「いつまでも若々しくきれいでいたい…」。アンチエイジング(anti-aging)や老化予防は、女性にとって永遠のテーマですよね。しかしながら、正しいエイジングケア方法や基礎的な知識をご存知の方は少ないのではないでしょうか?
見た目はもちろん、体の中からもアンチエイジングができるよう、本記事では「アンチエイジングとは?」「老化の原因」「アンチエイジングの効能」「アンチエイジングと食事・飲み物」「アンチエイジングと生活習慣」「アンチエイジングとトレーニング」などについて、多角的に紐解きます。
【目次】
- アンチエイジングとは
- 老化の原因
- アンチエイジングの目的
- アンチエイジングと食事
- アンチエイジングと食べ物
- アンチエイジングと飲み物
- アンチエイジングのためには、自分に合った食事法、食べ物、飲み物を取り入れよう
- アンチエイジングと生活習慣
- アンチエイジングと美容ケア
- アンチエイジングと運動
- アンチエイジングと入浴
- アンチエイジングと睡眠
- アンチエイジングとメンタル
【1】アンチエイジングとは
アンチエイジングの意味
まずはアンチエイジングという言葉の意味を理解しましょう。不老不死のようなイメージをもっている方もいらっしゃるかと思いますが、そうではありません。「アンチ」は反抗や抗体、「エイジング」は時間の経過や加齢という意味で、日本語では「抗老化」、「抗加齢」といわれています。
また、「アンチエイジング医学」など医療として用いられることが多く、その場合の定義としては、「元気で長寿を享受することを目指す論理的・実践的科学(日本抗加齢医学会ホームページより)」とされています。つまり、最新の科学的知識をうまく使って、きれいで若々しく、健康に年を重ねることが期待できるということです。
「アンチエイジングと聞くと、美容に直結したものと考えられがちですが、それだけではありません。例えば、特に高齢の女性にとっては骨折が寝たきりの原因のひとつになります。また、男性と比べて女性のほうが寝たきりでいる時間が長いとされています。アンチエイジングとは、骨折やガン、脳梗塞などの病気を防いで、健康で長生きするための医療行為を行うことが根本にあります。その結果として、姿勢が良くなり、精神もはつらつとして、若々しく美しく見えるようになる。これが本来のアンチエイジングです」と、医学博士の飛田沙織先生はおっしゃいます。
一般的には「アンチエイジングしたい、アンチエイジングに効く」という風に言葉が使われていますが、本来であれば「アンチエイジング医学、アンチエイジング医療、アンチエイジングメディスン」など、形容詞として使われるのが適切です。最近では、効果の有無が不明瞭なものや行為にまでアンチエイジングという言葉が使われているため、当記事では、アンチエイジング医学に基づいた観点より解説を行います。また、アンチエイジングという言葉の使い方については、アンチエイジング医学が私たちの日常生活に広く活用されることを目指し、当記事内では一般的な使用例を採用します。重ねて、アンチエイジング医学は刻一刻と進化しています。当記事に記載されている情報は、現時点(2018年4月12日)での最新情報となります。
アンチエイジングとは、最新科学を応用し、健康で若々しくあるための秘訣
人間の体のピークは二十歳前後といわれており、成熟期を境に徐々にパワーダウンしていき、加齢(老化)によるさまざまな症状が表れます。これは誰にでも当てはまり、止めることはできません。しかし、アンチエイジング医学でその速度を抑えることで、元気で健康に、そして若々しい体を保つことがある程度可能になります。老化を緩やかにすること、そして、上手に受け入れていくことが、アンチエイジングといえるでしょう。
【2】老化の原因
遺伝子、酸化、糖化、ホルモンなどが複雑に影響
そもそも老化とは、細胞ひとつひとつの機能が低下し、同時に体のさまざまな部分の機能も低下してしまうことです。例えば老化によるシワやたるみは、細胞機能の低下に伴う、角質層の機能や脂分の分泌機能の低下が原因のひとつです。
老化の原因はさまざまですが、今日でも日々新たな原因の発見や解明がなされています。ここでは、現時点でわかっていきている「老化の原因」をいくつかご説明します。
