大人になっても、褒められるのは心地よいもので、田舎と東京との二拠点暮らしを始めてからいちばんうれしい言葉は、地方の古民家に友人を招いた際の「楽しかった!また来たい!!」です。

このフレーズを言われると、日頃の努力と、私が目指す幸せの方向性が認められたようで、とってもうれしくなるのです。そしてまた一人、美しい自然に囲まれた暮らしの魅力を知ってもらい、カタチに見えないモノで満たされる喜びを、分かち合える仲間が増えたらよいな…と思っています。

パーティの風景
古民家の庭を活用したホームパーティの景色です

というわけで、今回はゲストに喜んでもらえる、工夫を凝らした古民家ならではのホームパーティ事情をレポートします。

目次

古民家でのホームパーティで事前に用意するものは?

ゲストが遊びに来てくれる前日は、大忙し! 家の中の大掃除から始まって、庭の整備に、買出しと、走り回ります。食材は、なるべく鮮度がよい状態で振る舞いたいので、お野菜と肉は前日に仕入れて、お魚は当日の朝、漁港やお魚屋さんへ買いつけに行きます。

さまざまな魚介類
漁港ではまさに釣ったばかりの魚が!新鮮で質が高い食材探しも楽しみのひとつ

お客様を自宅に招くとき、第一印象を決めるのは「香り」

「いらっしゃい」と扉を開けた瞬間、そのお宅に漂うムードというか、香りが、ゲストの中で本能的にその家の第一印象を決める、と私は思っています。東京のマンションに人をお招きする際は、ゲストの到着時間から逆算して、お気に入りのディプティックを焚いてお出迎えしていましたが、古民家ではあえて、そういう準備はしません。

まずクルマを降りた瞬間に、天然のアロマを味わってほしいから。澄んだ空気とフレッシュな草花の香りは、最初のご馳走だと思うからです。

おおきな白い花
気づけば最近香りがするキャンドルを買わなくなっていました

友達の家に遊びに来ただけなのに、非日常的なちょっぴり空気が違う場所だったというだけで、ワクワクしませんか? そのときめきが、最初のギフトだと感じるからです。

古民家を案内していちばん関心を持たれるのは「DIY」

初めていらしたゲストには、家の中をガイドツアー。築70年の古民家をどうやってリノベーションをしたかを始め、今では手に入らない曲がり木が使われた梁や、自分たちでDIYをした壁など案内させていただきます。プロから習った上手にペンキで塗るコツや、タイルの貼り方、飾っている小物のつくり方など、興味を持つゲストが多いので、概要をお伝えすることが多いですね。

天井が高い古民家
二階を抜いて、渋い梁が見えるようにしました

畑で野菜の収穫体験。秋はサツマイモ、大根、人参、春菊、ほうれん草

一通り家の説明を終えたら、畑に移動。夏は、庭で育てているキュウリやトマト、ナス、ピーマン。秋冬はサツマイモや大根、人参、春菊、ほうれん草などを、ゲストに収穫してきてもらいます。

小さな子供たちがゲストにいる場合、初めて見る野菜が育つ姿に驚いたり、てんとう虫やバッタを捕まえようor逃げようと、畑を走り回ります。この小さな食育体験のおかげでしょうか? 普段苦手で口にしない野菜でも、自分で収穫した物となると、どの子も頑張って食べてくれます。

採れたてでみずみずしいお野菜を、青空の下でみんなと一緒に食べると、よりおいしく感じられるのかもしれませんね。ファーマー見習いの私としては、日ごろの苦労が報われて、これまたうれしくなります♡

庭で遊ぶ子どもたち
日頃静かな田舎に、楽し気な歓声が響きます

古民家バーベキューは5つのメニューをコースで提供します

私が目指しているのは「懐石風BBQ」。ズバリ、和食を軸に、コース仕立てにしたバーベキューです。正式な懐石料理とは異なり、順番は入れ替えますが、味が薄いモノから濃いモノへメニューを考え、野菜と魚や肉を交互に出すように心がけています。もちろん、家庭菜園で獲れたお野菜を使ったり、地産地消を心がけて、旬の素材を使ったお料理を提供します。

