「最高の芸術は、その日の生活の質を高めることである」

(引用:ヘンリー・ディヴィッド ソロー,(2010)孤独の愉しみ方―森の生活者ソローの叡智 (智恵の贈り物)株式会社イースト・プレス)

今でいうミニマリストやシンプルライフのパイオニア的存在である、アメリカのヘンリー・デイヴィッド・ソロー(作家、思想家、詩人、博物学者)が綴った一節で、私が二拠点生活を始めた頃に、感銘を受けた言葉です。

ARTを見たり買ったりするのは好きでも、特別なアイディアも技術もない自分は、生みだす側のアーティストには決してなれないだろうな…と思っていました。

けれども、身近なところに「誰もがアーティストになれる」アクションは転がっていたのですね! 当たり前の、毎日訪れるふつうの暮らしを、日々ちょこっとづつ工夫して、アップデートしていくこと。ヘンリーさんのこと言葉から、生活自体が芸術になっていくだなんてカッコいい!と思えたのです。

そんな想いを抱えながら、古民家で迎える二拠点生活、2年目の秋。さらにDIYに励んでいます。

野晒しにした木材を使ったガーデンテーブルを制作しました

グルメ雑誌に掲載されていたコペンハーゲンにあるおしゃれなレストラン「Host」で使用されているデザインを真似っこして、アンティーク調のテーブルを自作しました。私だけのローズガーデン、またひとつ居心地がいいスペースができ、満足しています。自分の手で何かを生み出すことって面白いですね!

さて、今回は庭づくりレポート第5弾、「バラの育て方」についてのお話です。庭造りも、バラを庭へ地植えすること自体もはじめての私。長年自分だけのローズガーデンに憧れていて、バラ園にも毎年通い、バラの資格(ローズコンシェルジュ)も学び、たくさんリサーチをして、育成に挑みました。

しかし、正直に申し上げますが、1年目は大失敗をしてしまいました。頭でわかったつもりで進めたのですが、「バラ園とは全然違う」状態になってしまったのです。

というわけでまず「実際はバラってこんな風に成長するんだ?」「本に書かれていた注意点はこのことだったんだ!?」という驚きと気づきを、お話します。これからバラを植える方の参考になりますように。


■バラの「鉢植え」と「地植え」では、成長速度が異なる!

前回の記事で、古民家を初めに飾ったバラは、マンションのベランダで、切り花を挿し木にして育てた苗であったことを書きました。

東京でバラ栽培に取り組んでいた当時は、どんなに予防薬を吹き付けても、葉ダニや黒点病、うどんこ病に悩まされ、花を咲かせそうなころになると、葉がすっかり剥げ落ち、毎年数えるほどしか蕾がほころびませんでした。しかし、セカンドハウスに引っ越しをしたバラ達は、肥料を与えていないのに突然活発になって新しい枝を伸ばし、消毒をしていないのに葉がつやつやと病気知らずになって、たった2週間で見違えるほど成長するまでに。びっくりしました!

この発見をバラの育苗家さんに話すと、「ベランダでのバラ栽培は、とっても難しいと思いますよ。自然界からすると、風も吹かないし、虫もいないから」と言われ、納得。素人の私が観察する限り、単純に田舎の空気が植物にとっていいのかしら?なんて感じ、バラがこれだけ違いを見せるのだったら、人間も元気になれそうだな、と思うほどでした。

驚きはまだ続きます。庭が完成したときに、バラの苗を3パターンに分けて植え替えたのですが、最も小さいものと大きいものを比較してみたところ、大きさが倍以上も違くなるという結果に。

まず、こちらがその違いです。挿し木した当初の鉢【1】を、下記の3パターンに分けて植えました。

【2】2回り大きな鉢に植え替えたもの
【3】3本まとめて、倍以上の大きな鉢に植え替えたもの
【4】庭に地植えしたもの

 

【1】と【4】を『before→after』よろしく見比べてみると、枝の成長っぷりと花付きに、かなりの差、3倍程度の差があるように見えませんか?