活性酸素によるサビつき(酸化)
老化の原因の中でも、直接的に影響していると言われるのが活性酸素です。活性酸素は、体内に侵入したウイルスや細菌を退治する役割を持ちます。しかし、ストレスや年齢によって、活性酸素を消去する酵素などの働きも弱まることにより、体内で必要以上に増えると、健康な細胞まで酸化させ、老化が進みます。
酸化とは“サビる”ということ。細胞膜の脂質が変化したり、遺伝子が傷ついたりした結果、細胞の変異や死滅によって、白髪や肌のシミ・シワ、メタボリック症候群、物忘れ、動脈硬化やガンなどの老化現象や病気が起きるとされています。この活性酸素をいかに抑えるかが、アンチエイジングにもつながります。
酸化とともに予防すべきこげつき(糖化)
老化を早めるとされる悪玉物質に、AGE(終末糖化産物)があります。これは、体内の血糖値が急速に高くなるとつくられるものです。AGEは、体内のタンパク質にくっつき変性させ、動脈硬化や認知症、がんなど、さまざまな病気を引き起こすかもしれない、といわれています。またコラーゲンを攻撃し、肌の弾力や張力を衰えさせてしまいます。AGEは高血糖によって体内でつくられるだけではなく、身近な食べ物にも潜んでいます。トーストや焼きおにぎり、おこげなどの褐色の焦げ色がそれです。
しかし、それらのAGEは微量なため、過剰に意識する必要はありません。気になる方は、揚げ物や炒め物よりは、蒸し物や煮物を選んだり、揚げ物にはレモンをかけるなど、AGEを取り込まない工夫をしてみましょう。
遺伝子の変化
老化のスピードには個人差がありますが、その差に関係するもののひとつに、長寿遺伝子があります。この長寿遺伝子は、老化のスピードをコントロールする遺伝子といわれ、人間であれば10番目の染色体に存在し、細胞の損傷やエネルギー生産のときに働く酵素です。若々しく見える人は、この長寿遺伝子が活発に働いています。この遺伝子は、決して特別なものではありません。努力次第で働きを活発にさせることができます。
ホルモンの減少
年齢によるホルモン値の減少も、老化の原因のひとつと考えられています。男女とも、元気だった20代と比較すると、見た目や精神的なタフさが衰えていくのを実感したことがあるでしょう。実はそのような変化と比例して、さまざまなホルモンが年齢により減少しているのです。ホルモンの働きとして、肌艶、髪の毛や爪のしなやかさ、骨・関節を健康に保つ、精神的に元気にする、また脳を物忘れから守ったりする可能性があるとも言われています。
【3】アンチエイジングの目的
アンチエイジングが必要な理由
年齢を重ねると体が衰え、発病のリスクにつながります。人は老化を避けることはできません。しかし、アンチエイジングによって、その老化をできるだけ緩やかにすることは可能です。「歳を重ねても健康で美しくありつづける」、それをサポートするのがアンチエイジングなのです。
アンチエイジングの効能
アンチエイジングには、さまざまな効能やメリットがあります。美肌、美容に効果があり、若々しい健康な姿(見た目)を保てます。アンチエイジングがうまく作用して、実年齢よりも若く見られることもあるでしょう。
また、発病リスクの軽減、健康寿命を延ばすことができます。健康寿命とは、健康上の問題がない状態で、心身ともに健やかな日常生活を送ることができる期間のこと。アンチエイジングにより、病気の予防につながり、健康寿命も延ばすことが可能となります。健康で長生きできれば、医療費も軽減できます。
【4】アンチエイジングと食事
規則正しい食事のタイミング
朝、昼、夜、1日3回決まった時間に食べるようにしましょう。とくに朝食は大切です。朝食を抜くと、低血糖の状態が続いてしまい、血糖を補うインスリン拮抗ホルモンが大量に分泌されます。その後、昼食を食べると血糖値が急上昇し、血糖値を下げるインスリンが分泌されます。血糖値の激しいアップダウンは、体調不良の一因になります。また、次の食事までの時間が長くなると、血糖値が低い状態が続き、脳が強い飢餓感を感じます。そうすると食欲のコントロールができなくなり、ドカ食いをし、結果太りやすくなってしまうのです。その上、体温が低くなり、基礎代謝が低くなってしまうことも。食事の感覚が空くと、脳出血や膵臓に負担がかかるなどのリスクを上げるという研究結果もあるため、朝食は欠かさず食べるようにしてください。
