前回(vol.2)までは、セカンドハウスを構えたいと考えるに至った経緯と、「畑付きの古民家が賃貸物件では見つけられなかった」というお話をさせていただきました。

それではどうすれば、都心に住み続けながら、距離の離れた地に、理想のセカンドハウスを見つけ、購入することができたのでしょうか? あくまでも私の例に過ぎませんが、二拠点生活、多拠点生活を考えている方の参考になれば幸いです。

古民家探し、まずは人づてで情報収集

堀江さんのゴルフラウンド風景

ゴルフと温泉巡りを通じ、二拠点生活をするのによさそうなエリアが関東圏の中で絞り込めてきた時点で、私は会う人会う人に、その方面の出身者かどうか、お知り合いはいないかを聞いて回るようになりました。実際にその地域に住んでいる、住んでいた人たちの肌感が知りたかったのです。そのため、実際にご出身者に会えたりなどすると、うれしくて立て続けに質問をまくしたててしまい、「なんにもないところですよ」などと、いぶかられてしまうことも多々…。

それでもめげずに「畑で野菜をつくったり、陶芸ができる生活がしたいんです」と口にし続けていたところ、私が通っていた陶芸教室の仲間に、卒業生の中に東京から移住し、お蕎麦屋さんと陶芸を教えながら、ご自身の作品づくりをしているご夫婦がいるとの情報をキャッチしました。

 

聞けば立地も、私たちが探していた高速のICすぐソバ! すぐさまアポを取り、お邪魔してみると、400坪もある広い土地に古民家が建ち、大きな窓が開放的な平屋造りの工房がその横に。庭先には真っ赤なトマトがキラキラと、眩しい実を大きく膨らませていました。

漠然と描いていた理想が具現化されているかのようで、期待に胸がときめき、駐車場から素敵な景色を見逃すまいと、一歩一歩興奮を噛みしめながら入口へ進みます。

母屋の一階を改装した広い座敷に通され、奥様の手ごねした器に盛られた、ご主人お手製のお蕎麦をいただきました。縁側から見渡せる緑豊かな庭に癒され、優しく吹き込んでくる風が心地よく、我がパートナーは「いいね~」を連発。私も悦に浸っておいしくお蕎麦をいただきました。

食後、貸し切りになった店内でお話を伺いました。

「どうして暮らし慣れた東京から、田舎へ移住を考えたのでしょうか?」
「ふたりの希望がリンクしていたから、かしら」

奥様は本格的に陶芸を習っていたため、自分だけの窯場が欲しかった一方、ご主人も隠居後は好きな蕎麦づくりをしながら、自適な生活を送りたかったそう。

「どうやってこちらのお家を見つけたんですか?」
「私たちも、田舎の家が欲しいときにぐるぐる希望エリアを車で走らせていたのよ。そうしたら、ある日偶然この道に迷って入り込んで、そうしたら売地の看板を見つけたの。覗いてみたら、広さとすぐに住めそうな古民家が一目で気に入って、ここなら陶芸する小屋も建てられるスペースがあるしと思って、購入したのよ」

なんとも摩訶不思議なエピソードです。

運命的なおふたりの体験談から「やっぱり探せばあるんだ!」と希望が湧き、同時に候補地に直接足を運んで地道に探すことが大事ということを、再確認。

このエリアを足で探そう!と、何度か車でドライブを繰り返しました。

その最中、奇妙な話を耳にしました。私たちが住みたいと思ったこのエリアの自治体が、財政破綻するかもしれないという噂です。自治体の財政が破綻すると、ごみの収集サービスなどが廃止や有料化されてしまったり、水道代や軽自動車税などが突然値上がりしてしまうなど、さまざまなデメリットが発生してしまう可能性があります。

「住んでいきなり、生活に密着した地域サービスに不安があるのは、厳しいよね…」

せっかく場所の目星をつけたのに、振り出しに戻ってしまいました。


たくさんの人に当たり、現地にも当たり、セカンドハウスを探し始めてから、すでに1年が経過しようとしていました。

「これはちょっと、無理かもしれない」

あきらめかけたそのとき、主人が古民家を中心に扱う不動産屋「田舎暮らし!千葉房総ねっと」をインターネットで見つけました。

古民家を中心に、畑もそろっている物件を多く扱っているこの不動産屋さんとの出合いにより、家探しは急激に進むことになります。

あとでうかがったことですが、この不動産屋さんの代表者ご自身も、東京から移住したそうで、自然に囲まれて趣味を楽しむ豊かな生活の魅力をみんなにも伝えたいという思いから、このサイトを始めたんだそう。

セカンドハウス候補を見に行く

堀江さんの古民家の近景

このサイトを見つけてからの私たちは、毎朝出勤前にじっくりチェックするのが習慣になりました。ひとことで「古民家」と言っても、さまざまなタイプの物件があり、眺めているだけで飽きません。

