雑誌『Precious』6月号では特集「ラグジュアリー・パフェ図鑑」を展開。ときめくルックス。ジュエリーのようなフルーツの輝き。かさねの色目のようなレイヤー。今、パフェの進化が止まりません。
それは、身近な異世界。大人心をとらえて離さないラグジュアリーなパフェをお持ちしました。本記事では、特集した「ラグジュアリー・パフェ」をまとめてご紹介します。
■1:「さくらんぼのパフェ」ナミ ザイモクザ|鎌倉
フードディレクターのさわのめぐみさんが2021年、鎌倉に移住して始めたのが休日喫茶室。始まりはプリンだった。それが少しずつ立体的になり、いつしか美しい月替わりのパフェが誕生。
この日は、6月のテーマであるさくらんぼを使って。マカロンを乗せたパイ生地をかじり、きいちごとライチのジェラート、さくらんぼと食べ進めると、ほうじ茶のクリームやパンナコッタで、しっとりと甘やかなゾーンに。エピローグはチェリーのコンポートで名残惜しい甘酸っぱさに包まれる。
■2:「シーズナル パフェ 日向夏・杏仁・コリアンダー」メゾン ビヤンネートル|代々木上原
10年以上前からパフェ好きの間でも大人気の「ビヤンネートル」。4月に提供された日向夏のパフェは、白いわたまで甘く美味しい宮崎県・綾町産の日向夏との出合いから。
フードロス問題にも取り組み、日向夏の皮はメレンゲにも使用。スペイン語の通訳から転身してのパティシエ修業時代、スイーツで人の笑顔が増えることが励みになった。店名は「幸福感」を意味するフランス語から。ペアリングのジャスミン、レモングラス、桑の葉のブレンドティーと共に味わえば、幸せな余韻が続く。
■3:「パルフェビジュー(R)メロン」パティスリィ アサコ イワヤナギ|等々力
雨上がりの匂い、光る葉末のしずく。記憶の中の景色が浮かぶような「パルフェビジュー(R)メロン」(5月末頃終了予定)は、主役のメロンにジャスミンのジェラート、ココナッツのソースなどを合わせた異国情緒ある仕立て。寒天のあじさいが季節の移ろいを予感させる。
パーツは進化し続け、ときには和菓子がのるなど、味の予想を幸せに裏切ってくる。「自然界に存在する色だけで表現したい」と、色合いは優しく、生クリームの代わりにフロマージュ・ブランやエペスクリームなどを使い、軽やかに食べられるのもうれしい。
■4:「せとかとハーブのパフェ」アン プラト|蔵前
店主の森井美紀さんが、「柑橘の王」とされるせとかに魅了されてつくったパフェ(5月上旬まで)は、パンチの効いたライムとバジルのソルベから、せとかのとろりと濃厚な甘さの濃淡が絶妙。
中盤、ペアリングのバジル焼酎でバジル香を追い足しながら、ラストのせとかのジュレを食べる頃には、全身に清々しさが満ちてくるよう。甘さ控えめながら、柑橘とハーブ、チーズクリームなどが心地よく混じり合い、口福度は高い。パフェのほかにも、ごぼうやカリフラワーなど野菜を使ったデセールコースも注目を集める。
■5:「河内晩柑のパフェ」アス|恵比寿
名店でキャリアを積んだ青木 繁さんは「香り」を大切にしている。河内晩柑のさっぱりとした香りに、ココナッツやキャラメルのミルキーな風味が混じり、クリームに忍ばせた柑橘や杏仁が花のように香り立つ。
カクテルグラスに品よく盛られたサイズ感とまろみのある甘さで、追加注文する人も。青木さんはわさびでマリネしたれんこんのひと皿のように、スパイスや薬味も取り入れ、焼きたてを提供するフィナンシェの準備中は、店内にバターの香りが満ちる。華やかで美しい香り、目の前でつくり上げるライブ感で時を忘れて楽しめる。
■6:「ラグジュアリー・パフェ」2種 ラトリエ ア マ ファソン|上野毛
森 郁麿さんとスタッフが生み出すパフェは、目の前に出されても味の想像がつかない。春のいちごのパフェは、平たいグラスにいちごがゴロゴロ…と思っていると、ライチゼリーや杏仁ゼリーで見事に「擬態した」ものが!
しかも鉄観音茶や山西老陳酢などを使い、シノワズリな仕立て。2杯目限定の和素材モンブランは逆さ富士を表現し、ドライアイスの幻想的な演出。多くの人が2杯食べるという芸術的なパフェは、8~15℃の、もはや冷蔵庫な厨房でつくられる。独創的な世界観が心身共にリフレッシュさせてくれる(パフェは今季は共に終了)。
■7:「苺と薔薇のアツアツグラタンパフェ」エンメ|青山
その瞬間でしか食べられないのがパフェの醍醐味。なればと、パリや東京の名店で腕を振るった延命寺美也さんが注目したのが、香りと温度差。千葉県・石井農園の絶品いちご、バラや和紅茶が出された瞬間から華やかな香りを放ち、ソルベのハッとする冷たさのあとには、温かいカスタードグラタン。
その温冷の心地よいコントラストにすっかりハマる。温かさがあることでより食べ疲れず、キルシュのジュレのさっぱりとした後味で、もうひとつ食べたくなる余韻。グラタンパフェは季節のフルーツを替えながら提供。ソムリエで夫の信一さんと営むエンメは、夜はビストロに。パフェとワインのペアリングで一日を締める美食家も多い。
■8:「アメリカンチェリーのアートパフェ」ジョウタロウ サイトウ カフェ|銀座
トップはディストピアを連想させ、グラス部分は美しい毒を感じる妖艶な青。主役のチェリーの存在感をあえて隠すのが流儀。この唯一無二のパフェが楽しめるのは、着物デザイナー・斉藤上太郎氏のショップ内に併設のカフェ。
着物をまとった女性の立ち姿をイメージした江戸切子のオリジナルグラスに、パティシエは「気持ち悪いけれど目が離せない感じ」に仕立てるというが、手間をかけたディテールと表現力は見事。
※掲載商品の価格は、すべて税込みです。
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- PHOTO :
- sono(mame)、長谷川 潤
- EDIT&WRITING :
- 松田亜子、安村 徹(Precious)