食べ方、食べる順番に気をつけて
また、テレビを見ながら、スマホをしながらなどの「ながら食べ」は免疫力を低下させることも。気の合う人とゆっくりリラックスして食事を楽しむことが、アンチエイジングにつながるのです。
食べる順番も大切です。食物繊維を含んでいる野菜などを先に食べ、そのあとタンパク質の肉や魚など、さらにそのあと炭水化物のご飯などを摂るようにしましょう。その順番にすることで、炭水化物がゆっくりと消化・吸収され、血糖値が急激に上がるのを防ぎます。また、よく噛んでゆっくり食べることで、食べ過ぎの防止、消化の促進、活性酸素の活性を減らせるなどの効果があります。
偏りのない食事のススメ
バランスのよい食事はアンチエイジングの第一歩です。食事内容で気をつけたいことがいくつかあります。
栄養バランスのよい「腹八分目」の食事
まずは、食事内容の総エネルギー量が多くならないように気をつけたいもの。活動量の少ない成人女性の目安は、1400〜2000kcalです。また、脂肪や炭水化物、塩分の摂りすぎに注意することで、高血圧、メタボリックシンドローム、肥満を未然に防ぐことができます。また、高齢になって炭水化物を摂りすぎると、余った糖が体内のさまざまな細胞にくっつき、細胞の糖化を起こします。これが健康寿命にあまりよくない作用をもたらすとされています。タンパク質やビタミン、ミネラルなどを十分に摂り、炭水化物や脂肪の摂取を少なめにした腹八分目の量の食事が、アンチエイジング効果のある食事といえます。
体内の抗酸化力を高める栄養素を取り入れる
それでは、アンチエイジングに効果的な体内の抗酸化力を高める栄養素には、どんなものがあるのでしょうか。ビタミン類では、ビタミンA・C・E、ポリフェノール類のイソフラボン、アントシアニン、フラバノン、カロテノイド類のリコピンやアスタキサンチンなどがあります。また、植物性食品の色素や香り、アクなどから発見された化学物質・フィトケミカル(ファイトケミカル)には、抗酸化作用や免疫力アップなどが期待できます。フィトケミカルとそれ以外の抗酸化力を高める栄養素を含む食品をいっしょに食べることにより、さらに効果が期待できます。上手に食事に取り入れるようにしましょう。
【5】アンチエイジングと食べ物
「デザイナーズフーズ」を取り入れよう
1990年、アメリカの国立がん研究所は、がんの予防に効果のある植物性食品(主に野菜や果物などの約40種)を「デザイナーズフーズ」として発表しました。それらは、がんの予防だけではなく、免疫力の向上や生活習慣病の予防にも効果があるとされ、アンチエイジングの観点からもぜひ取り入れたいものです。デザイナーズフーズとして挙げられている食品の中で、もっとも優秀なのが「にんにく」。次いで、キャベツ、ニンジン、トマト、ブロッコリーなどがあります。
肉、魚、卵などの良質な動物性タンパク質
肉、魚、卵を摂るようにしましょう。それらに豊富に含まれるタンパク質は、肌のハリをつくるコラーゲンの材料となるアミノ酸を含んでいます。1日100gを目安にしてください。カロリーを抑えるには、蒸すなどの油を使わない調理方法や、脂肪分が少ない白身魚、ササミ肉などを使うとよいでしょう。
野菜やきのこ、海藻類のビタミンやミネラル類
アンチエイジングに野菜やきのこ、海藻類は欠かせません。1日に、淡色野菜を200g、緑黄色野菜を100g、豆やきのこ、海藻類を50gを目安に。そうすることで、玉ねぎに含まれるケルセチンや、かぼちゃやほうれん草に含まれるβカロテン、キャベツや大根に含まれるS-メチルシステインスルフォキシドなどの、抗酸化作用のある食べ物をバランスよく摂取できます。野菜を食べるときは、サラダより温かく調理したもので摂るようにしたほうが、体を冷やさないのでオススメです。
大豆や大豆製品などの大豆イソフラボン
女性ホルモン様作用を持つ物質の代表的なものに、大豆イソフラボンがあります。枝豆はもちろん、納豆や豆腐、豆乳、きなこなど大豆製品に含まれている成分です。大豆イソフラボンは、納豆なら1パック、豆腐なら1/2丁を目安に、毎日摂るようにすると良いでしょう。
