらかく凹んでいるところがツボなのです。上記の写真やイラストを参考にして、だいたいの位置を指で押してみてください。

身体に不調があると、それに関連したツボが反応します。その時々に応じて、反応する場所も違ってきます。

お腹にある中脘のように、身体の中心にあるものを除いて、ツボは必ず左右対称に存在するので、左右両方のツボを刺激してみてください。頭で考えるよりは、指で感じることが大切です。それができるようになれば、ツボも見つけられるでしょう」(了德寺さん)

どこがツボなのか迷ったら、くぼみや凹みを探してみてくださいね。

■より「血流アップ効果が期待できる」ツボの押し方

効果的なツボ押し
効果的なツボ押し

ちなみに了德寺さんのストレスフリー療法では、究極のツボのF点を含めた4か所を同時に温熱で刺激します。しかし、指圧によっても効果があることがわかっているそうです。

「専用の機器で温熱刺激する方法だと、最も血流が上がりますが、機器をお持ちでない方は、指圧でそれらのツボを刺激しても一定の効果がありますので、ぜひ取り入れてみてください。

4か所同時に押すのは1人では難しいので、1人で行う場合は2か所ずつで行います。指圧の要領で、気持ちがよいと感じられる程度で押圧することがポイントです。決して痛くなるように、強く押したりしないようにしましょう。押圧する時間は1分くらいを目処にしてください」

どのツボを選べばよいかわからないという方は、(1)のFのツボがオススメなのだとか。

「これらのツボは、血流アップに顕著な効果があり、施術を受ける前と比較すると、受けた後は血流量が2~3倍もアップするのです。体中に酸素と栄養が行きわたるので、肩こりにも十分に効果があります。

ツボの中でも、足裏にあるF点と呼ばれるツボが最も血流アップに効き目があることがわかっています。まずは、最も簡単なF点を刺激することから始めてみてはいかがでしょうか」

とくに細かな決まりはありませんが、左の三里と左のF点の同時に押圧する方法は、椅子に座っていてもできるので、仕事中にも取り入れやすいツボ押しです。

その場合は左足を右足に浅くかけた姿勢で、右手で左F点を左手で左の三里を指圧します。

体が温かくなったり、力が抜けるようにリラックスできたり、すぐに効果がわかるはず。肩こり対策のほか、緊張を解きたいときや眠りたいときにもおすすめなので、試してみてはいかがでしょうか?

了德寺 健二さん
医療法人了德寺会・主宰
(りょうとくじ けんじ)昭和23年、鹿児島県生まれ。医療法人了德寺会を主宰。学校法人了德寺学園、学校法人了德寺大学理事長。高校卒業後、川崎製鉄に入社。柔道部にて監督を務める。監督退任後、苦学して独立。整形外科10院を設立し成功する。平成12年、学校法人了德寺学園を設立。理事長就任。了德寺学園医療専門学校、了德寺学園リハビリテーション専門学校を開校。平成18年、了德寺大学を開学。平成23年4月、千葉県柔道連盟会長に就任(~平成25年9月)。講道館柔道七段。平成23年、ストレスフリー療法研究会会長に就任。平成26年、千葉県柔道連盟名誉会長。著書に『「究極のツボ」を刺激すると健康になる』(アスコム刊)など多数。
『血流を増やせば健康になる』了德寺健二・著 アスコム刊

肩こり関連記事

この記事の執筆者
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
WRITING :
庄司真紀