田んぼの畔に咲く多年草、タチアオイ。昨年、その華やかな美しさに惹かれ、農家さんから種をおすそ分けしていただき、畑に蒔きました。年を越したらすっかり忘れていたのですが、放っておいたにもかかわらず、5月に入るとぐんぐん成長し、主人の背丈をあっという間に越して、行き交う人を和ませてくれました。タチアオイは、ハイビスカスに似た花をつけるのですが、下から順につぼみをほころばせていきます。近所に住む野菜づくりの師によると、「この花が、てっぺんまで咲いたら、もう梅雨明けってことだよ」。

畑に咲いたタチアオイの花。今年はピンク以外に、白や赤も蒔きました。来年も楽しみです

諭されたとおり、すべての花弁が散った翌日、天気番組で梅雨明けが宣言されました。いよいよ夏が到来、古民家には、元気にセミの鳴き声が響き渡っています。

2017年の夏は都内の住宅事情ではなかなか難しい、プールや花火、BBQなど・・・夏ならではの思い出づくりを、苦心しながら制作中のガーデンで、いっぱいつくっていきたいと思います。

さて、前回の記事(vol.5)では、目的とする「理想の庭」のお話と、それに至るまでの駐車場からつくり替えた庭の改修工事、アイアンフェンスの設置などについてご紹介しました。庭編2回目となる今回は、メインどころとなる前庭についてお話させていただきます。

ちょっぴり本気のビニールプールを設置し、畑仕事の合間に休憩しています

庭のテイスト、自分好みを知る

ガーデンデザイナーの宇井さんとの初打ち合わせに臨んだ際、私はまず、自分が愛してやまないフラワーアレンジメントの本『~ブーケシャンペトル ア・ラ・メゾン パリのシャンペトルブーケで暮らしを彩る』を、資料として提出しました。

提出した本は写真手前左(ブーケシャンベトル ア・ラ・メゾン 斎藤由美さん著)。いつかパリへ行って習うのが憧れ…

こちらの斎藤さんが掲載している、無造作だけどどこか洗練されているパリスタイルのようなブーケを、自分で庭に育てた草花でつくって部屋に飾るのが憧れだったのです。

そのほかにも、一気に20冊ほど買い込んだ庭の本やPinterestでクリップした写真から、気に入なる絵を見ていただき、素人の私が漠然と心惹かれるのだけれど、プロの目で何が具体的に私のツボなのかを分析をお願いしました。

このときの私には「庭はその目的によってデザインがまったく異なる」ことを把握しておらず、目的と好きなものがちぐはぐで、デザイナーさんを困らせていることには気づきませんでした。

リクエストしたのは…
 

  1. ■週末しか滞在できないから、手がかからないように
  2. ■古民家だけど、バラが咲き、草花も野原のように咲いているナチュラルでパリっぽい感じ

今はわかるようになったのですが、このリクエストは、庭のコンセプトとして真逆な要望だったのです。

まず、手がかからない庭というのは、広範囲をコンクリートや構造物で覆い、土の露出を最低限にする必要があります。植える樹木は、掃除や剪定の手間がかからないよう、葉が落ちない常緑のものを数本植えるイメージ。

一方で、バラも草花もナチュラルに咲く庭というのは、こまめに花殻摘みや剪定と言った手入れが必要になります。

資料として提出した画集も、よくよく見てみれば、バラや草花以外にも、パリ特有のビンテージ感あるシャビーな鉢や小物が散らばっていたりする一枚もあれば、現代美術館に隣接しているような一分の隙もない整った芝生と、すっきりとした樹木が規則正しく整列しているシンプルな構成で完成されたガーデンの写真などもありました。
どれも「好き」と思って選んだけれど、それぞれに目的やタイプが異なる庭。初めの打ち合わせでは話がまったくまとまらず、まずは本当に自分が目指す庭を具体的に描くことから始めました。