女性ホルモン様作用(ようさよう)を持つ物質には、美肌づくりを始め女性に欠かせないエストロゲンという、ホルモンとよく似た作用があります。エストロゲンは、個人差はありますが、思春期頃から増え始め、30代後半から減っていき、閉経前後にさらに低下してしまいます。エストロゲンとよく似た作用を持つ大豆を摂るとよいのは、そのためです。
ナッツ類の植物性タンパク質やミネラル類
ナッツ類を摂るのも効果的です。ナッツ類が含む植物性タンパク質は、肌やそのほかの細胞を形づくる役割をしています。また、ミネラル類も豊富です。ミネラル類には、肌や髪に栄養を行き渡らせてくれる役割があり、美肌や発毛を促進する効果があります。なお、ピーナッツはナッツ類ではなく豆類なので、ご注意を。
抗酸化作用を持つフラボノイドが含まれるプロポリス
万能薬とも呼ばれるプロポリスも、アンチエイジングの効果が期待できます。プロポリスには強い抗酸化作用をもつフラボノイドや、ビタミン類、ミネラル類が豊富に含まれています。また、発がん予防にも効果があるといわれています。テロメラーゼと呼ばれる酵素の活性を抑え、寿命を延ばすことが研究で明らかになっています。
免疫力を高める発酵食品
発酵食品も、アンチエイジングに最適な食べ物です。免疫力を高め、抗酸化作用を持つものもあります。納豆や味噌、漬け物、ヨーグルトなどを積極的に摂るようにしましょう。
さまざまな栄養やビタミン、ミネラル類などを含むスーパーフード
健康意識の高い女性に人気のスーパーフードを適切に摂取することも、アンチエイジングにとって有効です。チアシード、ザクロ、キヌア、アマランサスなど、最近はスーパーマーケットで入手できたり、それらスーパーフードを含んだ食品もたくさん販売されているので、上手に取り入れるとよいでしょう。
【6】アンチエイジングと飲み物
アルカリ性で硬水のミネラルウォーター
ミネラルを含むミネラルウォーターは、アルカリ性で硬水がオススメ。アルカリ性は抗酸化力が強く、硬水はカルシウムが多く含まれているためです。飲むときに注意したいのは、飲むタイミング。「水は1日に1.5~2ℓ飲んだほうがよい」という説もありますが、個人の持病や運動量、体調、その日の天候などにより適量は違いますので、一概にはいえません。喉が渇いたときに、コップ1杯くらいまでをゆっくりと飲んでください。
水中毒に注意
「水を一気にたくさん飲みすぎると、『水中毒』になる恐れがあります。私たちの体には、体内の塩分濃度を一定に安定させる機能が備わっています。一度に大量の水分を摂取することにより、体内の塩分濃度が薄まり過ぎると、脳が膨張して意識障害を起こしたり、心臓が弱い方は心不全を起こすこともあります。無理をせず、適量をゆっくり飲むことが大切です」(飛田先生)。
抗酸化作用がある緑茶のカテキン
最も手軽な飲み物である緑茶も、アンチエイジング効果が期待できます。緑茶には、カテキンや食物繊維、ビタミンC、ビタミンE、βカロテンなど多くの抗酸化力のある成分が含まれており、特に体のサビつき予防効果、脂肪燃焼効果などが知られています。
長寿遺伝子を活性化させ、抗酸化作用がある赤ワイン
お酒を飲むなら、赤ワインがオススメです。赤ワインには長寿遺伝子を活性化するレスベラトロールを含んでいます。また、ポリフェノールも豊富です。ポリフェノールは強い抗酸化作用を持ち、ある程度の動脈硬化予防効果が期待できます。飲む量は1日グラス1~2杯までとし、必ず休肝日を設けてください。過度の飲酒はAGEを増やし、ダイエットにも逆効果です。また、女性にとっては、乳がんなどのリスクを高める可能性があることも指摘されていますので、赤ワインに限らず、アルコールの飲み過ぎには注意してください。
【7】アンチエイジングのためには、自分に合った食事法、食べ物、飲み物を取り入れよう
やり過ぎは禁物
「人間は、ひとりひとり基礎代謝量、必要な栄養素の量、体調、持病の有無、腸内環境の違いがあるため、いくら“体によさそう”と思っても、やり過ぎは禁物です。少しずつ試してみて、自分の体調をしっかり見ていきましょう。体調がよくなってくるようであれば続けて、あまり変化がないようなら、ほかのものも取り入れてみましょう」(飛田先生)。
腸内環境も人それぞれ。自分に合うものを見つけて継続を
「腸内環境に関しては、自分に合っているな、調子がいいな、と感じる状態を見つけたら、それを続けましょう。例えば、このヨーグルト、このお味噌、といった具合に、よいと感じるものがあれば、それを継続することが腸内環境に役立つことが期待できます。