カラフルな食器と料理
テーブルクロスは漂白できるから、白をチョイス

■1:炭火が起こるまでは、先付けや前菜を振舞います

野菜が中心の前菜
前菜、この日は、自家栽培で採れた枝豆、ナスの田楽、プチトマトとオクラのみぞれ和え

■2:お酒を楽しむ方が多いので、汁物を

透明なトマトのスープ
夏場の人気は、透明のトマトスープ。完熟もぎたてのトマトを贅沢にいっぱい使って、シンプルに塩だけで味を調えた一品
サザエのつぼ焼き
ひとつ600~700g程ある、両手で包み込めないほど大きなサザエを、竹の子、白滝など出汁と共に添えたつぼ焼きが、去年のヒット♡ 漁港直送だからできる贅沢です
松茸の土瓶蒸し
秋は暖かい物を。松茸の土瓶蒸しを始め・・・
きりたんぽ鍋
冬は料理教室で習ったきりたんぽ鍋が、みんなの胃袋をつかみました。ご近所さんからいただいた摘みたてのセリをたっぷり添えて

■3:いよいよバーベキューへ。焼き物をしていきます

ここからBBQっぽいムードへ。お魚、お肉を各2品づつ、野菜を3種ほど炭火で焼いていきます!

稚鮎

まずはお魚のメニュー。こちらは、5月ごろによく出す、稚鮎の登り串。

若鮎の登り串
川を泳いでいく勇ましい様になるよう、串を打って姿を整えます

赤外線効果で身がふわっと、炭の香りが移った皮は、パリッと焼きあがります。蓼酢(たです)を添えて、さっぱりと召し上がれ! ちなみに、この年まで、「蓼(たで)」という植物の生態を知らなかったのですが、田んぼに生えて、雑草扱いをされる草だったんですね! わざわざ築地に買いに行っていた葉物でしたが、田舎には自生しています。

イカの肝煮

のん兵衛には喜ばれる、イカの肝煮。さばきたてならではの、新鮮な肝を使ったコク旨な一品。

新鮮な肝を使ったイカの肝煮
アルミホイルで船をつくり、イカと肝、しょうゆ、酒で味を調えます

藁焼きのカツオのたたき

また、初ガツオと、戻りガツオの季節は、カツオのたたきをつくります。藁に火が移ると豪快に炎が出て、盛り上がります!

戻りガツオのたたき
表面を焼いたら、氷水に浸けて締めます。みんなの食べるペースを見て、後半に振舞います

まぐろカマ

大人数が集まった時は、まぐろのカマもおすすめです。

まぐろのカマ焼き
解凍に時間がかかるので前日からこちらもスタンバイします

定番ものとして、ウィンナーも焼きます。ただ焼くだけなのに、みんなが大好きな一品! ケチャップとマスタードでも十分おいしいけれど、ここでも自家採れ野菜を使った、モーリョソースを添えます。

ソースに必要な材料は、トマト、ピーマン、玉ねぎを同量ずつみじん切りに。あればパセリやパクチー、そこにバルサミコソースを加え、塩コショウで調味するだけの簡単レシピです。

カラフルになるとかわいいので、ピーマンを赤や黄色のパプリカにしたり、玉ねぎをレッドオニオンにするなどお好みでつくってみてください。バルサミコのコクとサッパリする味わいが女性には人気で、普段なら白身魚のソテーなどに添えてもおいしいですよ。

また、ここで、同時にお子様プレートを制作。バターロールを用意しておいて、お子様たちは、ホットドッグ造りにチャレンジしてもらいます。自分で作る楽しさも、体験ギフトとして送りたいことです。

スペアリブ

我が家の定番その2、スペアリブ。前日22時を過ぎたら、骨付き肉を市販のヨシダソースに漬け込むだけ。あまり早くから漬け込んでもダメで、試行錯誤の末、12時間程度漬けるようになりました。