庭には大きく分けて6種類のデザインがある

庭造りは、家造りに通じています。

まず家でいうと、鉄筋か木造かの選択は、一度つくるとなかなか変えにくい庭を囲う垣根や門に似ていて、家の間取りは庭のコーナーづくりに。床や壁の素材選びは、道やガボゼなどの構造物をどんなマテリアルでつくるかに通じ、部屋のインテリアは、どんなガーデンファニチャーにして、どの草花や樹木を植え込むのか?に通じます。

また、庭にもファッションやインテリアのように「テイスト」があることに気がつきました。こんがらがった庭造りを小さく分類し、わかるところ、決められるところから考えてみました。

初心者の私なりに、庭のデザインを分類してみましたので参考になれば幸いです。大きく分けて、和風、洋風、雑木の庭、オリエンタル、インダストリアル、コンテンポラリーに分けてみました。

■1:和風のデザイン

和風は、京都のお寺を始め、日本庭園、前述した祖父母の家が思い浮かびます。
竹の目隠しで囲われた庭に、松や紅葉、つつじが植わり、足元には砂利を敷いてあるデザイン。わびさびを感じる鄙びたムードと、ほんのり暗くて物静かさが漂っている雰囲気がキーワードです。
譲り受けた当初の我が古民家はまさにこのカテゴリーで、槇の樹がフェンスに使われ、庭の中央には大きなモミの木と、立派なツツジ、それから美しいオオデマリが鎮座していました。
話が逸れてしまいますが、始めはこのオオデマリや樹形が整っていたブルーベリーの古木を引っこ抜いて、別の場所に植え直そうと計画していました。家の前の持ち主さんも、思い入れがある樹が残っていたら喜ばれるかな、なんて思っていたのですが、いざ掘りあげてみると、隣接している山から下りてきていた竹の根がびっしり絡んでしまっていて、断念しました。竹は生命力が強いため少し残しただけでも、ほかの植物を侵食してしまうんだそうです。

キーワード:竹、石、玉砂利、苔、玉竜、池、灯篭、モミジ、ソヨゴ、つつじ、松、槙、あじさい、水仙、菊

■2:洋風のデザイン

壁面や道には、レンガやウッドのマテリアルが用いられ、格子状のオシャレな窓にはもっこうバラや、ツタが張っているイメージ。庭を行き来する道の小道には、こんもりと季節の草花が生い茂っていたり、オーナー手づくりの木工DIYのガーデンファニチャーが鎮座。どこかラフで不規則なレイアウトを楽しんでいるイメージです。風がそよぐと、庭に咲くハーブや草花のフレッシュな香りが鼻をくすぐってくれる庭。

キーワード:枕木、レンガ、タイル、ウッドフェンス、ウッドデッキ、芝生、アイビー、シマトネリコ、オリーブ、ジューンベリー、ミモザ、ローズマリー、ラベンダー、バラ、アナベル、その他ハーブや草花、小屋

■3:雑木の庭

近年こちらも人気で、ガーデニング雑誌でも特集が頻繁に組まれるテーマ。軽井沢の高原にいるような自然を感じられる、木漏れ日がきらめき、さわやかな風が行き交う空間がイメージです。一番の特徴は、10m以上の家よりも大きな木が植えられている点。私たちもはじめのうち、都会の喧騒を忘れられそうな雑木の庭をデザインに取り入れようとしたのですが、日陰のスペースが増えてしまうことに気づき、日当たりを好むバラとの兼ね合いを考慮した結果、あきらめました。また、雑木の庭に関する本を眺めていると、かっこいい!と目に留まるお宅はどれも、300平米以上の広大な山を切り拓いた土地を、10年以上かけてつくり続けているお庭が多いのです。お庭というより、林を整えていくイメージ。そのスケール感は我が家の中規模サイズの庭とは合わず、断念。でも、憧れますよね。

キーワード:高木、コナラ、エゴノキ、ヒメシャラ、楠、檜、白樺、つわぶき、ぎぼうし、野草、

■4:オリエンタル

オリエンタルというと日本も含まれますが、私がここで頭に浮かべているのは、バリのコテージにありそうな、南国に咲く極彩色の花が咲き乱れ、ラタンの家具が並び、その横にちょっぴりいかめしい石堀の置物が門番をしているようなヴィジョン。リゾート気分に浸れそうなアジアンリゾートの空間です。
夏にお友達を呼んでパーティーをしたら、みんなで非日常的な気分を楽しめる魅力がありますね。