現地に何軒も見に行ったのですが、なかでも印象深かった物件を3つほど、ご紹介したいと思います。

1軒目:一番ヘンテコだった、動物園の家

「動物園って。そもそも、家なのかしら?」という疑問が湧くのですが、サッカー場のおよそ半分、1200坪もの広大な土地に、家と離れの小屋と、ペンギンの山、キリンのエリア、馬と羊のゲート、森が敷地の地図には記載されていました。動物好きのオーナーが、自分の好きな生き物を飼うための王国を建てていたようです。しかも、8羽のペンギン付き。犬も飼ったことがない私はタジタジ…。

しかしこれだけ十分な広さがあれば、私の趣味の陶芸は立派な登り窯がつくれそうだし、主人の趣味である楽器も心置きなく演奏を楽しめる。これだけ土地もあることだから「仲間と一緒に住もう!」とお友達と話が盛り上がり、主人はふたりで現物に出かけてしまったほどです。

帰宅後、氷山を模した設備で水遊びをしているペンギン達と、立派なたてがみをなびかせている馬をはじめとする生き物の写真を見せてくれたのですが、やっぱりどう見ても動物園。

確かに自然は豊かで、非日常的なムードで面白そうではあるのですが…。おそるおそる「気に入ったの?」かと尋ねてみました。

結果、家としてあてにしていた建物は家屋として確認申請書を提出していない建物で、改築も建て増しもできず、人が住めないため断念すると残念がっておりました。その上、実際に現地に赴き実感したそうですが、隣家との距離が50mほど離れており間に森もあるため、ひどく心寂しく感じたそうです。「あそこはひとりでいたら、怖くなって住めない。敷地も広すぎて、どこかで怪我でもして倒れたら、一生見つけてもらえない」と不安が勝り、あきらめたとのことでした。

気を取り直して、ほかの物件も紹介していただくことになりました。

2軒目:築30年、昭和スタイルの家

2軒目の物件は、アクセスのよい昭和スタイルの家。古民家ではなく、ご夫婦が別荘として使っていたという、ややコンパクトな築30年ほどのおうちです。敷地内に家庭菜園ができる一角があり、2年前までは家主が利用していたというだけあり、クリーニングをかければすぐに住み始められそうな状態でした。

しかし、問題点が2つ。ひとつ目は、ダイニングセットやソファ、ベッドにタンスなど、家具や粗大ごみがそのままの状態だったので、それらを片付ける費用をこちらで負担してなくてはいけなかった点。

ふたつ目は、家のすぐ前に美しい田んぼが広がっているのですが、道が農道でとても道幅が狭いこと。大きな通りからクネクネと道を曲がって入っていき、軽自動車がやっと通れるような幅で、対向車が来たら完全アウトな状況だったため、パスしました。

3軒目:築80年の古民家

事前にホームページで間取りなどを確認すると、3世帯は住めそうな大きなお屋敷です。今度の家は大きな道に面しているので、私の運転でも無事にたどり着けそうです。

出向いてみると、渋い茅葺屋根はとても立派で、時代劇に出てくるような雰囲気の造りに圧倒されました。

2軒目とは打って変わって、幅が広い道に面しているのですが、広ければ広いだけの問題点があることを、ここで実感しました。

どうやら家の先に工場があるため、大きなトラックが頻繁に行き来しており、家の中にいても車が走る騒音が響いてくるのです。

これでは「東京の喧騒とは違う、非日常を楽しみたい」という憧れが叶いません。また、建物内に入ってみると、襖や障子、畳などの建具がボロボロなのは想定内だったのですが、天井が一部なかったり、床が抜けていたり改修にパワーがかなり必要だったため、手に負える自信がなく、こちらもあきらめることに。

 

「古民家市場には独特のマーケット原理がある」。

毎朝物件をチェックしていた主人が気づいたのは、下記のようなトレンドでした。

●掲載されてからすぐ動く価格帯は1000~2000万円の物件。リフォームが必要になる状態の物件が多いが、新着として掲載されてから、早いものだと2週間、遅くとも2か月弱で購入者が決まる。移住し古民家に暮らしながら畑仕事をしたいと考える定年退職者が多く、退職金とイコールになる価格帯に人気が集まるからでは?と推測される。


●その上のクラス、3000万円台になると、雨漏りなどもなく、システムキッチンやバスに改修されている、すぐに暮らせるコンディションの物件が出てくる。イメージとして、民宿よりはしっかりした造りの旅館に近い状態で、空き家になって間もないものが多く出回っている。