スペアリブ
スーパーで購入できる市販のソース。子供の頃ハワイに行ったときに感動した思い出の味です

野菜の蒸し丸焼き

我が家の定番その3は、お野菜です。まずおすすめなのがピーマンの丸焼き。バーベキュー検定を取得した友人直伝のお手軽レシピです。BBQあるあるですが、野菜が黒焦げになってしまい、誰も手を出さないという悲しい失敗・・・。皆さんありませんか? 敢えて野菜をカットせず、野菜が持つ水分を活かして、蒸し焼きにすれば、ぐっと旨味が凝縮され、カピカピになる心配もありません。

しいたけとピーマンを網で焼く様子
洗うだけの簡単レシピ。料理とは言えませんが笑、鮮度で勝負!

手順はシンプル。ピーマンに油を塗ってセット。塩を振りかけ、程よく皮に焦げ目がつく程度焼くだけ。驚くほど甘くなって、ピーマンが普段食べられない子供でも、口にできますよ! 同様に、ソラマメが成っている時は鞘ごと、ナスも丸焼きにして、生姜を添えて焼きナスとしていただきます。

そら豆を網で焼く様子
ソラマメは、さっと水で洗ってそのまま直火に
ナスの素焼き
なすは焼いた後に皮をむきやすいよう、包丁目を入れておきます

■4:自家製の強肴(しいざかな)

一度、このあたりで胃袋休憩。ゲストが持ち寄ってくれたチーズやフルーツをつまんだり、美容やダイエットに罪悪感が少ないジャンク♡自家栽培の野菜を、オリーブオイルで揚げたチップスをサーブします!

オリーブオイルで揚げたポテトチップス
ジャガイモは珍しい種類も育てるので、品種の食べ比べもお楽しみの一つ

余談ですが、ゲストからのうれしい差し入れについて。一見定番ですが、田舎で手に入らないモノのひとつ、珍しいチーズとワインのお土産は、とってもありがたいです♡

次いで、おいしいコーヒーやパンもありがたい! なんでもお取り寄せができる時代ですが、おしゃれな食べ物は、心がときめきます。それがきっかけでゲスト同士も話題に花が咲くのも楽しいですよね!

■5:〆のお食事&香の物は、有田焼の土鍋で炊いたお米でつくるステーキ丼と焼き鳥丼

本当に、我が家に来てくれるゲストは、びっくりするほどよく食べてくれるのですが! 〆はステーキ&焼き鳥丼です!

皆のペースを確認しながら、研ぎあげておいたお米を火にかけます。愛用しているのはAKOMEYAで購入した有田焼の土鍋。底が丸くて水の対流がよく、蓋が二重になっていて、しっかりと圧がかかるので、ふっくらと艶々にお米が炊き上がります。

また、こういったパーティーでおすすめなのは、スピーディーに炊けるから。予め吸水をしておくと、炊飯器で炊くよりも短い時間でできあがり、簡単なんです。

有田焼の土窯
気に入り過ぎて、1.5合サイズから、3合サイズも追加で買ってしまいました

ステーキ肉をジューシーに美味しく焼く6ステップ

一方で、お肉の量の目安は、一人当たり、60g~100gを用意。女性はフィレ、男性はロースがお好みかなと思い、お肉の部位はMIXしています。

焼き時間を逆算し、1時間前にジップロックに、オリーブオイルを入れて肉をコーティングします。お好みで、潰したにんにく、畑からローズマリーなどのハーブを摘んで風味付けを。続いて、20分程前に、塩コショウを両面振り、塩の結晶が見えなくなったら焼きます(4cm以上の厚みがあるお肉や、塊肉を焼くときは、40分前を目安に)。

表になる面から、強火で焼き目が付くようにさっと焼いたら、ひっくり返して反対側は余熱で火が入るように、表4:裏6の加減で仕上げます。

ここで1ポイント。コンロの炭は、焼き網から10cm程度離れるように。また、フラットに並べるのではなく、高いところと低いところをつくるように積重ねておくと、火加減の調節ができますよ。

ステーキ肉の焼き方説明

ステーキが焼けたら、茶わんに熱々のごはんを装い、1、煎りごま 2、しそ大葉 3、刻みのり を振りかけ、削ぎ身にしたステーキを盛り付けます。

お肉の上に、山葵をちょこんと盛り付ければ完成。お醤油をタララ~♪と振りかけたら、自家製の糠漬けを添えて、召し上がっていただきます。

ステーキ丼
やっぱり、お肉とご飯って、最強コンビですよね!

