筋肉を動かさず、長時間同じ姿勢でいると、逆に疲れてきませんか? 動いていないのに、肩がどっしり重たいと感じるようになったら、それは肩こりの兆候。筋肉が固まると可動域が狭くなり、ロボットのような動きになったり、咄嗟の出来事に対応できず怪我につながったりします。

体をあまり動かさない仕事をしている人ほど、肩と背中のストレッチが効果的です。そこで今回は、いいだ整骨院・鍼灸院の原 幸夫さんが監修された『マンガでわかる ゆがみと痛みが消えるストレッチ』から、肩こりの原因と肩こり解消ストレッチをお伝えします。

コリを放置しておくと痛みになったり、年々体が前傾してねこ背になってしまうこともあるので、できるだけ早めに取り入れていきましょう。

■肩こりはなるべく「毎日のメンテナンス」で解消しよう

肩こりはなるべく毎日のメンテナンスで解消しよう

まず、姿勢は年齢とともに悪くなるものだと思っていませんか? 人は自然に前かがみになるわけではなく、ほとんどは「長年の習慣」が原因。体の使われ方に左右差があったり、クセがあったりして、体がゆがんでしまうのです。それによってコリが発生し、痛みが伴う場合も出てきます。

「パソコンやスマホの普及により、世の中は大変便利になりました。しかし、同時に体を動かす機会が減り、体がこり固まっている人が極端に増えてきたのです。原因は長時間のパソコン、スマホの使用、横座り、足を組む、高枕といった普段、何気なく行っていることや、いつの間にかついたクセが体をゆがませてしまうのです。しかし、恐ろしいことにゆがみはそれだけではとどまりません。放っておくと次々と連鎖し、やがて痛みをも生んでいくことになるのです」

コリや痛みがある部分は動かさないようにしたりすると、さらに血行が悪くなり、悪循環に陥ってしまいます。悪循環を断ち切るには、普段から体のメンテナンスをすることが大切です。

「大切なのは、ゆがみを元に戻してあげることです。日頃からストレッチで筋肉をやわらかくしてあげれば、それだけでいつまでも自由に動くことが可能となります。筋肉を伸ばしたり、縮めたりする簡単なストレッチを身につければ、痛むこともなく、また、老化も食い止めることができるのです」

つまり、コリや痛みを感じてからストレッチをするのではなく、その前から定期的に行っておくべきなのです。

■肩こりを解消するために「体のゆがみ」を整えてみよう

肩こりを解消するために体のゆがみを整えてみよう

日常的なクセが体のゆがみを生むことがわかりましたが、そもそも普段から姿勢が悪い人は体がゆがんでいる場合が多いそうです。体は、ひとつでもゆがみがあると、さらにいろいろなところに不調や痛みが出てきます。肩こりに加えて、腰痛、頭痛、冷え、不眠といった症状があるなら、ゆがみを整えることで解消することが可能かもしれません。

「例えば右肩が痛くなったとします。何とかいつも通りに手を上げようとします。ところが体は痛い右肩に力を入れないようにする代わりに、右ひじ、手、肩甲骨周囲でカバーしようとします。これが長時間続くと、疲労は徐々に広がり、首、左肩、腰などにまで影響がおよび、右肩とは遠く離れた場所まで痛みだしてしまうということもあります。これを“代償(だいしょう)運動”といいます」

体に慢性的な痛みのある患者さんのうち、ゆがみをとっていい姿勢になることで、ほかの痛みがなくなるということは本当に多いのだとか。

「体のゆがみの原因は、筋肉のバランスが崩れてしまうこと。これを根本的に解決するためには、筋肉の柔軟性を高め、体に中心軸をつくることです」

つまり、ストレッチの前に姿勢を見直して、自分のゆがみがどれくらいあるのかを自覚するところから始めた方がいい、ということですね。

■自分の体がどれくらいゆがんでいるか確認しよう

自分の体がどれくらいゆがんでいるか確認しよう

ふとした瞬間に自分の全身の姿を見て、「こんなに姿勢が悪いなんて……!」と感じたことはあるはず。肩こりの原因となる背中のゆがみをセルフチェックしてみましょう。

まず、壁側に立って、どの部分がつくかで確認できます。壁に背中をつけて、いつもよりも筋肉が伸びていると感じたら、普段の楽な姿勢はもっと内側に丸まっているということ。まずは普段通りでどの程度、ねこ背になりやすい傾向があるか?試してみてください。