上写真の1から4を、わかりやすくイラストにしてみました

鉢植え【1】と地植え【4】、どちらがよいということではなく、それぞれに一長一短があるということが、実際に育ててみてわかってきました。

同じ苗、同じタイミングで植えたバラだったのに、たった2週間でこれほどまでに成長に変化が。今や、すっかり別物です

もし、バラの花をいっぱい咲かせたければ、間違いなく地植え【4】がおすすめです。株自体が立派に成長するぶん、枝や幹も太くなって病気や害虫にも強くなります。しかし、植えられるスペースには限りがあることと、根が張ってしまうと気軽に場所が変えられなくなるため、植える場所はしっかり考えてから決めないと、のちのち泣くはめになります。

一方で、いつでも好きな場所に移動させることが可能な鉢植え【1〜3】なら、台風が来るときは軒下に避難してあげられるし、365日太陽が当たる場所へ設置することも可能。良くも悪くも、プランターのサイズいっぱいに根が回れば、それ以上株が大きく成長しないため、コンパクトなサイズで楽しめます。悪い虫が付いていないかな?と確認する作業も、くるくるとポットを回せば、腰を痛めることなく自分の目線の高さでチェックできる点もメリット。

2週連続の台風で、庭に地植えしていたバラは蕾をつけた枝が折れてしまいました。鉢は避難させていたので、雨風関係なく順調に咲いています

新種が出ると欲しくなってしまうのが、バラ愛好家の悲しい性。庭に植えられるスペースがなくなってしまった!なんて場合も、鉢ならいつでも受け入れられますね。一口にローズガーデン、と言っても個人宅での庭造りの場合は、どんな風にお気に入りのバラを育てたいのか?も考えておくといいかもしれません。

■草花の栽培に適した培養土を用意し、庭の土を入れ替える

庭のレイアウトが決まり、整地が終わったら、次にやるのは「土の入れ替え」です。

我が家の庭の土は、草花の栽培には適さないとされる保水力がない砂っぽい性質だったため、当初は培養土を購入し、そこに植物を植えるつもりでいました。

ところが、庭のデザインを担当していただいているガーデンデザイナー・宇井秀喜さんから「今ある土に足りない保水力がある黒土や、赤土をダンプで入れてしまった方が、運搬も楽だし、コストが2㎥で5000円くらい安くなります」というアドバイスをいただき、これを実践してみることに。

数字だけ見てもわかりにくいので、もう少しかみ砕いてお伝えすると…。1㎥とは、縦横深さがそれぞれ1mづつの立方体を差すのですが、草花を植える際耕す深さは30cmほどのため、1㎥あれば、花壇のスペースは1m×3mほどの範囲をカバーできます。ダンプ一杯分、すなわち2㎥分ならば、1m×6mの花壇がつくれるイメージになります。ただし、実際には搬入した土に、加減を調整しながら元からある庭土や土壌改良のバーミキュライト、腐葉土、堆肥などを足して全体に敷き詰めるため、もうふた回りほど大きな花壇がつくれるようになります。

新たに入れた土と、既存の庭土を丁寧に耕運機で攪拌していきます。ふかふかにして、植物たちが元気に根を這わせますように

次に、庭土の購入先について。大きく分けると造園屋さんと建築屋さんから購入するのが一般的です。

同じ黒土でも栄養が異なったりと土の質が違う場合があるので、小道や小屋などの構造物の土台としての土が必要な場合は後者でもよいのですが、草花を育てる場所に必要な場合は前者を利用するのがいいそう。

このあたり、素人では土そのものを見てもまったく違いが判らないので、プロの判断にお任せするのが、間違いないようです。

結局我が家は、造園屋さんにダンプ2台分の新たな庭土を入れていただき、バラと草花、そして樹木たちがすくすくと成長する土壌をつくりました。

【参考価格】
・培養土(25L)相場 ¥350~¥500/1L:¥20
・黒土(14L)¥280/1L:¥20
・2tダンプ一杯分、およそ2㎥(1㎥=1000L)→2000L ¥10,000〜¥15,000/1L:¥5
※別途運搬代がかかります

■バラは「花」ではなく「木」だったことによる大失敗

しっかり庭の土ができあがったところで、シンボルツリーと中木を植え込み、いよいよバラを植える段階に。庭づくりの本を読み込み、そのレクチャーに従って、(1)レイアウトを考え→(2)アプローチをつくり→(3)メインとなるシンボルツリーを植え→(4)サブ的な中木や低木を植え→(5)草花を植え込むという順に進めていきます。振り返ると、この時点でひとつ目の大きな失敗を犯していました。

私は、ついつい美しく咲く花にイメージが引きずられて、バラを(5)段階目の草花にカテゴライズしていたのですが、バラというのはバラ科バラ属に属する落葉低木の一種、つまり「木」であり、本来ならば(4)の項目に入れるべきもの。

メインにしたい植物がバラだったはずなのに、一部の区画は高中低それぞれ異なる高さの木を配置することばかりに意識が囚われ、肝心の「「バラが西洋アジサイなどの低木とバッティングしてしまい、引き立たない」見た目になってしまったのです。

ローズガーデンを目指す方は、始めからバラを低木のひとつとしてカウントし、その他の樹木を選ぶことを念頭に。そして、セオリーにとらわれず、バラをどこに植えたいかを一番に考えてから、ほかの植物を配置することをお勧めします。

■バラの苗はどこで手に入る?