続いて、二膳目の小どんぶりは、焼き鳥丼へ。「自家製煮穴子のツメ」を、やわらかい平飼いの鳥もも肉に絡めて焼くメニューが好評をいただいております。

鶏肉を炭火で、しっかりと焼いたら、3回ほど刷毛で甘いツメを塗り、ネギとピリッと辛い一味唐辛子を添えたドンブリです。時々ごはんが足りなくなるほど!甘辛い味付けは皆さん箸が進むんですね。

■5:水菓子(デザート)

私の一番のお気に入りは、ミントのグラニテ。春から晩秋まで育つミントを使用。やはり摘みたての香りは格別です!

ほっておくと、生い茂るミントが活躍します
ほっておくと、生い茂るミントが活躍します

ミント、砂糖、レモン、水をシンプルに合わせ凍らせたものですが、ビール好きには、グラニテビールとして使います。おしゃれに見えて、おいしいのがよいですね。

ほかには、参加者にお子さんがいるときは、パフェをつくります。BBQコンロでマシュマロと皮のままバナナを焼いて、熱々の内に、器を盛った冷たいアイスクリームに添えて、チョコレートシロップをかけたり、ミントを添えたり、トッピングで遊びます。

マシュマロとアイスクリームのバナナパフェ
熱々のフルーツと、冷たいアイスの絡み合いが幸せ

遊びに夢中だったはずの子供たちも、この時だけはテーブルにおとなしく着く瞬間。

古民家ならではの「ホームパーティーでの遊び方」

ゲストが大人も子供も含め、古民家に遊びに来てくれたときは、よく食べ、よく学び、たっくさん遊んでもらえると心が躍ります。自分が東京育ちのせいでしょうか? 制約のあった反動で、体をいっぱい動かして、洋服が汚れても厭わない遊びに、憧れがありました。

思い出の写真
1車が来ない道を思いっきりかけっこしたり、ご近所の犬と田んぼをお散歩/2夏は、ビニールプールで水遊び/3 DIY体験/4思いっきり地面や自分よりも大きな段ボールに落書き/5冬になると大人たちは薪を囲んで、揺らめく炎を眺めながらワイン片手に談笑/6 DIY体験

都内でBBQを楽しみたいときは、場所を借り、前日買い込んだ食材や飲み物の移動を車でしたりと奮闘し、一大イベントでした。それでも、ゲストには楽しんでほしいし、ちゃんとしたおいしい物をいっぱい食べてほしいし、といったジレンマがありましたが、古民家を見つけてからは、悩みが解決!

時間も気にせず、私がおいしいと思うものをトコトン振る舞えることに、満足しています。まだまだ満点には遠いですが、日頃から、お料理、野菜作り、陶芸、アートと腕を磨いていきたいと思います。

東京⇔田舎で二拠点暮らし。シリーズ「セカンドハウスライフ」

この記事の執筆者
<プロフィール> 1980年、東京生まれ。大学を卒業後、マスコミ業界に就職。テレビ、雑誌、WEB、ラジオの企画や制作に携わったのち、20代後半からグラフィックデザインを学ぶ。美容業界でデザインや広報の仕事をする傍ら、2015年9月に関東圏の古民家をセカンドハウスとして買い取り、東京と地方を行き来する生活を始める。 好きなものは、本、カメラ、花、ティファニーとTシャツ。趣味は、読書、アート鑑賞、カメラ、陶芸、料理、ピラティス、ゴルフ。「たくさん、よりも、自分に合う、永く愛せる物や人間関係を大切にしたいと思います。また、そういったものに巡り合っていきたいです」
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