キーワード:ブーゲンビリア、ハイビスカス、ヤシ、モンステラ、白い玉石、石像、プール、ランタン

■5:インダストリアル

古材とアイアンを組み合わせ、ヴィンテージ感ある家具やレザーのソファーといった、使う色が絞られた無機質な世界観。男前なデザインですよね。このムードを庭のデザインに落とし込んでいて、直感的にカッコイイ!と魅かれたのは、the Farm UNIVERSALというハイセンスなガーデンショップ。珍しい植物をはじめ、おしゃれなプランターカバーやガーデングッズがたくさんあり、カフェスペースもあるお店です。植物を愛する方なら、半日居ても飽きない楽園です。室内・室外、どのコーナーも庭つくりのセンスが磨けるディスプレイで勉強になりますが、やはり建物周りの植栽がよき手本になります。使用している植物は、シンプルにだけど何年も年月が経っている大きなオリーブや、ローズマリー、ユニークな表情の多肉植物、グリーンが中心。ホームセンターでも売っているような一般的な草花も販売されているのですが、植物同士の組み合わせ方や配色バランス、アクセントに取り入れている構造物がスタイリッシュで、そっくりそのまま真似したくなるほど! こちらのテイストに共感した私たちも、少しづつ庭に取り入れてみようとチャレンジしています。

  • the Farm UNIVERSAL店内の敷地には、取り入れたいアイディアがいっぱい見つかりました

キーワード:個性的なグリーン、オリーブ、ローズマリー、ハーブ、芝生、多肉植物、エアープランツ、古材、アイアン、ブリキ

■6:コンテンポラリー

シンプルでモダンな、とにかくすっきりとしたデザイン。広くくつろげる空間があり、虫があまりいなそうな…。愛読誌『モダンリビング』で見かけた素敵な写真から、インスピレショーンを受けたテーマです。

感銘を受けたのがこの「庭部屋」

自分の旅先での記憶をたどると、SANNAのような近代的な建築とよくマッチする、芝生をメインにして、10m以下の中木が中心に植え込まれているような洗練されたガーデンがイメージです。ラグジュアリーなデザイナーズのガーデンファニチャーを配置して、シャンパンを飲み交わすような大人の憩いの場。
植物の手入れは負担が少なそうな一方で、自分の手で庭づくりをチャレンジしたい私には、このシンプルな構成をアレンジするのがよいのではないか、と大きなヒントになりました。

以上、私が自分の好き、を分類してみた結果です。造園を検討中の方は、思いつくまま気に入った庭の写真を集め、細かくどこにひかれたのか探ってみてくださいね!

 

検討を重ねた結果、私は2の「洋風」を採用することに決定。実際に細部のデザインに入ってゆくことになります。

庭で何をする?手入れの頻度を想像し、レイアウトを考える

庭つくりの本を読むと、庭つくりの手順が4つのステップで書かれています。
 

  1. シンボルツリーを決めよう
  2. 小道をつくろう
  3. フォーカルポイント(メインとなる見どころ)を決めよう
  4. 低木や草花を決めよう

この4ステップに従い、さっそく取り掛かってみたものの、いきなりつまづきます。

本に掲載されている庭の事例は、大概家の前に広がる限られた空間をつくりこんでいくところからスタートしていて、真ん中に芝生、それを囲う用に塀に沿って樹木を配し、花壇を作るようなデザインが紹介されていることが多く、真似しようにもどう自分の庭に取り入れていいのかわかりませんでした。

そこで、ガーデンデザイナーの宇井さんには庭でどんなふうに時間を過ごしたいか尋ねられました。私はふたつ、「BBQをしたい」「読書を楽しんで、風がそよいだ時にハーブや花のいい香りに包まれたい」という「やりたいこと」を伝えました(当初は主人がピザ窯を挙げましたが、今のところ先送りに)。この「目的」を踏まえたうえで、家の間取りを同じように、庭のレイアウトを考えるのがいいと教えていただきました。