また、俗称『デブ菌』と言われるファーミキューテスは、消化されたものを体内に溜め込む菌とされています。しかし、そのようなあまり好ましくない悪玉菌などが、人によってはよい作用を発揮している場合もあります。“これが体によい”という情報だけではなく、自分の体調にしっかり意識を向けてください。
また、糖尿病、高血圧、心臓病や腎臓病、脳出血や脳梗塞など、もともと病気のある方は、主治医にしっかり相談しながら行いましょう」(飛田先生)。
【8】アンチエイジングと生活習慣
アンチエイジングと生活習慣はなぜ密接なのか
老化の原因のひとつである活性酸素。それを増やす要因に、生活習慣が関連しています。睡眠不足や強いストレスにさらされ続けること、化学調味料の摂取過多、喫煙、過度の飲酒など、現代人が陥りがちな生活習慣には気を付けたいものです。
活性酸素は免疫機能にも関係しています。活性酸素が免疫細胞を傷つけて免疫力を低下させることで病気のリスクが高まり、また、細胞を変性させて細胞の老化やがん化を引き起こします。糖尿病や心筋梗塞、脳梗塞などの生活習慣病も、活性酸素の影響のひとつとされています。
どんな生活習慣がアンチエイジングに効果的なのか
バランスのよい食事はもちろん、正しいスキンケア、適度な運動、質の高い睡眠、そしてストレスのない生活などを習慣化することが、アンチエイジングにつながります。
適度な運動が大切
運動をすることで得られる効果には、美肌・若返りホルモンと呼ばれる成長ホルモンや、幸せホルモンと呼ばれるセロトニンの分泌を促したり、血行をよくするなどがあります。成長ホルモンの分泌や血行がよくなると、ターンオーバーによる肌細胞の生まれ変わりが促進され、肌の老化防止、きれいな肌を持続させることにつながります。セロトニンは脳内伝達物質で、心にやすらぎを与える役割があります。セロトニンを分泌することでストレスに強くなり、吹き出物などの肌荒れを改善してくれる効果もあるのです。
また、運動することによって、アドレナリンやノンアドレナリンなどのホルモンも分泌されます。これらは体脂肪を分解し、エネルギー源として消費されやすい形にしてくれる働きがあります。加齢によって筋肉量は落ちていくため、適度な運動を習慣化させ、筋肉量を維持、または増やすことが重要となります。
睡眠で心身のアンチエイジングを
睡眠は人間にとって大変重要な役割があります。睡眠中に成長ホルモンを分泌し、肌の新陳代謝を活発にして、ハリ、ツヤ、うるおいを取り戻してくれる働きがあります。また、睡眠には記憶を定着させ、学習能力を整理する作用があるといわれており、よい睡眠で、知的能力のアンチエイジングにもつながると考えられています。
生活習慣の中で、体に取り入れたくないものを考える
「アメリカでは、食物汚染や食品に含まれる化学物質などにも、意識が向けられています。農薬を使った青果や石油製品(化粧品、食器用・洗濯用洗剤、清掃用品など)をなるべく食べない・使用しないこと、そして、それらの適切な排出機能を持つ健康な体でいることが、アンチエイジング医学の観点からも大切であるとされています」(飛田先生)。
【9】アンチエイジングと美容ケア
基本ケアは、清潔・乾燥・紫外線対策の3つ
アンチエイジングにおけるスキンケアの基本的に大切な考え方として、「清潔のスキンケア」、「乾燥のスキンケア」、「紫外線予防」があげられます。これに沿って、ご説明していきます。
洗顔は泡で肌を洗うように:清潔のスキンケア
洗顔は、洗顔料を泡立て、肌をこすらないように泡で洗うようにします。摩擦は肌の表面を傷つけ、肌荒れやシミの原因になる可能性があります。洗顔料は、油分が適度で、有効成分が含まれているものがよいでしょう。オススメは洗い流すクレンジングオイルです。質が高いクレンジングオイルであれば、ニキビも気になりません。
化粧水はこすらずそっと、大切につける:乾燥のスキンケア
化粧水をつけるときは、手で行いましょう。手に化粧水をのばし、顔全体になじませていきます。このとき、肌をこすらないように気をつけてください。コットンで肌を強くパッティングすると、肌の表面を傷つけてしまう恐れがあります。長期間続ければ、シミや赤ら顔の原因になることも。もちろん、手で強くパッティングするのも控えましょう。肌をたたいても、引き締まる効果はありません。