(1)体のどの部分が「壁にぴったり」ついていますか?

壁の前に立ちます。壁にかかとをつけ、足の幅はこぶしひとつ程度ほど開いて、両足の外側が平行になるように立ちましょう。大きく深呼吸をして肩の力を抜いて、まずはリラックスします。

「後頭部、背部、仙骨、かかとの4点がつき、腰の後ろに手がギリギリ入るくらいのスペースが開いていれば、正常です。もし、もっとすき間が開いているとしたら、骨盤が前傾した状態であり、反り腰になっていて、背中が曲がっているS型ねこ背。反対にまったく手が入らない人は骨盤が後傾し、頭が前に出ているC型ねこ背ということになります。腰痛、背中の痛み、ひどい肩こりの原因となるので注意が必要です」

(2)後頭部はついていますか?

後頭部がつきにくければ、C型ねこ背になっています。背中のゆがみがあると感じたら、ぜひ不調や痛みが強くなる前に整えていきましょう。

■肩こり解消のストレッチはまず「肩甲骨」から行おう

肩こり解消のストレッチはまず肩甲骨から行おう

ここで、肩こりに話を戻しましょう。みなさんは背中にファスナーのある洋服を自分でファスナーを上げたり、下げたりすることができますか?

「以前はできたけれど、今はしづらくなった……」という場合、肩甲骨の硬さが関係しています。普段の生活ではパソコンやスマホなど、腕を前に伸ばすだけの生活で、肩甲骨まわりを動かさない生活です。そうすると、肩甲骨周辺の筋肉が硬くなり、動きにくくなってしまうのです。

「重い頭を支えているのは首だけではなく、背中側の首から肩周り、背骨にかけての筋肉(僧帽筋)にも関わってきます。筋肉が疲労して血液の循環が悪くなると、そこに乳酸が溜まって、痛みが出て、筋肉を硬くさせてしまうのです。肩こりは胸にある大胸筋が萎縮して上腕が引き込まれて内旋し、肩甲骨が外側に開き、僧帽筋が縮むことにより起こります」

肩甲骨周りはさまざまな筋肉があるところ。いきなり肩の僧帽筋を動かそうとしても、なかなかほぐれていきません。

「(肩甲骨の周辺は)背中をおおう広背筋(こうはいきん)、背骨に沿う脊柱起立筋(せきちゅうきりつきん)、腰椎(ようつい)と肋骨(ろっこつ)と骨盤をつなぐ腰方形筋(ようほうけいきん)といった筋肉が、お互いに絡み合い伸びたり縮んだりしながら体を動かしています。

周辺が固まっていれば、肩甲骨の動きも悪く、周囲の筋肉はアンバランス状態。そこで、動きやすいところから動かしてみる、ストレッチしやすいところからストレッチしてみるのもよい方法です」

ただなんとなくストレッチをするのではなく、肩こりなら肩甲骨まわりから行うがベターというわけです。

■簡単ですぐにできる「肩こり解消ストレッチ」4選

簡単ですぐにできる「肩こり解消ストレッチ」4選

それでは、どんなストレッチが肩こりにいいのか? あまり激しいものではなく、ちょっとした時間に自宅で誰でもできる肩こり解消ストレッチを厳選してご紹介します。

(1)肩のこりに効くストレッチ

胸を突き出すようにして、肩こり、胸、肩関節の痛みを防止します。喉の調子も改善します。

肩のこりに効くストレッチ

姿勢を正して、天井を見るように、ゆっくりとアゴを引き上げていきます。頭を後ろに倒すのではなく、あくまでもアゴを上へと向けていくイメージです 。

「このとき手を体の後ろで組み、アゴを上げていくのと同時に、組んだ手を斜め 下へと引っ張っていくと首前だけでなく、胸、肩の筋肉もほぐれていきます。手を上げ下げして、左右に動かすと、伸ばされる場所が違うので気持ちいい場所を 見つけてください」

