ジル・ヴェルラン著『ゲンスブールまたは出口なしの愛』(マガジンハウス刊、永瀧達治ほか訳)によれば、人生の天才の魅力がセルジュ・ゲンスブール自身の肉声で語られていて、核心に迫っている。

デニムスタイルの先駆者セルジュ・ゲンスブールのファッション哲学

意識的に取り入れた無造作風スタイルこそゲンスブール・イズム

張った肩と絞ったウエストを持つ、サンジェルマンシェイプのジャケットはレノマのもの。それに洗いざらしのジーンズを合わせたミックススタイルが、ゲンスブールの象徴だ。中に着込んだシャツもドレス仕様ではなくミリタリーシャツ。無造作に襟を暴れさせて着るテクニックなど、現代の〝ハズし技〟の感覚に通じるハイセンスな装いだ。写真:ANDERSEN/GAMMA/アフロ

「美女たちは私に夢中だよ。私はこれから何もする必要はない。私の電話は鳴りっぱなしだ。それに、手紙が来るといえばラブレターばかりーー」とゲンスブールは胸を張る。

20世紀に生きた男たちのなかでこんなにモテたオスはいない。しかも女同士の醜い嫉妬がない。はじめ人妻だったブリジット・バルドーのためにつくった『ジュ・テーム』でバルドーは囁くように歌う。「あなたは私の腰の間を行ったり来たり。オー!モナムール、あなたの波」

実際ゲンスブールは大物女優ジェーン・バーキンをはじめ、酒と煙草を片手にかたっぱしから女優を喰いまくった。かれはいい女の乳首を咥えているとき以外はジターヌを吸っていた。いい女とキスをして唾液を啜っているとき以外いつも酒を飲んでいた。

「私がセルジュと会った時、彼の心の中でブリジットへの想いが大きな位置を占めていたことはすぐ分かったわ。彼女の声とか美しさは、彼にとって理想的な女性のものだったのよ」とバーキンが告白してる。

若いとき自分は耳と鼻が大き過ぎて醜いと悩んでいたが、ついにそのコンプレックスさえも武器にしてしまった。お洒落も群を抜いていた。冬でも裸足で白いレペットを履き、パンツはジーンズ、定番のダブル・ジャケットはレノマだった。

ゲンスブールスタイルをソフトジャケットと洗い加工のシャツで表現!

そしてゲンスブールは悠々とうそぶいて語っている。「私はすべてに成功したが、人生に失敗した」。どうしてこんなに沢山のいい女にモテた男の心のなかに、いつも渺々と孤独の風が吹いていたのだろうか。これこそがモテる男の人生の贅沢な悩みだったのである。

Profile
Serge Gainsbourg
1928~1991年。パリに生まれ、58年に歌手としてデビュー。反骨精神あふれるスタイルで人気を得る。今年は映画『ゲンスブールと女たち』が公開されるなど、再評価の機運が。

※2011年秋号取材時の情報です。※価格は税込みです。

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