何はともあれ、念願のバラをようやく植える段階となり、日夜インターネットでバラの苗を検索しました。同じ品種でも、店によって価格に開きがあり、口コミを見ると評価もさまざま。よく見かけた内容は、植物のため、日付指定をして発送ができず、受け取りがたった1日2日できなかっただけでコンディションが悪くなって、枯れてしまったというもの。二拠点生活のネックでもありますが、不在がちで宅配物を受け取れないことが多々あります。それを考えると、バラの苗を通販で購入することに不安が生じます。自分の目で見て確かめたい昔気質な私は、店頭で買うことに頭を切り替えました。

どこで買おうか迷っていたところ、陶芸仲間のHさんが、バルコニーで育てているバラをおすそ分けしてくださることに。私がかねてより欲しいと思っていた、つるバラの品種「ピエール・ドゥ・ロンサール」の立派な株です。

東京のど真ん中に暮らしているHさんによれば、「センスがよくて、信頼しているお花屋さんに相談しているの」と言って、自由が丘にあるブリキのジョーロさんを紹介してくれました(http://www.buriki.jp/)。雑誌などにも頻繁に掲載されているこちらのお店は、植える場所、色やイメージをあらかじめ伝えておくと、いい苗を全国から探してくれるそうなのです。

「全国から探す?」

びっくりしたのですが、中には北海道のバラ苗生産農家さんの元から、Hさんのガーデンにお嫁入りした苗もいるんだそう。そこまでこだわる理由は、「苗の元気さによって、株の成長速度も、耐病性もぜんぜん違うのよ。だから、始めからいい苗を選ぶのが、きれいに花を咲かせるコツなの」とHさん。ローズガーデンは、苗選びから勝負が始まっているのですね。

結局、主人と相談して、何度も足を運んでいた京成バラ園へ買いに行くことにしました。京成バラ園は、広大なローズガーデンも人気ですが、老舗ナーセリー(育種家、苗の販売業社)としても定評があり、健康で信頼できるバラの苗を販売しています(通信販売のサービスもあります)。販売の方たちもバラのプロばかりなので、フォローも安心でおすすめです。

■ピンチ! 憧れの品種が、手に入らない!

いよいよバラを買いに行く前日は眠れないほど期待が高まり、各地のローズガーデンに訪れるたび、写真に収めていたお気に入りのバラのリストをプリントアウトするなど、長年憧れていたバラ達を手に入れる準備を整えました。

バラのイメージストック

そして、迎えた当日。オープンと同時に京成バラ園の館内に入り、お目当てのバラを探します。広い敷地内、新種のバラやお気に入りリストに入れていた草花にも目移りしながら、隈なく歩き回ってみたのですが、一向にリストに並べたバラが見つかりません。3万種、4万種もあるといわれているバラだから、売り場には並びきれていないのかしら?と思い当たり、店員さんに話を伺うことにしました。すると「まぁー、ずいぶん古いバラをご存知ね! 残念だけど、もうこれは一般的には売っていないわよ。」との答え。衝撃を受けます。

■ファッションと同じく、バラにも「流行」があった

ファッションやコスメと同じで、バラにも流行があり、毎年新商品(新品種)が発表されるため、古い物や人気がないものは、バラ農家さんは栽培しなくなってしまい、世に出回らなくなってしまうそうなんです。

私が見せたリストは、調布市にある神代植物公園のものなど、10年前から集めていた写真が中心。もう京成バラ園では扱っていない、”古い”品種がほとんどだったのです。

ちなみに神代植物公園は、公園の一角では常に新しい品種を植え付けてはいるものの、バラの苗を売ることを目的にはしていないため、昔の品種のバラが今も変わらず育てられているそう。

苗の販売にも重きを置いている京成バラ園芸に隣接している京成バラ園は、新種のバラを紹介することを目的のひとつとしてガーデンを運営しているため、新たな品種を古い品種と交換するよう、より積極的に植え替をしているとのことでした。

どれも香りや、花の形にひかれて憧れていたバラ達。落ち込んでいると、店員さんから元気が出るアドバイスをいただきました。「毎年新しいバラが誕生するということは、バラの育種家が知恵を絞って、より美しく、香り高く、病気に強い品種を産み出しているということ。同じバラは決してないけれど、好きな香りの系統や、花の形や色を決めたら、進化して、育てやすくなったバラを選んではいかがですか?」

なるほど。これは10年前のコスメよりも、今のコスメのほうが進化していて、効果が体感できることと似ているように感じます。進化版があるならば、あえて古いままの処方でつくられたコスメを好んで使う方は、限られているはず。バラの業界に話を戻すと、以前なら無農薬でバラを育てることなど考えられないと言われていましたが、現在オーガニック先進国のドイツでは、完全無農薬栽培を目指し、病気にもかかりにくく、害虫にも強いバラの研究を進めているそうです。