セラミド配合の美容液で保湿を:乾燥のスキンケア
セラミド(角質細胞間脂質)配合の美容液は、保湿力があるとされています。肌表面にある角質細胞同士をつなぎとめる脂質の一種であるセラミドは、肌のうるおいをキープしてくれます。セラミドは肌内部でつくられますが、加齢とともに減っていくため、外から補うことが大切です。顔全体にたっぷりとつけ、軽くマッサージをするような感じでなじませます。セラミド配合の商品を購入するときは、「セラミド2」「セラミド3」などと、成分表示に書かれたものを選ぶようにしましょう。
NMF(ナチュラル・モイスチュアライジング・ファクター)を大切に
「NMF(Natural Moisturizing Factor:ナチュラル・モイスチュアライジング・ファクター)と呼ばれる、表皮の角質にある、肌の保湿やバリア機能を担う成分は、もともと肌に備わっているものです。洗い過ぎず、適切に清潔にしておくことが大切です。また、NMFが減ると肌が乾燥して、肌が小さい炎症を起こします。肌が潤っているほど、肌のバリア機能も高まることを、覚えておくとよいですね」(飛田先生)。
ピーリングケアで肌の「古い角質細胞」の取り過ぎに注意:乾燥のスキンケア
くすみが気になるようであれば、ピーリングケアを取り入れるのも一案です。肌がくすんでいる原因はさまざまですが、医学的に言うくすみは、角質層が厚くなったことによります。これは、加齢にともないターンオーバーの速度が落ちてしまい、古い角質細胞が肌の表面にたまって、くすんで見えるためです。1週間に1〜2回ピーリングケアをすることで、ターンオーバーが活発になり、肌の弾力がアップし、透明感につながります。また、コラーゲンを増やす効果もあります。ピーリング後は十分に保湿するようにしましょう。
「ピーリングケアで、肌の古い角質細胞を取り過ぎるのはNGです。くすみの原因は、肌の角質層が厚くなったことだけではありません。効果がないからと言って何度もピーリングケアをすると、かえってくすんでしまったり、もともとあった肝斑(かんぱん)が悪化してしまうことも。自分の肌の状況を判断できない場合は、医師に相談しましょう」(飛田先生)。
ビタミンCでコラーゲンをつくる働きをUP、ハリのある肌に:乾燥のスキンケア
コラーゲンを増やして、真皮のシワ、たるみの予防をしましょう。コラーゲン入りの化粧品や食品、サプリメントからコラーゲンを補給するのは、あまり有効ではありません。加齢によるシワやたるみの主な原因は、コラーゲンをつくる働きが弱まることにあります。ですので、コラーゲンアップの働きをもつピタミンC誘導体(リン酸アスコルビル)や、レチノールなどが配合された美容液をデイリーケアに取り入れましょう。
UVケアは年中がマスト:紫外線予防
紫外線対策はオールシーズン行いましょう。太陽光に含まれる紫外線は、肌老化を進める原因のひとつ。日光を浴びると、肌を紫外線から守るために、肌内部でメラニン色素がつくられ、肌の色が濃くなります。これが日焼けです。さらに繰り返し浴びると、シミになってしまいます。また、肌の深い部分に達した紫外線がコラーゲンを破壊し、シワの原因にも。
普段のUVケアから、UV対策がなされた日常使いの基礎化粧品やファンデーションだけでなく、持続効果の高い専用の日焼け止めを使用するとよいでしょう。レジャーやアウトドアなど、日差しの強い場所や長時間の外出には、必ず紫外線カット効果が高い日焼け止めを使うようにしましょう。日焼け止め表示は、SPF30以上、PA+++を目安に。さらに帽子や日傘などを組み合わせれば、よりよいUV対策になります。紫外線から肌を守る効果を持続させるために、日焼け止めの塗り直しや化粧直しは、こまめに行うようにしてください。
UVA(紫外線A波)にも気をつけて
「肌の奥まで届く紫外線A波(UVA)は、深いしわやたるみの原因になりやすいです。曇りの日でも、紫外線は振り注いでいます。快晴の時に比べると、うす曇りの場合は約80~90%、くもりの場合は約60%、雲間から太陽が見えるときは雲からの散乱光が加わり、快晴時よりもたくさんの紫外線が降り注ぐことも。毎日、十分にUVケアを行いましょう」(飛田先生)。
