9回目を迎えるラグビーワールドカップ。アジアではじめて開催された記念すべき大会だ。大会は全国12開催都市で行われ、熱く激しい試合が繰り広げられた。プールと呼ばれる4つの組み分けに5チームが入り、総当たり戦をした。その結果の上位2チーム=8チームが決勝トーナメントに進むのだ。日本は過去にこの決勝トーナメントに進んだことがなく、夢でもあった。今、その夢が実現し、はじめての舞台が始まろうとしている。

単色の中に「しましまジャージ」!ここまで来たら伝統国を倒せ!!

“にわか”の人にこそ知ってほしい3つのテーマ

全勝で決勝T出場を決めた日。マン・オブ・ザ・マッチ(最優秀選手)に選ばれたのは2トライで貢献した福岡堅樹。
全勝で決勝T出場を決めた日。マン・オブ・ザ・マッチ(最優秀選手)に選ばれたのは2トライで貢献した福岡堅樹。写真/藤岡雅樹

■1:日本の決勝トーナメント進出と意義

まずは、ラグビーワールドカップは9回目。今回はじめてアジアで行われたということを知っておこう(日本で行われるようになった経緯は前回のコラムをお読みください)。ラグビー界は英国、フランス、イタリアを中心とする欧州と南半球のニュージーランド、オーストラリア、南アフリカの勢力が強く、ラグビーの実力もあるので、それ以外の国の発言権やパワーが弱かったといっていい。

その中で、日本がアイルランドやスコットランドといった伝統もあり、強豪のチームを倒して全勝で決勝トーナメントに出るということは、とてつもない偉業なのである。

開催がアジア初であるし、決勝トーナメント進出もアジアのチームとしてはじめてのこと。これは、アジアのラグビーの代表が決勝トーナメントに出ていることに等しく、たくさんの国に勇気と元気を与えていると想像できる。日本は、この大会で、力強く、俊敏で、賢いラグビーを展開しており、海外のメディアからも絶賛されている。それは並々ならぬトレーニングと、選手が自分たちで考えて行動した結果だ。さらに自国開催という地の利はあるだろう。スタジアムが揺れるほどに感じる、日本チームに対する声援、応援、拍手は、選手たちの気持ちをふるいたたせ、折れそうな心に元気を与えているからだ。

今回、4つの組(プールと呼ばれる)から上位2チーム=8強が決勝トーナメントに進んだ。

日本以外は、ニュージーランドは黒、イングランド白、アイルランドは緑、ウェールズ赤、オーストラリア黄(金)、南アフリカ濃緑、フランス青、と単色基調のジャージ(ユニフォーム)だ。対する日本は赤と白の縞。ん?他の国は単色が基本なのに、日本だけシマシマ?なんで?これは次の説が有力だ。まず、伝統国はジャージの色を縞にする必要がなかった。つまり単色が選べて、それで充分だったのだ。後からジャージを作る必要ができた国は、単色だと伝統国と似てしまう。これでは試合中に区別が付きにくいので、単色を組み合わせ縞柄にしたというわけだ。そう考えると、単色の伝統国の中に縞々チームがいるということは、他の伝統国を退けて8強までのしあがってきた意地の証ととらえることができる。どのチームもセカンドジャージを持っていて、ちなみに日本代表のセカンドジャージは濃いブルーとブルーの組み合わせだ。

■2:これまでの日本代表の闘いを整理する

スコットランド代表に勝利した日本代表。ジェイミー・ジョセフ監督と抱き合うのは、途中出場で大役をまっとうした中島イシレリ。写真/藤岡雅樹

日本代表のプール戦は4勝全勝で1位。ちなみにプールとは決勝に進むための総当たり戦の組分け。4つのプールに世界の代表国が振り分けられ、闘った。それぞれのプールの上位2チームが決勝トーナメントへと進出する。その決勝トーナメントに残った国は、アイルランド、イングランド、ウェールズ、オーストラリア、フランス、ニュージーランド、南アフリカ、日本である。

