チョコレートやココアの原料として知られるカカオ。最近ではカカオが持つ健康効果が注目され、甘さを楽しむことよりも、健康を意識した、高カカオチョコレートが人気になっています。そしてより健康意識の高い人たちは、カカオ豆そのものに注目。カカオ豆から外皮と胚芽を取り除いたカカオニブが密かな人気となっています。
カカオニブは、チョコレートやココアの原料となるものです。16世紀に中南米からヨーロッパに持ち込まれ、たちまちヨーロッパの人々を虜にしたというカカオ。ここではカカオの基礎知識、種類、健康効果などをご紹介していきます。
【目次】
- カカオとは? 学名、産地、歴史、実のでき方、カカオ原料の作られ方
- カカオ豆の種類
- カカオ豆の加工法
- カカオに含まれる成分
- カカオの健康効果
- スーパーフードとしての「カカオニブ」
- カカオニブを使ったレシピ
- カカオを食べる時の注意点
【1】「カカオ」って何? どんなもの?
カカオの学名は「テオブロマ カカオ」。「神の食べ物」という意味も
カカオの学名は「テオブロマ カカオ」。テオブロマには「神様の食べ物」という意味があります。原産地は中南米の熱帯地域。はじめはほかの果物と同じように、豆ではなく果肉が食べられていたと考えられていますが、長い歴史のなかで、中南米の人たちはこの豆を焼くと、よい香りがすることを発見しました。
ですが、カカオは栽培がとても難しく、15世紀に栄えたアステカ王朝では、とても貴重な食べ物とされ、口にすることができたのは王様や貴族だけ。また、貨幣として使われるほど重要なものでした。
カカオの産地
中南米が原産地のカカオは、16世紀にヨーロッパに持ち込まれました。その後、ヨーロッパの人たちは貴重なカカオをより多く手に入れるために、ほかの場所でも栽培することを考え、中南米の各地へ、そして西アフリカや東南アジアへと産地を広げていきました。
しかし、カカオは赤道周辺の年間平均気温が27度以上、高温・多湿で、水はけがよい土地でなければ育たないため、ごく狭い地域で栽培されています。
世界のカカオの4分の3はアフリカで生産
現在、世界のカカオの4分の3はアフリカで生産されていますが、前途の通り、カカオは熱帯の限られた条件でしか栽培することができません。そのため、特に高品質なカカオは大変貴重なのです。
カカオの歴史
中南米で貴重品とされていたカカオを16世紀にヨーロッパ人が「発見」しました。コロンブスが新大陸発見の航海でカカオ豆を入手し、スペインに持ち帰りましたが、そのときは食べ方もわかりませんでした。
その後、アステカを征服したスペイン人・コルテスが、カカオ飲料のつくり方とともにカカオ豆をスペインに持ち帰り、スペイン王に献上しました。これをきっかけに、スペインの上級階級の間でカカオを飲む習慣が広がりました。
カカオの実「カカオポッド」は幹に直接生える
カカオの木は4年くらいで花が咲くようになり、1年中、たくさんの花を咲かせます。ですが、実を結ぶのはそのうちの1%程度です。半年ほどでカカオポッドと呼ばれる長さ15〜30センチ、直径10センチくらいのラグビーボールのような実が育ちます。
カカオポッドは木の幹や枝から直接生えます。幹生実という形態で熱帯の植物に見られるものです。収穫は年2回、乾季と雨季にそれぞれ収穫できます。
白い果肉「パルプ」に包まれたカカオ豆
暑さ1センチ以上の硬い殻に覆われたカカオポッドの中で、「パルプ」と呼ばれる白い果肉に包まれているのがカカオ豆です。カカオポッド1個の中には、20個〜50個ほどのカカオ豆が入っています。サルやリスなどの動物たち、そしてその昔は、人間たちも豆の周りの甘いパルプを食べていました。カカオ豆はそのままでは苦くて食べられなかったのです。
ちなみに、パルプからつくられた飲み物は、中南米では今でも「パルプシューズ」として親しまれています。
カカオ豆は「発酵」させて食べられるようになる
収穫されたカカオ豆はパルプに包まれたままの状態で、バナナの葉に包んだり、木箱に入れて4〜5日ほど発酵させます。発酵させることでパルプが溶けてなくなり、またパルプの成分がカカオ豆の成分と反応して、カカオ豆独特の香りが生まれます。
この発酵も、もともとはパルプからお酒を作るためのもので、当初、豆は捨てられていたと考えられています。