【10】アンチエイジングと運動
筋トレ、有酸素運動、ストレッチが有効
「骨密度や筋肉量は、何もしないと加齢とともに減って行きます。それらを保つためにも適切な運動が必要です。アンチエイジング対策に有効な運動(体を動かすこと)としては、以下3つが挙げられます」(飛田先生)。
筋トレ:筋肉量や成長ホルモン、代謝をアップする
有酸素運動:内臓脂肪を減らしたり、メタボリック症候群を予防する有酸素運動のひとつであるウォーキング。ウォーキングは、記憶と思考を改善したり、認知症を予防したりなど、脳にも作用する可能性がある
ストレッチ:肩こりを緩和して、姿勢が悪くなることを防ぐ。体の柔軟性を保つことで美しさにもつながる
自宅でできる簡単な筋トレ
スクワットや腕立て伏せなど、自宅で簡単にできるトレーニングがオススメです。筋肉には、全身に血液を巡らせる役割があります。トレーニングで筋肉を鍛えると、血行がよくなり、冷え性の改善につながります。また、基礎代謝がアップし、太りにくい体づくりをサポートします。また、適度な運動は成長ホルモンの分泌を促します。
手軽に始められるウォーキング
手軽に始められるウォーキングも効果的です。1日20分、週2回を目標に行うようにしましょう。まとまった時間がない方は、1回5分を4セットでもかまいません。ウォーキングをすると血行がよくなり、肌細胞に酸素や栄養が行き届いて、ターンオーバーが活発になるため、美肌効果が期待できます。また、筋肉量が増えて基礎代謝がアップし、太りにくい体に近づくことができます。
ストレッチや日常生活で「NEAT(非運動性熱産生)」を活用
運動の時間がとれない人は、就寝前や起床後のストレッチや、仕事や家事を利用しましょう。歩幅を大きく早足で姿勢よく歩く、エスカレーターではなく階段を使う、通勤時に隣の駅まで歩く、歩きながらお腹を凹ませて姿勢を整える、毎日少しずつ雑巾がけをする、などを取り入れてみて。
「これらは『日常生活の中での運動量(NEAT)』として、エネルギー消費の2~3割を占めると考えられ、ダイエットにも有効と期待されています。普段からキビキビ動くことを心掛けると運動量がアップする、これなら毎日続けられますね」(飛田先生)。
【11】アンチエイジングと入浴
36~39度くらいの湯船に浸かる
シャワーで済ませず、湯船にきちんと浸かりましょう。お湯の温度は36~39度くらいがベストです。副交感神経の働きが活発になり、リラックス効果が得られます。長く浸かり過ぎないよう、30分くらいを目安に。
夜寝る前に入浴すると質の高い睡眠が得られる
入浴のタイミングは寝る前がオススメです。人は、いったん上がった体温が下がるときに熟睡できるタイミングとなるため、入浴して体温を上げてから寝る準備をすると、質の高い睡眠が期待できます。
少し熱めのお湯に浸かってリフレッシュ
心身をスッキリさせたいときの入浴方法は、40度くらいの少し熱めのお湯に15分程度浸かります。熱めのお湯で交感神経を刺激することで、リフレッシュできるのです。つかりすぎは逆効果になったり、湯冷めしたりするので注意して。
入浴剤を入れた湯船でリラックス
入浴剤でリラクゼーション効果をアップ。入浴で疲労回復やリラックスすることは、間接的に美肌づくりにもつながります。好みの香りのアロマオイルやバスソルト、保湿成分が含まれた入浴剤などを使って、心身ともにリラックスしましょう。
【12】アンチエイジングと睡眠
起床時間は毎日同じに
肌のためには、規則正しい睡眠が不可欠です。体に備わった体内時計の働きを正常に保つため、就寝、起床時間は毎日同じ時間にするのが理想的。休日でも1時間以上前後しないようにするとよいでしょう。寝だめをしても、睡眠時間に比例して肌のターンオーバーが進むわけではないので、あまり意味がありません。また、体内時計が乱れることで不眠や浅い眠りになってしまい、肌の再生が滞ってしまいます。どうしても睡眠時間が取れない場合は、いつもの時間に起きてから、午後に1時間以内の昼寝をするようにしましょう。
6時間以上の睡眠が理想的