では、日本代表のこれまでの闘いを振り返ってみよう。

ホスト国としてまずは東京国際スタジアムにて9月20日の開幕戦でロシアと闘った。結果は30対10。自国開幕という緊張感からか、全体的に堅い試合展開だった。2戦目は9月28日のアイルランド戦。会場は静岡県「小笠山総合公園エコパスタジアム」。この時点で世界ランク2位の強豪。しかし日本は激しいタックルを浴びせ続けアイルランドから19対12で勝利をもぎとる。

このあたりから、内外の報道が日本代表に大きな注目を寄せ始める。

そして3戦目は10月5日の対サモア戦。サモアのパワフルな機動力に手こずりながらも38対19のダブルスコアで勝利。そしていよいよ4戦目。前回のワールドカップで唯一敗戦した相手・スコットランドと対戦。日本はここまで全勝。スコットランドはアイルランドにだけ負けて1敗。もう後がない。決勝トーナメント進出には日本に勝つ必要がある。伝統国の意地を見せる大一番。10月13日(日)に横浜国際総合スタジアムでのワールドカップ史上にものこるだろう激戦が行われた。結果は28対21。ワントライ+ワンゴール差。前半から3トライをあげた日本がそのまま行くかと思いきや、スコットランドも伝統国の意地を見せ、じりじりと日本のゴールに迫った。

最後は日本の執念の粘り勝ち。自らの手で歴史を切り開いた。この日は大型台風直撃があり、開催が危ぶまれたが、関係者のなみなみならぬ努力で開催にこぎ着けた。前日2試合、当日1試合が中止になっており、これもワールドカップ史上はじめての出来事だ。

日本は2015年の前回大会で南アフリカ、アメリカ、サモアに勝利し、3勝で2位通過か、と思われたが南アフリカとスコットランドとともに1敗が並び、ポイントの争いで敗れて、惜しくも決勝トーナメントには進めなかった。その時に敗れたのがスコットランドであり、今回はしっかりと勝ってコマを進めたという訳だ。

■3:これからのライバルはどんなチーム?優勝賞金は??

人気急上昇!笑わないのがトレードマーク・稲垣啓太の逆転トライに大歓声が沸く!
人気急上昇!笑わないのがトレードマーク・稲垣啓太の逆転トライに大歓声が沸く!写真/藤岡雅樹

まず10月20日に対戦するのが、南アフリカ。2015年の前回大会で日本が初戦で勝利したチーム。ラストワンプレーでの逆転劇は“史上最大の番狂わせ”といわれるほど世界に衝撃を与えた。南アフリカはワールドカップの優勝2回という強豪だ。

南アフリカは1995年の自国開催での優勝しており、同国ネルソン・マンデラの物語とともに映画化もされた。愛称はスプリングボクス(カモシカの一種)。パワーとスピードを兼ね備えたチームだ。世界ランクは5位(10月16日現在)。日本に対しては前回大会の“お返し”も狙っているだろう。

決勝トーナメントの準々決勝では、ウェールズ対フランス、ニュージーランド対アイルランド、イングランド対オーストラリアが闘い、日本が南アフリカに勝つと、ウェールズ対フランスの勝者との対戦となる。

決勝トーナメントになると、各国目の色を変えてくるので、別次元の闘いが観られるはずだ。イングランドが勝ち上がってくれば、決勝で日本との闘いとなる可能性もある。イングランドの監督は前回大会で日本を率いたエディー・ジョーンズ氏だ。

また日本でも人気のニュージーランド代表=オールブラックスが勝ち残れば、決勝で日本との対戦となるかもしれない。どのチームもここまで来ると、満身創痍、疲労も蓄積しているだろう。決勝の舞台に立てる2チームは、勝ちたいという意欲を試合の最後の笛まで持ち続けられるチームだ。

では、そんな彼らは何のために闘うのか? 賞金??

いや違う。ラグビーワールドカップは優勝しても大会からは一銭ももらえない。

ラグビーワールドカップのピッチに立つ者は、ただ栄誉のため、国の威信のために闘うのだ。