お庭にしっかりグリルを用意し、地産地消をいただきたい。Photo by Nik MacMillan on Unsplash

スペースにゆとりがある庭ならば、家のように、例えばここはキッチン、リビング、書斎、プレイルームなどなど、コーナーを分断して考えるとイメージが詰めやすいというのです。家でいう部屋を区切る壁は、木や草花、構造物で作り、廊下は小道でつなげて考えます。

お庭に向かっての読書。Photo by Rachel Lees on Unsplash

このアドバイスのおかげで、ざっくりと空間を分け、集めた写真から着想を得て落とし込んでいきました。ようやくアイディアの糸口が見つけられた私に、デザイナーさんから次なる課題が。

「どのくらいお手入れを頑張れそうですか?」

バラへの憧れが募っているので、後先を考えずに「頑張ります!」と即答したのですが、冬の季節以外毎週、家と畑の草刈りに追われている主人の意見は、これ以上雑草が増えるのは困る、と消極的。

そんな流れで最初は、母屋の前に広がっている芝生部分を舗装して、かねてよりチャレンジしてみたかったウッドデッキのDIYにチャレンジしようというプランになりました。

このようなウッドデッキが理想です。BAKOKO_Onjuku_Ext_Deck_Outlook

ウッドデッキは地面から一段高くつくられ、リビングの延長であり靴を履かずとも庭を楽しめるスペースになります。屋根を付ければ雨の日も外に出られるし、カフェのようにぐるりカーテンやガラスで囲えば、寒い季節や蚊が多く出る時期にもアウトドアを楽しめるなんて魅惑的。せっかくだから、そのウッドデッキを延長して、納屋とも渡り廊下のように行き来が出来る設計にしようと話が膨らみました。

方向性がようやく定まったので、愛読書となった学研のDIYシリーズの中からウッドデッキ制作に関するムックを購入。素材は、杉は手ごろな値段で木目がきれいだけど、やわらかいからすぐに劣化してしまい、それよりも硬くて丈夫なウリンは、鋼のように硬さで素人には切断できず、値段が3~4倍もしてしまうとか、だったら人工木の方か扱いやすいかと思いきや、紫外線に弱いなどの問題が上がり、どれも一長一短。ひとまず、見積もりをとってみると、約30㎡のウッドデッキをウリンでつくったとしたら、90万円という回答が。

自分たちでつくってみたいとは言いつつも、基礎はプロに任せたいし、組み立てる人件費を引いてもあまりこの数字から変わらず…。その上、最強と言われるウリンとはいえ30年程度しか持たないと聞き、意気消沈していきました。

ここで、本当にウッドデッキが欲しかったのか?自問自答します。

お庭と言えば、ウッドデッキ。かねてより漠然と憧れがあり、きっと完成したらおしゃれだし、何よりも主人と一緒につくり上げていく思い出ってきっとプライスレスなんじゃないかしら?でも、これだけお庭の広さが満足にあるのに、ウッドデッキの上でしか過ごさないのかな?なんだか突き詰めて考えていくと、「ウッドデッキ要らない説」が浮上。パートナーも同意し、また別の新たなプランに進むこととなりました。

最終的なレイアウトと、植栽のお話は次回vol.6へと続きます!

バラを植え始めた頃の庭

東京⇔田舎で二拠点暮らし。シリーズ「セカンドハウスライフ」

この記事の執筆者
<プロフィール> 1980年、東京生まれ。大学を卒業後、マスコミ業界に就職。テレビ、雑誌、WEB、ラジオの企画や制作に携わったのち、20代後半からグラフィックデザインを学ぶ。美容業界でデザインや広報の仕事をする傍ら、2015年9月に関東圏の古民家をセカンドハウスとして買い取り、東京と地方を行き来する生活を始める。 好きなものは、本、カメラ、花、ティファニーとTシャツ。趣味は、読書、アート鑑賞、カメラ、陶芸、料理、ピラティス、ゴルフ。「たくさん、よりも、自分に合う、永く愛せる物や人間関係を大切にしたいと思います。また、そういったものに巡り合っていきたいです」
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