個人差はありますが、睡眠時間は6時間以上が理想です。肌細胞の修復には最低でも、6時間の睡眠が必要となってくるからです。人は眠っているときに肌や内臓に血液がいきわたり、酸素や栄養が届けられます。また、肌のターンオーバーは加齢に伴い低下してしまうため、睡眠不足だと肌に影響が表れます。スキンケアに時間をかけるよりも、睡眠を優先してしっかり寝るようにしたほうが、美しい肌づくりに効果的です。
「睡眠も、取りすぎるとあまりよくありません。寝過ぎると体が無駄に疲れてしまい、長すぎる眠りが記憶力や意思決定能力、認知機能の低下を招くことが明らかになっています。適切な睡眠時間を心がけましょう」(飛田先生)。
眠ってからの30分~1時間が睡眠のゴールデンタイム
睡眠のゴールデンタイムは眠ってから30分~1時間程度。このときに成長ホルモンの分泌がピークを迎えるとされています。成長ホルモンの分泌が高まることにより、肌のターンオーバーも活発になります。質の高い睡眠のため、遅くても深夜1時までにはベッドに入るようにしましょう。寝る時間が遅くなると、肌の再生に大切な就寝後3時間以内に明るくなったり、物音がしたりして睡眠が浅くなってしまいます。
寝る前は、リラックスを促す副交感神経の働きを妨げない
夜ぐっすり眠れないときは、昼の過ごし方を見直しましょう。日頃から軽く体を動かすようにすると、寝つきがよくなります。また、できるだけ午後2時以降にカフェインを摂らないようにし、寝る前にスマホやテレビなど、脳を刺激する極端な明るさを避けるようにしましょう。そうすることで、神経の興奮をしずめ、リラックスを促す副交感神経の働きを妨げないようにすることができます。
「スマホやテレビの画面から出ているブルーライトは、睡眠ホルモンと呼ばれる『メラトニン』の分泌を妨げます。メラトニンが体内時計に作用することで、自然な眠りが促されます。メラトニンの分泌が正常に行われるためにも、朝起きてから朝日をキチンと浴びることが大切です」(飛田先生)。
質の高い睡眠のための工夫を
ぐっすり眠れる環境をつくることも重要です。体に合った枕を使う、音や光を遮る、体をしめつけないパジャマを着る、食事は寝る4時間前までに済ませる、寝る前は、明る過ぎない部屋で静かに過ごすようにするなど、質の高い睡眠のための工夫をしましょう。眠れないときは無理に眠ろうとせず、リラックスしたほうが早く寝つけます。
【13】アンチエイジングとメンタル
Happy People Live Longer(ハッピー・ピープル・リブ・ロンガー)
「幸せな人は長生きする。医学の領域でも、『Happy People Live Longer(ハッピー・ピープル・リブ・ロンガー)』と言われています。健康で長生きをするためには、心の在りようも大切です。私たちを幸福にするのに大切なことのひとつは、身近な人たちとの「よい人間関係」。家族や友人、コミュニティとよくつながっているほど、幸せかつ健康でつながりの少ない人より長生きの傾向が。寂しさや辛さがある生活は楽しくありません。趣味を持ったり、人とのコミュニケーションを楽しむことで、体もさらに健康になります」(飛田先生)。
周りにいる人を大切に
「ストレスを感じたり、やる気が出ないときは、早めに寝る、というのも一案です。答えが見つからずに悩んだりしていても、しっかりと睡眠をとって朝目覚めると、新しい答えが見つかることもります。また、私は、朝起きた時に今日会う人たちを思い出して、その人たちがハッピーでいることを考えます。そうすると、実際に会ったときにコミュニケーションがスムーズに運びますし、気持ちのよいコミュニケーションは双方にハッピーをもたらしてくれます」(飛田先生)。
クリニックを有効活用する
「アンチエイジング対策のひとつとして、クリニックを活用することもオススメです。医学的な知見から、自己診断とは違った思わぬことを指摘される可能性もあります。また、より効果的な治療法や予防・対処法が見つかることもあるので、アンチエイジング対策を、よりよい方向で行っていくことができます」(飛田先生)。
毎日の食事や運動、睡眠・入浴などの生活習慣、ビューティ・メンタルケアを意識すること。そして、機会があればクリニックに相談して、より専門的な医療も取り入れることで、最適なアンチエイジング対策を行っていきましょう。
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- Precious.jp編集部