発酵が終わったカカオは水分量が6%以下になるまで乾燥させます。天日干しが主流ですが、最近では機械による乾燥も行われています。
私たちがカカオを口にできるようになるまでには、長い時間が必要なのです。
【2】カカオ豆の種類
カカオ豆には、大きく分けて3つの種類があります。
■1:最も高級なカカオ豆の品種「クリオロ種」
カカオの原種と言われるもので、有史以前から存在すると考えられています。最も高級な品種とされていますが、病害虫に弱く、栽培が非常に難しい種類です。現在では、ベネズエラやメキシコでわずかに生産されているだけで、カカオの全生産量の1%にも満たないと言われています。
豆は丸い形で、生の時は白色。苦味が少ないのが特徴です。
高品質で、独特の香りがあり、チョコレートの香りづけをするフレーバービーンズとして貴重な存在になっています。
■2:最も多く生産されているカカオ豆の品種「フォラステロ種」
現在、最も多く生産されている品種で、カカオの全生産量の90%以上がこの品種です。成長が早く、病気にも強いのが特徴です。主に西アフリカ、東南アジアで栽培されています。
カカオ豆をブレンドする際のベースとして使用されるため、「ベースビーン」とも呼ばれています。
豆はクリオロと較べると、扁平で、色は紫色です。
■3:クリオロ種とフォラステロ種の特徴を併せ持つカカオ豆の品種「トリニタリオ種」
クリオロ種とファラステロ種が交配してできた品種です。18世紀初頭、南米のトリニダード島でカカオが全滅してしまいました。原因は病気とも台風とも言われていますが、その後、カカオを復活させるためにベネズエラからフォラステロ種を移植しました。このとき、わずかに残っていたクリオロ種と交ざって、トリニタリオ種が生まれたと言われています。
栽培は簡単で、品質がよいというクリオロ種とフォラステロ種の特徴を併せ持った品種で、生の豆は紫色。生産量はカカオの全生産量の8%程度ですが、交配の程度によってさらに細かい品種に分かれ、さまざまな風味を持つ品種があるため、クリオロ種同様、ブレンドする際のフレーバービーンズとして欠かせない存在になっています。
【3】カカオ豆の加工法
カカオ豆には大きく分けて3つの加工法があります。
■1:カカオ豆を加熱して砕き、胚乳だけにした「カカオニブ」
発酵・乾燥させたカカオ豆を加熱(プレロースト)して砕き、外皮と胚芽を取り除いて胚乳だけにしたものがカカオニブです。カカオニブには脂肪分が約55%含まれています。
チョコレートやココアをつくるためには、カカオニブをさらにロースト(焙煎)します。ローストすることによってカカオ豆に含まれるアミノ酸や還元糖がメイラード反応(熱によって食べ物が茶色になる反応)を起こし、ようやくチョコレートやココアの風味が生まれます。
■2:カカオニブをすり潰し、脂肪分(カカオバター)を分離させた「カカオマス」
ローストしたカカオニブをすり潰すと、脂肪分(カカオバター)が分離し、ペースト状のカカオマスになります。
カカオマスに砂糖、ミルク、カカオバターを加えたものがチョコレートです(作り方はもっと複雑です)。
■3:カカオマスからさらに脂肪分を取り除いた「カカオパウダー」
カカオマスからさらに脂肪分を取り除き、粉末状にしたものがカカオパウダーです。
【4】カカオに含まれる成分
かねてよりカカオは、食べ物というよりは、カラダのパワーを高めるための「スーパーフード」として大切にされてきたとも言えます。アステカのモンテスマ王は、1日50杯のカカオ飲料「ショコラトル」を飲んだと伝えられるほど。
カカオに含まれる代表的な成分は、エピガロカテキンなどポリフェノール、リグニン、アテオブロミンです。それぞれ、どのような効果があるのか見ていきましょう。
カカオに含まれる成分「ポリフェノール」のアンチエイジング作用
血管を広げて血圧を下げる作用、活性酸素の働きを抑えて老化を防ぐアンチエイジング、さらには高齢者の脳の血流を増やして脳の働きを活性化する効果があるとされています。
ポリフェノールの一種であるエピガロカテキンは緑茶にも含まれる成分です。血液中のLDLコレステロール、いわゆる悪玉コレステロールを吸収されにくくすることで、結果的に善玉コレステロール(HDLコレステロール)を増やす作用があります。