また、古民家と一口に言っても、それぞれの状況がまったく異なるので、どの程度の古民家を求めているのかも、いくつか見て感覚をつかむといいかもしれません。

住む方によって修繕の必要な度合いは異なると思いますが、基礎や床、壁部分がしっかりしていて、リフォームするのが水回り程度なら200~500万円弱ですぐに入居できます。家の規模にもよると思いますが、屋根を直したり、壁もすべて改修すると2倍3倍以上に予算が必要になります。

相続されてから35年間、空き家になっていた家を見に行ったところ、柱以外ボロボロで、修繕の負担が多すぎるために見送った…なんて話も耳にしました。家の購入費だけではなく、リフォームについて予め下調べをして予算を決めておくと、運命の家に出会えた時にすぐに答えが出せると思います。

探し始めて5年目、理想の家に巡り合う

古民家の情報をたくさん集めている不動産屋さんとのお付き合いも約2年間となり、さまざまなタイプの家を計10軒くらい紹介していただきました。

古民家探しを実際に始めて4年経ったころ、運命の日がようやく訪れます。

その日も、ホームページに掲載されていて気になったログハウス調の物件を見に行っていたのですが、またまたまたピンと来なくて、案内をしてくださった方に自分たちのリクエスト(古民家で畑付き)をお伝えしました。すると「ちょうどサイトから掲載を取りやめていて、再度売主さんとの値段交渉がまとまったので、明日にでも再掲載しようとしている、表に出していない情報がある」と言われ、そのまま現地に案内していただくことに。

そのお宅があるのは、希望エリア内で、高速を降りたところからも程よく近く、大き通りから一本奥まった場所にある、こじんまりとした集落。車の騒音も問題なく、美しい田畑に囲まれているけれど、家前の道はちゃんと2車線分ゆったりと設置されているという、いいとこどりな環境。ふたりで住むにはちょうどいいくらいの広さの敷地に、ちょうどいい大きさの古い日本家屋が、そこにはありました。

車から降りた途端、一目で気に入りました!

リフォーム前の堀江さんの古民家

基礎部分も柱もまだまだ現役で使えそうな立派なものでしたが、すぐに住める状態ではなく、床は腐っていて抜けている箇所があったり、増築してできたと思われるお風呂場やトイレはお化けが出そうに朽ちていて、土間の台所も使い勝手が現代の仕様とはかなり違う代物です。

でもでも! 家の中にテントを張って、自分たちの手でDIYを楽しみながらリフォームをしたいと妄想をしていたので、内覧時、こういった目に見える問題や修繕箇所の解決策をワクワク考えている自分がいました。

迷っていると、押しの一言。

「この状態でこの価格の古民家なので、実はもう一組申し込みが今さっきありました」

早く決めなくては、誰かの手に渡ってしまいます! さんざん探してきて、ようやくしっくり来る理想の家に出合えたのだから、もう決めちゃってもいいんじゃない? 私はもうすっかりときめくリフォームプランと、憧れのバラ庭と陶芸アトリエが頭に浮かんでしまって、気持ちが急いてしまいましたが、主人が一言。

瑕疵(かし)担保責任は付くんですか?」

古民家は買った後に保証してもらえないの?

「瑕疵担保責任」とは、売主が売却時に気づいていなかった欠損や故障個所について、引き渡し後も負う責任のこと。最近だと、豊洲市場の土地売買ではこの保証を免責していたことがニュースに取り上げられていましたよね。

新築の場合は保証されているものがほとんどですが、中古、ましてや築何十年も経っている古民家は「買うときにそのトラブルは知らなかった」と、後から異議を申し立てても認められないことがあるそうです。

リフォーム前の床

そこで、最も心配なのに目に見えない躯体部分や、その他のリスクについて、プロ同席のもと、検査をしてもらいましょうと、不動産屋さん側から提案がありました(ちなみに検査費用などは無料でした)。

後日、古民家再生を生業としている建築家の方と一緒にチェックをしました。

白アリは住み着いていないし、躯体も問題ないと専門家に見立てていただき、一安心。

ただ、長年の歳月によってひずみが生じ、柱が傾いているため、それに伴う床のレベル調整が必要なことが判明しました。また、間取りの変更をする際に、どの壁や柱は抜いてもいいのか?も調べていただき、ざっくりとリフォームの見積もり金額も出していただきました。

こうして、心配がひとつずつ取り除かれ、2014年9月、晴れて憧れのセカンドハウスを手に入れることができました!