庭に育ったバラの花

バラと一口に言っても、実際に育ててみると、それぞれ違いがあることに驚くことばかりですが、中でも耐病性と害虫からの影響が大きく異なっています。

初心者でどのバラを植えるか迷ったら、まずは「作年数」を確認したり、「耐病性」があるもの、虫にかじられてもぐんぐん成長する「強健」なものをチェックするとよいと思います。

余談ですが、お花屋さんに出回る、切り花品種と呼ばれるバラは、バラ農家さんが育んでいるものが多いそう。こちらはより流行のサイクルが早く、珍しい品種のほうがより市場でも高値で取引されることもあり、3~5年ほどで株を入れ替えるのだとか。

ご近所のお米農家さんの話では、「(古いバラの樹を)捨てるタイミングがあれば、貰えちゃうよ」とのことですが、まだ直接バラ農家さんとはお友達なれていないので、そんな幸運な機会には恵まれていません。いつか、保護犬ならぬ、保護バラの務めも果たせたらいいなぁ…などと、ぼんやり考えております。

■バラには「お買い得になる時期」も存在する

さて、京成バラ園芸に出向き、狙いを定めていたバラはなく、白紙に戻ってさんざん悩んで、いざ買おうと思ったら、レジであっさりこんなことを言われました。「来週セールよ。それは半額になる予定だから、次週いらしたら?」店員さんがセールの予告ポスターを指さしました。

「え! バラにもセールがあるの?」

流行もあるし、お買い得になる時期もあるなんて、想定外。私が購入を検討していたのは、主人とDIYで頑張ったフェンス、ドーム型のパーゴラと、もう一片の壁添いに這わせるつるバラ、計11本だったのですが…こんなに一気に買うならお得に手に入れたいと、日を改めることにしました。

ローズガーデンづくり1年生の今年、学習したのは、バラがお手ごろになる時期は年に3回あるということ。京成バラ園芸を例に今年を振り返ると、下記日程で開催されていました(ネット通販のスケジュールとは異なります)。

■2017年3月23日~3月27日
■2017年6月28日~7月2日
■2017年9月23日~10月1日

 

察するに、洋服と同じで、決算前や季節の変わり目にセールが開催されたのですが、それぞれのねらい目をご紹介します。

バラが休眠している寒い季節(2月)は植え替えをする方が多いので、それを過ぎた3月に一回目のセールが実施されます。この時期のねらい目は、長尺の大きく成長したつるバラや、定番品種の大苗。続いて、接ぎ木して間もない苗(新苗)が出回る季節の終わり(7月)に2回目のセールが開催されます。

新苗で新しい品種が多く出回るタイミングなので、運がよければセール価格(¥1,000ほど)で手に入るのは、バラ愛好家の冒険心をくすぐります。

しかし悩ましいのは、新苗は花を咲かせていないため、実際の姿形や香りを確かめられず、カタログやラベルの写真から判断するしかできません。こればかりは、日ごろからカタログやローズガーデンをしっかり見て覚えておくことが大事になってきます。

そして最後となる3回目は、秋バラが咲く前に行われます。すでにフライングをして咲き始めている苗もあったりするので、実際の花付きを確認してからお買い求めになりたい方は、このタイミングでチェックするのがよいかもしれません。正直セールなので、ファッションと同じく、狙っていた物が残っているとは限りません。定番品やインポートアイテムの値下げ率が低かったり、そもそもセールにならない物もいたりします。トレンドを追い求め、誰よりも早く発売と同時に楽しみたいという方は、あらかじめ予約をして苗をオーダーするのがおすすめ。ご自分の探している品種やサイズに合わせて、購入するタイミングもご検討ください。

バラ園で作業をする堀江さん

さて、次回は私が選んだバラと、バラの植え方をご紹介したいと思います。お楽しみに!

この記事の執筆者
<プロフィール> 1980年、東京生まれ。大学を卒業後、マスコミ業界に就職。テレビ、雑誌、WEB、ラジオの企画や制作に携わったのち、20代後半からグラフィックデザインを学ぶ。美容業界でデザインや広報の仕事をする傍ら、2015年9月に関東圏の古民家をセカンドハウスとして買い取り、東京と地方を行き来する生活を始める。 好きなものは、本、カメラ、花、ティファニーとTシャツ。趣味は、読書、アート鑑賞、カメラ、陶芸、料理、ピラティス、ゴルフ。「たくさん、よりも、自分に合う、永く愛せる物や人間関係を大切にしたいと思います。また、そういったものに巡り合っていきたいです」
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