手の指はクロスさせ、肩甲骨をぐっと内側に寄せるイメージで行います。

(2)肩関節ATMストレッチ

ATMとはアンチトリックモーションストレッチのことで、代償運動をおこさないストレッチです。背中のこり、肩こりが改善し、肩関節の動きがよくなります。

肩関節ATMストレッチ1
肩関節ATMストレッチ2
肩関節ATMストレッチ3

左足のひざを曲げます。左手で左足のかかとをつかみ、肩甲骨を前に引き出すようなイメージでひざを伸ばしていきます。足の位置を下げると肩甲骨の上方が、上げると下方が伸びます。足を内側に持ってくると肩甲間部(けんこうかんぶ)が伸びます。

伸ばしたいところが引っ張られるように、背中を丸めるのがポイントです。弓にたとえると体が弓で手と足で引き寄せるイメージです。最初はできなくて当たり前。特に体が硬い人には難しいストレッチですが、続けるとできるようになってきます。

(3)肩関節前方ストレッチ

肩甲骨の動きがよくなり、肩関節の可動域が広がるストレッチです。

肩関節前方ストレッチ1
肩関節前方ストレッチ2
肩関節前方ストレッチ3

両手を肩幅より広めに開いてからソファーに手をつきます。ソファーの前にしゃがみ、ゆっくりと下方向へしゃがんでいきます。

このストレッチを行うときは、背中が丸くなりやすいので、背筋はしっかり伸ばしておきます。また、勢いよくかがみこむと肩を痛める可能性がありますので、ゆっくりと慎重に行うようにしましょう。肩甲骨の内側に効くストレッチ。きちんと固定されていれば、椅子でも代用できます。

(4)肩関節柔軟

肩甲骨の間をせばめて、肩周辺をじんわりと伸ばしていくストレッチです。

肩関節柔軟1
肩関節柔軟2

後ろ手で、ソファーの背もたれをつかみます。手の幅は肩幅程度が目安。肩甲骨の間をせばめて、胸と腕のつけ根周辺を伸ばします。このとき背中はしっかり伸ばし、視線は少し上方向に向きましょう。 

下を向いたり、ひじは曲げないようにしてください。手と手の間は狭い方が効果的です。つらかったら手と手の幅を調節してください。肩こりがひどい人は腕が上がらないかもしれません。また、立ったままの姿勢でもOKです。

肩甲骨や肩関節がほぐされ、内巻きになりやすい肩が本来の位置に戻るストレッチ。肩周りがこっている人ほど最初はきつく感じられるでしょう。ただ、肩周辺を伸ばす動きは普段の生活ではほとんどありません。そのため、意識的にこういったストレッチを取り入れて、肩こりの予防と解消をしていくことをオススメします。

原 幸夫さん
柔道整復師・鍼灸師・あんまマッサージ指圧師
(はら ゆきお)いいだ整骨院・鍼灸院/いいだカイロプラクティック院長。株式会社いいだケアアンドキュア代表取締役。カイロプラクティック アクティベータメソッド アドバンス認定。医薬品登録販売業。アキレス腱断裂を手術しないで歩きながら治す治療(保存歩行治療)で年間100例以上の治療を行っている。
『マンガでわかる ゆがみと痛みが消えるストレッチ』原 幸夫・監修 伊三次ちえ・イラスト 新紀元社刊

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この記事の執筆者
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WRITING :
庄司真紀