振り返ってみると、見つけるまでの道のりが非常に長かったですね。現在ではすっかりウェブでも情報がヒットしてくるようになってきたし、各自治体も空き家情報の発信が積極的になっているので、もっと身近に二拠点生活を楽しめる環境がそろってきている気がします。

現在の家を手に入れるまでは、東京とセカンドハウスの行き来が苦にならずにできるんだろうか?とか、初めての田舎暮らしを私が楽しめるのか?など、経験したことがない未知の世界への不安がとても大きかったのですが、今や週末が待ちきれない程楽しくて、もっと早くに家を見つけられていたらと思うほどです。

思い立ったら吉日。自分たちの過ごしたい生活、過ごしたい時間をリストアップし、その大抵のことができる家が見つかるまで妥協せず、でも完全に要望を満たしてくれる物件はまずないので、小さな妥協はして、決めるときは決める。

それが古民家探しのコツだと私は思います。

 

さて、本稿の最後に、季節の便りをお届けしたいと思います。

今年の4月に、春の訪れを教えてくれる花のひとつ、コブシが咲きました。枯野原に白や紫に近い紅色が明るくパッと咲く、とても美しい樹木。そんなコブシの開花につられて、寒さに縮こまっていた私の身体も心も開放的になり、朝寝坊せず6時に目を覚ませるようになりました。太陽が注ぐ光はポカポカと温かく、うららかな春の空が心地良い季節。のんびりと日光浴を楽しみたい・・・ところですが、ここから一気に農家と田舎でセカンドハウスを楽しむ私たちは忙しくなります!

コブシは別名、田打ち桜と呼ばれているそうです。その名の通り、コブシのつぼみが膨らむと、皆さん一斉に田んぼの準備を始めました。身の丈よりも大きな高さの単管パイプに、ビニールを慣れた手つきであっという間に張り、完成したビニールハウス内でお米の苗を育て始め、水を張る前の田んぼを何度も耕運機で耕します。

 

二拠点生活2年目の2017年は、生まれて初めて米づくりのスタートから間近で拝見できて、驚いたことがたくさんありました。

一番は、普段口にしているゴハンが「何からつくられているか」を体感したこと。お恥ずかしい話ではありますが、食卓で見る白いゴハンは精米されていたので、どうもピンときませんでした。

お米の種と呼ばれる籾種(もみだね)は、稲の穂を形成している籾という、茶色い殻に覆われた一粒一粒を指します。

私のご近所に住む農家さんたちは、前年度に収穫したコメの一部を大切に保存しておき、選別してから籾種を育苗箱に蒔き、ハウス内で栽培をします。

室内の温度は一定に保つべく、朝晩ビニールハウスの扉を開閉し、必要に応じてホースで水を撒く仕事が3週間ほど続きます。

日増しに管理に忙しくなってお向かいさんに、お米を植える時期を尋ねたところ、4月半ばとおっしゃっていました。

以前は5月の連休に一族みんなで田植えをするのが習慣だったそうですが、近年温暖化の影響で時期が早まったのと、機械化のおかげで人手がそれほどいらなくなったという理由から、お休み前に仕事を片付け、ゴールデンウィークは皆さんでお出かけを楽しめるようになったそうです。

なるほど、確かに毎年気候の変化もあるわけで、「何月何日ごろに種を蒔く」という法則だと、当てはまらない問題が起こってきてしまうから、皆さん花の開花で作業のタイミングを合わせるのですね。

以前は読み飛ばしていた野菜種のパッケージを見ると、「沈丁花が開花してから蒔く」、と説明が明記してありありました。

 

二拠点生活を開始した1年目は、川辺の斜面を一面黄色く染める菜の花の開花を見つけては「かわいいな」とか、なんでもない空き地だった場所に、突如出現したコスモスの群生に心が和んでいただけだったのですが、田舎暮らしでは花と生活リズムが、とても密接な関係があることを学びました。

今でも東京にいるときは、東京ではショーウィンドーのディスプレイに季節の移ろいを感じていますが、自然豊かな田舎では、至る所に存在する花に気づかされます。夏にはどんな発見があるかな?

次回4回目の記事では、私の夢であるバラでいっぱいの庭造りについて、途中経過をご報告させていただこうと思います。

東京⇔田舎で二拠点暮らし。シリーズ「セカンドハウスライフ」

この記事の執筆者
TEXT :
堀江美希さん 会社経営
2017.7.2 更新
<プロフィール> 1980年、東京生まれ。大学を卒業後、マスコミ業界に就職。テレビ、雑誌、WEB、ラジオの企画や制作に携わったのち、20代後半からグラフィックデザインを学ぶ。美容業界でデザインや広報の仕事をする傍ら、2015年9月に関東圏の古民家をセカンドハウスとして買い取り、東京と地方を行き来する生活を始める。 好きなものは、本、カメラ、花、ティファニーとTシャツ。趣味は、読書、アート鑑賞、カメラ、陶芸、料理、ピラティス、ゴルフ。「たくさん、よりも、自分に合う、永く愛せる物や人間関係を大切にしたいと思います。また、そういったものに巡り合っていきたいです」
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