また血管に脂肪が貯まることを防ぎ、血管の老化や動脈硬化を防ぐ働きも期待されています。
カカオに含まれる成分「リグニン」の便秘予防作用
リグニンは植物の細胞壁をつくる成分で、食物繊維の一種です。微生物や薬品で分解されにくいため、腸内でもほとんど消化されません。そのため、便秘の予防や、発がん物質を吸着させて大腸がんを予防する作用があるとされます。
カカオに含まれる成分「テオブロミン」に期待される、自律神経調整作用
テオブロミンという名称は、カカオの学名「テオブロマ 」から来ています。カカオを代表する成分がテオブロミンと言えるでしょう。テオブロミンには、血流を促進し、集中力や思考力を高める働きがあります。また自律神経のバランスを整え、心身をリラックスさせる効果があります。
【5】カカオの健康効果
カカオが動脈硬化の予防をサポート
カカオの成分は、血管にコレステロールなどの脂肪が貯まることを防ぎます。つまり血管を若々しい状態に保ってくれます。
カカオがストレスの軽減をサポート
カカオは血行を促進し、自律神経の働きを調整してくれるので、ストレスの解消に一役買ってくれます。
カカオがリフレッシュタイムをサポート
カカオには、カフェインよりも緩やかな興奮作用があります。仕事や勉強に疲れた時にチョコレートを食べるとよいと言われるのは、このためです。
カカオの抗酸化作用に注目
活性酸素は、細胞内にある遺伝子を傷つけたりするので、老化を促進したり、細胞をガン化させる原因になるなど、カラダの中でさまざまな悪影響を及ぼします。カカオには活性酸素の働きを抑える作用があります。
【6】スーパーフードとしての「カカオニブ」
近年、健康効果が注目されるチョコレートは、さまざまな商品が開発されていますが、スーパーフードとしてオススメしたいのは「カカオニブ」です。
カカオニブは、カカオ豆を発酵・乾燥させ、ローストして粗く砕いたものであることは、前にお伝えした通り。チョコレートは健康によいと言われても砂糖分が気になることがありますが、カカオニブは100%カカオだけ。そのまま食べるとビターチョコレートのような風味を楽しめます。
苦味が苦手な方は、ヨーグルトやシリアルに混ぜるのもオススメです。
【7】カカオニブを使ったレシピ
カカオはチョコレートやココアとして摂取するのが最も手軽な方法です。最近では甘さではなく、カカオの含有量に着目したチョコレートが人気になっています。
より純粋にカカオを楽しみたいなら、カカオ豆を発酵・乾燥させ、ローストして粗く砕いた「カカオニブ」を使うのがオススメです。カカオニブはそのままでもナッツのように食べられます。
■カカオニブレシピ1「カカオニブヨーグルト」
毎朝のヨーグルトにカカオニブを加えてみてください。カカオの香りとほろ苦さで、ヨーグルトがぐっと大人っぽい味に変身します。
■カカオニブレシピ2「カカオニブシリアル」
シリアルに混ぜるのも手軽でオススメです。朝の忙しい時間でも、シリアルにカカオニブを加えるだけでOK。カカオに含まれるポリフェノールが血行を促進してくれるので、朝からスッキリ、アクティブに動けます。
■カカオニブレシピ3「カカオニブパンケーキ」
いつものパンケーキにカカオニブを加えて焼くだけ。ふわっとしたパンケーキの中に、カリッとほろ苦いカカオニブが加わり、アクセントになります。
■カカオニブレシピ4「カカオニブスムージー」
スムージーにカカオニブを加えると、砂糖の取り過ぎを気にすることなくチョコ風味に。苦味が苦手な人も、甘いフルーツと組み合わせれば飲みやすくなります。
【8】カカオを食べる時の注意点
優れた健康効果を持つカカオですが、取り過ぎには注意してください。カカオには脂質が多く含まれているため、カロリーの取り過ぎになってしまいます。
厚生労働省と農林水産省が定めた「食事バランスガイド」では、「菓子・嗜好食品は1日に200kcalを目安とする」としています。例えば、1ブロック5gのブラックチョコレートだと、カロリーは30kcal前後になります。
またカカオにはカフェインに似た働きをするテオブロミンが含まれています。子どもや妊娠中の方、授乳中の方は取り過ぎに注意するようにしましょう。
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- TEXT :
- Precious.jp編集部